90年代スーツのトレンドとは?スーツの起源や、各年代におけるスーツのトレンドも併せて解説
90年代のスーツと聞いて、どのようなシルエットのスーツが頭に浮かぶでしょうか。当時現役世代だった50代以上の方は懐かしく思われるかもしれませんが、40代から下の世代の方はあまり詳しく知らないかもしれません。
90年代は、バブルが崩壊し日本経済の勢いが停滞し始めた時期です。これに合わせて、バブル期を象徴するようなボリュームのあるスーツはトレンドから撤退し、よりシンプルでクラシックな見た目のスーツがはやりました。
このように、スーツのトレンドは各年代と当時の時代背景によって大きく異なります。近年では一つの大きなトレンドよりも、より個人の感性にフォーカスし、各人の気に入ったスーツを着用する傾向にあります。しかし、過去のトレンドを知り、自身のトレンドに取り入れてみるのもおしゃれにおける一種の楽しみです。
この記事では、スーツの起源と60年代以降のスーツのトレンドについて、順を追って解説します。過去のトレンドを把握し、自身のスーツファッションの幅を広げるのに生かしてみてください。
スーツの起源とトレンド
各年代のトレンドについて触れる前に、まずはスーツの起源そのものについて紹介します。また、スーツの日本国内における60年代以前のトレンドについて簡単にまとめているので、参考までにご覧ください。
スーツの起源と歴史
現在着られているスーツの原型は、直接的には19世紀中頃、当時のイギリスで男性の礼装として着られていたフロックコートを改良したものとされています。さらにさかのぼると、16世紀のイギリスで農民が着用していたフロックと呼ばれる衣服にたどり着きますが、これがスーツの最も古く、有力視されている起源のようです。
改良されたフロックコートはさまざまな変化を経て、20世紀初頭にアメリカに渡るとビジネス用の衣服として急速に定着していきます。アメリカのみならず、このビジネス用の衣服は世界的に流行し、現在の私たちが知るスーツとして認識されるようになりました。
60年代以前のスーツのトレンド
英国からアメリカ、そして世界へと広まったスーツ文化ですが、開国と明治維新を背景に、明治時代の日本にもスーツは流入しました。大正時代にはある程度普及していきましたが、第二次世界大戦の影響で一時的にぜいたく品として扱われるようになり、一般層への再普及は戦後を待つことになります。
戦後日本では、機械の発達による大量生産が可能となり、一般層にもスーツが定着するようになりました。戦後の40年代においては、アメリカの影響が強い「全体的に大きく太めの」スーツが流行し、50年代に入ると落ち着いたシルエットのスーツがトレンドとなります。この背景としては、第二次世界大戦の混乱期を生き抜こうとする姿勢が「大きめの」スーツに、戦後の混乱がそれなりに解消された状態が「落ち着いた雰囲気の」スーツに反映されたといえるでしょう。
60年代のスーツ~アイビー&モッズスタイル
60年代には、アメリカ発祥のアイビールックと、イギリス発祥のモッズスタイルがトレンドとなります。アイビールックとは、50年代アメリカの8大学におけるフットボール連盟「アイビーリーグ」に端を発するファッションスタイルです。アイビーリーグに所属していた若者たちが着用していた服装からの影響が強く表れています。
モッズスタイルとは、50年代~60年代のイギリス発祥で、とりわけ音楽からの影響が強く表れているファッションです。「モッズ」は、モダニズムやモダンジャズから派生して誕生した言葉とされています。
いずれも、若者の間で特に流行ったスタイルであり、全体のシルエットとしては細身であることが特徴です。50年代の落ち着いた雰囲気がさらに洗練されたスタイルともいえるでしょう。Vゾーンの狭さや肩・襟回りの細さ、股上の浅さなどがポイントです。
70年代のスーツ~コンケーブショルダー
70年代といえば、日本では高度経済成長の終わりと第2次ベビーブーム、世界的にはベトナム戦争やオイルショックによる混乱、ヒッピー文化の流行など、激動の時代といえます。穏やかとはいい難い時代を象徴するかのように、スーツの形状も60年代とは大きく異なっていました。
シンプルさとは対極にあるような「コンケーブショルダー」はその最たる例でしょう。コンケーブショルダーとは、肩の形状が肩先に向かってとがるように湾曲したスタイルのことです。また、この時代のスーツジャケットは腰回りが細く、裾に向かって広がるような形状になっているのも特徴的といえます。
ボトムスも同様で、股上の浅さは前年代と大きく変わりありませんが、膝から裾に向かって広がりを見せる形状は70年代を象徴する特徴といえるでしょう。
この時代は、メンズスーツにレディースの特徴を取り入れ、それまでとは違うデザイン性が前面に押し出された時期といえます。
80年代のスーツ~ソフトスーツ
80年代は、全体的に丸みのあるゆったりとした印象のソフトスーツがトレンドになりました。前年代までとは大きく異なり、胸ポケットの位置は低く、大きな肩パッド、股上の深さなどが特徴的です。ボトムスには複数のタックが入り、非常に余裕のあるシルエットになっています。
一方で、俗っぽい表現をすると「ブカブカ」や「ダボダボ」な印象を与える形状ともいえるでしょう。80年代は、日本がバブルに狂乱していた時代です。あらゆる面で、「大きくあること」が良しとされていた時代ともいえます。そのような時代背景が、大きなシルエットのスーツをトレンドに押し上げたといっても過言ではないかもしれません。
90年代のスーツ~クラシコ・イタリア
90年代に流行となったのは、80年代のソフトスーツから一変した「クラシコ・イタリア」のスーツです。クラシコ・イタリアとは、スーツのスタイルだけではなく仕立て方など、作り出される製品の傾向そのものを指すとされています。起源としては、1986年にイタリアのフィレンツェで誕生した「クラシコ・イタリア協会」が該当するようです。
クラシコ・イタリア協会では、職人による最高水準の製品を大量生産可能にすることを目的としています。そのために、職人1人によって行われていた作業を分担したり、機械で代用可能な部分については積極的に機械作業を導入したりして、大量生産できるシステムを構築しました。結果、既製品にして高品質なスーツが実現したのです。
クラシコ・イタリアによるスーツの特徴としては、「3ボタン中掛け」「本開き」「ナットボタン」が挙げられます。
3ボタン中掛けタイプのジャケットは第二ボタンだけを留めれば良く、ラペル(下襟)の折り返し幅とVゾーンの広さが豊かで、高級感を演出することが可能です。
本開きとはスーツの袖部分にあるボタンが飾りではなく、実際に開けたり閉じたりできる仕様になっていることを指します。開け閉めだけではなく、留めるボタンの数を調節して印象を変える効果が期待できる仕様です。
ナットボタンは、エクアドル産のタグワ椰子を原料とするボタンで、「天然素材」「流行に左右されない」「染色可能」などの特徴があります。
クラシコ・イタリアのスーツがはやった背景としては、ソフトスーツへの反動やクラシックスタイルへの注目があるようです。
世界的にはクラシコ・イタリアのスーツがトレンドに上がりましたが、日本ではバブルの崩壊に伴い、前年代までの大きめなシルエットからよりシンプルで体にフィットするサイズのスーツが人気となりました。細身というほどではなく、全体的にゆとりのあるシルエットではありましたが、80年代のスーツと比較すると落ち着いた雰囲気になったようです。
やはり、バブル崩壊の影響は大きかったようで、それまでの自信に満ちた装いは敬遠され、時代に即した形状が人気を博すようになったといえるでしょう。
00年代のスーツ~タイトスタイルへの変遷
2000年代に入ると、1つの巨大なトレンドが国中を席巻するというよりは、複数のトレンドが渦巻くようになったとする意見があるようです。
ともあれ、主流となったのはタイトなスタイルのスーツでしょう。80年代~90年代にかけて人気だったゆったりとしたシルエットのスーツは「ダサい」という認識が広まり、体のラインがはっきりと分かるほど細身のスーツが人気になりました。
ジャケットについては、裾丈は短く、肩パッドは薄くなり、シングルの2つボタンが主流となったためVゾーンは狭い形状となります。前年代の時点で、飾り気の多いダブルのジャケットは避けられがちではありましたが、2000年代にはよりその数を減らしたようです。
ボトムスについては、くるぶしが見えるくらいの長さで、かつノータックが好まれるようになります。タックがないことでゆとりがなくなり、脚のラインを細く見せられるようになるためです。
10年代のスーツ~タイト&ソフト
2010年代に入ってすぐの頃には、ジャケットの裾が極端に短くなり、お尻が見えるほどだった時期もあるようですが、2010年代全体を通してみると、2000年代ほど極端に細身のスーツは鳴りを潜める形になったようです。ジャケットの裾はお尻が隠れるほどの長さに戻り、袖回りにもある程度余裕ができるようになりました。ボトムスの長さも、少し靴に触れるくらいまでのものが一般的になったようです。
しかし、ジャケットの形状については、シングルの2つボタンが相変わらず人気を博していました。このように、大きな変化はないものの、極端なタイトさからは脱却し、部分的にソフトな形状に落ち着いたのが2010年代のトレンドといえるでしょう。
20年代のスーツトレンドはどうなるのか?
2022年現在、スーツのトレンドは細身から多少ゆったりめに変化し、クラシカルな印象のものに注目が集まっているようです。ジャケットの裾丈はお尻が隠れるくらいまで、肩パッドは若干厚めのもの、ラペルは広めだとトレンドから外れることはないでしょう。ボトムスは、ノータックよりはワンタックで少しゆとりがあるくらいがちょうど良いといえます。
こうして見ると、60年代や90年代のトレンドに近い傾向もあるように感じられるかもしれません。流行は繰り返すもの、ともいわれているので、過去のトレンドが現代によみがえっても特におかしくはないのでしょう。
しかし、今後数年間でガラリと流行が変わる可能性は十分あり得ます。もともと、2000年代以降、1つの大きなトレンドが市場を席巻することはなく、個人個人で好きなスタイルを着用する傾向が強まっていたため、トレンドを予想すること自体が難しい状況です。
現在のトレンドを把握するよりも、スーツを着用するシーンごとに適切なスタイルのものを知り、何着か持っておく方が良いかもしれません。ビジネスシーンで求められているスーツと、冠婚葬祭で求められているスーツは異なります。マナーに即したもの、そして自身の体型にフィットしたものを選ぶようにすると良いでしょう。
オーダースーツ専門店「オーダースーツSADA」とは?
90年代までとは異なり、トレンドが多様化している現在、自身に適したスーツを選んで着ることが重要です。過去のトレンドを加えることで、よりおしゃれにスーツを着こなせる可能性もあります。これは、既製品のスーツで実現することは難しいため、オーダースーツを注文するのが最適でしょう。
オーダースーツを購入する際には、「オーダースーツSADA」がおすすめです。生地の仕入れから縫製・販売までを自社内で完結させているため、コストカットを実現しており、リーズナブルな価格でオーダースーツを提供しています。さらに、「ブリティッシュスタイル」「イタリアンスタイル」「アメトラスタイル」という3つの基本スタイルをもとに、あなただけのスーツを作り上げることが可能です。
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