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パーソナルスタイリスト 中村龍太の着る人が輝くスーツ選び【第1回】 黒いリクルートスーツは本当に正解?面接でも使えるマメ知識と“見せたい印象”別着こなしポイントを伝授!

就職活動の面接では、第一印象が成否を左右するといわれています。「第一印象」には、その人の表情や立ち居振る舞いはもちろんですが、“服装”が占めるウエイトも大きいはず。いわゆるリクルートスーツの着こなしですね。

「今は黒が主流だけれど、没個性にはなりたくない」「でも悪目立ちはしたくない」…など、いろいろな気持ちがひしめき合うリクルートスーツ選び。自分らしさを活かしながら、限りなく正解に近いセレクトと着こなしのポイントを、パーソナルスタイリストの中村龍太さんが教えてくれます。

“定番”はあっても“正解”はない。けれど…

2000年代に入ってから社会人となったビジネスパーソンや、今まさに就職活動を控えているという学生さんたちに、

「リクルートスーツの色は、何色を選ぶのが正解?」

と聞くと、おそらく圧倒的に「黒」と答える人が多いと思います。

でも、実はこれ、正式なルールでもなければ、採用する側の企業が「就活生は黒を着るべき」と言ったわけでもないんです。

それなのに、現在の就活生の9割近くは黒のリクルートスーツを選んでいます。
このようになったコトの始まりは、「学生さんは何着もスーツを持つのは難しいですから、黒のスーツを選べば冠婚葬祭にも使えて便利ですよ」――という感じで、ショップの店員さんがおすすめするケースが多かったからではないかと言われています(諸説ありますが)。

では、その前はどうだったのかというと、肩パットがやたらと主張するシルエットに、スモーキーグリーンや藤色といった、今では普段使いでもあり得ないスーツで面接に臨む学生が続出していたバブル期を除けば、ネイビーやグレーなどの「ダークスーツ」が主流でした。

そして、冒頭にもあげた

「リクルートスーツの色は、何色を選ぶのが正解?」

という質問にあえて答えを出すとしたら、実はネイビーやグレー(つまり、黒以外のダークカラー)を選ぶ方が、より正解に近いのです。

“黒以外”を選んだ理由が語れたらGOOD!

「就職活動で選ぶべきは、黒以外のダークスーツ」

その根拠には、そもそもスーツが西洋から来た服であることがあげられます。
西洋で黒のスーツを着るのは、フォーマルな場か葬儀などの悲しみの場だけ。ビジネスシーンでは黒は着用しないのが、西洋の基本的なルールです。
ですから、外国人はもちろん海外事情に詳しい日本人が見たら、みんなが黒のスーツを着る日本の就活風景にはかなり違和感があるのです。

今の日本の風潮では、リクルートスーツに黒を選ぶことは当たり前に感じるかもしれません。周りのみんなが黒を着ていると、それ以外の色を選ぶことには勇気もいりますよね。

でも、例えばグローバル企業を志望している人が、外国人の面接官がいるかもしれない面接に黒のリクルートスーツで臨んだら、どんな印象を与えるでしょう?
「周りのみんなと同じように、無難に」とスーツをオーダーする前に、こういった背景を知っていれば、逆に就職活動を有利に進められるかもしれません。

例えば、9割が黒のスーツを着ている中で、あえてネイビーやダークグレーのスーツを選べば、それだけで差が付けられます。
日本だけで通用する“当たり前”より、国際基準のスタンダードを選ぶことが結果的に個性を打ち出すことにつながるのなら、チャレンジしてみる価値は大きいと思います。

そしてもし、「黒のスーツを着てない理由」を面接官にたずねられたら、こんな風に堂々と答えましょう。

「リクルートスーツをオーダーする前に、何が正解なのかを調べてこの色を選びました」

「グローバルに活躍する人材になりたいと考えているので、海外のビジネスシーンで着用されない黒のスーツは避けました」

「みんな黒を着ているので差を付けたいと思いました。もちろん、ネイビー(あるいはグレー)のスーツがドレスコードとして間違いでないことも承知しています」

こんな風に受け答えができたら、スーツの色で面接官の目にとまり、それを指摘された際の受け答えでも一目置かれるという、一石二鳥な効果も見込めそうです。
たとえ尋ねられなかったとしても、「知ったうえで装っている」ということは、その人の佇まいに自信となってあらわれると思います。

ジャケットの襟幅+シャツ襟の形+ネクタイで印象は自在

ここからは、いよいよリクルートスーツの着こなしポイントについて解説していきましょう。

今回、就活生のみなさんに私から提案したいのは、

「戦略を立てて着るリクルートスーツ」です。

もちろん就職活動ですからファッション的に攻めるということではなく、基本的なルールの中で、いかに自分らしさをにじませるか? いかに見せたい印象を盛り込んでいくかということになります。

面接官に与えたい印象別に、ヒントをいくつか紹介していきます。

《リクルートスーツ選びの基本》

個性を出す前に、まずはリクルートスーツ選びの基本をおさえましょう。意識してほしいのは、色味と適正なサイズ感です。

■色味は黒以外の「ダークスーツ」
ダークカラーのネイビー、グレーで、柄のない無地の上下が基本です。ネイビーは若々しい印象、グレーやチャコールは落ち着いた印象を与えます。ちなみに、合わせるシャツはスーツの色にかかわらず、就職活動時は“白”が基本です。

■大きいスーツは冴えない印象
ジャケットがだぶついていると着映えがせず、覇気が感じられません。仕事ができそうな印象を与えるためには、ジャストサイズでオーダーすることが大切です。

■細すぎるスーツも就活には不適切
ファッションとして細めにフィットするスーツはありますが、リクルートスーツには適しません。目安は、ボタンを留めた状態で腹部に横じわが入らないサイズ感。つり革につかまる動作をしたときに、脇が引っ張られる感覚が強いジャケット、はいたときにポケットがぱっくりと開いてしまうパンツはNGです。
また、パンツの丈は、立った状態で靴下が見えない長さであることが大切です。

■試着時には実際に動いてみる
立ったり、椅子に座ったり、しゃがんだりといった動きに対応するサイズ感であることが大切です。試着の際は、ぜひこうした動きをしてみてください。視覚的にも横じわが入っていないか、逆にだぶつきがないか確認を。

ファッションスーツとしてくるぶし丈のパンツが流行っていますが、立った状態で靴下が見えるパンツの丈は、正式なビジネスの場にはふさわしくありません。

《見せたい印象別・リクルートスーツの着こなしポイント》

①真面目・誠実・堅実な印象を与えたいとき

・スーツの色…ネイビー系レジメンタル
・ジャケットの襟幅…8㎝
・シャツの襟…レギュラー、セミワイド
・ネクタイ…ネイビー系/剣幅8㎝

この組み合わせでは、ネクタイカラーのグラデーションで印象を調節ことができます。
真面目さの中に誠実さや爽やかさを感じさせたいなら、少し明るめのブルーに寄せる。より真面目な印象を与えたいなら、ネイビーを濃い目に。色味が黒に近づくほど堅い印象が強くなります。
白いレジメンタル・ストライプが入っているとなおGOOD!

全体の着こなしとしては、あくまでスタンダードであること。モードすぎず、主張しすぎず、“中庸”を意識することが大切です。

②リーダーシップ・意志の強さを演出したいとき

・スーツの色…濃いネイビー、ダークグレー
・ジャケットの襟幅…7〜7.5㎝
・シャツの襟…セミワイド、ワイド
・ネクタイ…赤、ボルドーソリッド(無地)/剣幅7〜8㎝

エネルギッシュな印象を与えたいときは赤系のネクタイがオススメですが、赤は着る人を選ぶ色でもあるので、ロイヤルブルーなど青みが強い青を選んでも良いでしょう。発色の良い色+光沢感のある素材がネクタイ選びのポイントです。

ジャケットの襟幅を狭くすることで胸板が広く見えシュッとした印象になります。体育会系出身等の人が鍛えた体格を活かすなら、気持ち小さめのサイズ感を意識すると良いでしょう。海外のサッカー選手のスーツの着こなしが参考になると思います。

③クリエイティビティやセンスを感じさせたいとき

・スーツの色…ブラック、ダークグレー
・ジャケットの襟幅…6.5㎝
・シャツの襟…レギュラー
・ネクタイ…ダークグレー×白のピンドット/剣幅6.5㎝

美容・ファッション業界やデザイン会社など、センスが問われる職場を志望しているなら、あえてブラックスーツを選ぶという変則ワザもあり。ジャケットの襟幅を細くするとモード感が醸し出せます。

スーツの組み合わせだけではなく、ヘアスタイルを左右非対称に整えたり、眼鏡などの小物を効果的に使ってみましょう。「この人、センスあるな」と思わせることができます。

シャツの襟の形も印象を大きく左右します。開いた襟(ワイド、セミワイド)は、明るく開放的でエネルギーも前面に伝わっていく印象、閉じた襟(レギュラー)は、真面目で誠実な印象を与えます。

小物選びで最後の仕上げ。悔いのない就職活動を

最後に、リクルートスーツに合わせるアイテム(小物)選びについてお伝えします。

まず、色味ですが、靴、靴下、カバン、ベルト。すべて“黒”を選んでいただければ間違いありません。アイテム別のセレクトポイントは、以下の通りです。

■カバン
装飾が少ないシンプルなブリーフバック。黒革が理想ですが、ナイロン製でも構いません。
A4サイズの書類が入り、床に置いたときに自立するタイプのものがおすすめです。

■靴
正式なビジネスの場で履く靴は紐靴が基本。ローファーなどは避け、ストレートチップかプレーントゥを選びましょう。
大きめサイズを選んでかかとがカパカパしている人をよく見かけますが、必ず試し履きをしてジャストサイズを購入するようにしてください。

■靴下
3足1000円などの安価な製品で構いません。
ただし、ワッペンや刺繍などワンポイントが付いている靴下は避けてください。

■ベルト
皮革、ステッチ共に黒の無地のベルトがベター。バックルが大きかったり石などの装飾が付いていない、ごくごく普通のベルトを選んでください。
同じ黒でもジーンズ用のベルトを流用すると、案外すぐにわかってしまうのでご注意。

プロフィール

中村龍太さん

中村龍太さん

文化服装学院ファッション流通専門課程スタイリスト学科卒業。ニュースキャスターやタレント等、メディアで活躍する人物のべ3000人のスタイリングを手がける。政近準子氏が代表を務めるファッションレスキューから独立し、現在はフリー。『メンズファッションの方程式』(成美堂出版)監修、政近準子著『一流の男の勝てる服 二流の男の負ける服』(かんき出版)、『チャンスをつかむ男の服の習慣』(角川出版)ともに執筆アシスタント。高島屋新宿店 パーソナルスタイリストステーション在籍。日本経済新聞をはじめ、新聞・雑誌・テレビ等への出演実績、講演実績も多数。

長い社会人生活を送る中で、いまや1度や2度の転職を経験するのは当たり前のことになっています。けれど、「ビジネスパーソンとしての基礎になった」「自分の仕事観を作った」など、“1社目”の重要さを語る先輩は少なくありません。
就職活動を成功させ、思い描いた社会人生活のスタートを切るためにも、ぜひこのコラムを参考にしてみてください。

(構成・文/阿部志穂)