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【2023年最新】スーツにおけるボタンについてスーツの専門家が徹底解説!ボタンの種類から留め方まで一挙にご紹介!

スーツのボタンってどこまで留めるの?ボタンの種類はいろいろあるけど、どれがスーツに合うの?このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。この記事ではスーツのおけるボタンの留め方やマナー、そしてスーツに使われるボタンの種類を説明いたします。この記事を読めば、あなたもきっとお気に入りのボタンを見つけられます。

スーツの「ボタン」について知りたい人に向けて、本記事ではスーツの専門家が詳細に解説していきます。「ボタンの留め方やルール」から「アンボタンマナーなどボタンに関するマナー」「ボタンの種類と選び方」「ボタンが取れてしまった際の対処法」まで網羅している内容ですので、是非ご参考にしてください。

スーツにおける「アンボタンマナー」ってご存知ですか?

スーツのボタンの意味合い

さっそくではありますが、本題に入っていきます。

スーツにはさまざまな場所にボタンがついています。前身頃や袖口、スラックスのポケット。まず前身頃のボタンの留め方について述べていきます。

スーツのジャケットを着たら前身頃のボタンを留めますよね?さて、どこまで留めるのが正解なのでしょうか?

もし、すぐに正解がわからない方がいらっしゃれば、次の言葉の意味を考えてみてください。

「アンボタンマナー」

アンボタンは「unbutton」と書きます。「un」は次に続く言葉の反対の意味を示します。アンボタンマナーの「ボタン」とはボタンを留めるという意味。つまり、アンボタンマナーはあえてボタンを留めないマナーなのです。

アンボタンマナーのルーツは諸説ありますが、1900年代初頭の頃は一番下のボタンを留めて着用することが一般的だったようです。その後ジャケットのデザインが変化し、現代では一番下のボタンはあくまで飾りとして付けられるようになりました。そのため、一番下のボタンを留めると、かえってスーツの形状が崩れてしまうので、アンボタンマナーが現代の基本ルールとなったようです。

スーツは、一番下のボタンを留めてしまうと前身頃に余計なシワが入ってしまいます。
スーツの着こなしにおいて、シワはプラスの要素を何ももたらしません。シワが入ってしまうと、どんなに高いスーツを着用していても「だらしない」「かっこわるい」といった印象を与えてしまいます。ビジネスシーンや就活シーンなど、スーツを着用する場では見た目の印象が結果を左右するといっても過言ではありません。
シワを防止するために、必ずアンボタンマナーを守るようにしましょう。

スーツで開けるボタンはどれ?

さて、ここで次の疑問が浮かんできます。

「留めないのはどこのボタンなのでしょうか?」

その前にスーツのボタンの役割を考えてみましょう。

スーツのボタンには生地を留める役割があります。前身頃を留めるのはもちろん、袖口もそうですね(本切羽の場合 本切羽の詳細は後述)。しかし、スーツのボタンの役割はそれだけではありません。実はスーツのボタンには装飾の役割もあります。

ボタンの歴史は約6000年と長く、ボタンの歴史がそのまま衣服の歴史と言われるほど。当初の衣服は寒さや外敵から身を守るという機能しか持たないものでした。そこに装飾という概念を持たせたのがボタン。つまり、ボタンが誕生した当初は生地を留めるのではなく、あくまでも装飾が目的だったのです。

ちなみにボタンにはモチーフが掘られていたそう。そのモチーフによって権力や信仰を表していたという話もあるようです。

前身頃のうち装飾の役割を担っているのが一番下のボタン。そのため、一番下のボタンは留めないのがマナーなのです。これがいわゆる「アンボタンマナー」なのです。

ただし、これはメンズスーツに限った話。レディーススーツは着丈が短く、すべてのボタンを留めたときにキレイなシルエットになるように作られています。

ためしに一番下のボタンを留めずにレディーススーツのジャケットを着てみましょう。インナーのお腹の部分が見えて、ややだらしない印象になるでしょう。

社会人になった後もボタンを外さないシーンがやってくることがあります。それは目上の方がボタンを外さないとき。スーツはあくまでもビジネスの相手への敬意を示すもの。マナーも大切ですが、相手への心遣いも大切なのです。

あなたの目の前にいる方は、アンボタンマナーを知ったうえであえてすべてのボタンを留めているのかもしれません。あるいは何か考え事をしており、いつもは外しているボタンを外し忘れているだけかもしれません。

そのようなシーンであなたがアンボタンマナーを守れば「相手がマナーを知らない」といっているように映ったり、「目上の相手より偉そうな格好をしている」と取られたりするかもしれません。

繰り返しになりますがビジネスシーンで大切なのは、マナーを守ることよりも相手を気遣うこと。自分ではなく相手目線で考えるようにしましょう。

レディーススーツのボタンマナーとは

女性の場合は「アンボタンマナー」は適用されません。女性と男性でボタンの留め方に違いがあるわけですが、これは男性用スーツと女性用スーツの仕立ての違いによるものです。女性用スーツについてはすべてのボタンを留めた状態が最も美しいシルエットになるように作られており、ボタンを開けてしまうとラインや形が崩れてしまいます。

⚫︎レディーススーツのボタンマナー

(1つボタンの場合)

レディーススーツの中でも1つボタンのジャケットは最もカジュアルなデザインのものです。ウエストラインが強調されるため、女性らしさがあるスタイリッシュな着こなしができるのが特徴といえるでしょう。1つある前ボタンについては常に留めておくのがマナーです。

(2つボタンの場合)

レディーススーツの中でも2つボタンのジャケットは最もオーソドックスなデザインのものです。胸元が開きすぎないため、着用シーンを選ばないのが特徴といえるでしょう。ビジネスシーンはもとより就職活動時の面接にも対応できるデザインです。

実は就活で着用するレディースのリクルートスーツはそのほとんどが2つボタンとなっていることを覚えておきましょう。

メンズスーツの場合は先に記載したとおり2つの前ボタンを留めることはありませんが、レディーススーツの場合は常時2つのボタンを留めて着用します。

(3つボタンの場合)

3つボタンのジャケットは2つボタンよりも更に堅い印象を生み出すのが特徴です。2つボタンよりも胸元のVゾーンが狭くなるので、堅実で実直な印象となります。こうした印象が大切である公務員や銀行員の人にオススメのジャケットといえるでしょう。

こちらもメンズスーツの場合は全てのボタンを留めることはありませんが、レディーススーツの場合は全てのボタンを留めて着用します。

⚫︎レディーススーツのボタンマナー

レディーススーツにおいてはダブルジャケットが大変人気があります。シングルスーツは女性らしさを強調したスタイルになりがちですが、ダブルスーツの場合は女性らしさよりもクラシカルでメンズライクな着こなしになるといえるでしょう。レディースのダブルスーツにおいても、正面からみて右側は装飾用です。レディースのダブルスーツは左側のボタン2つとも留めるのがマナーとなっています。

(オフィスカジュアルの場合)

近年流行している、オフィスカジュアルスタイルでは、レディースのダブルスーツのボタンを全て外し、前を開けて着用します。

本来のダブルススーツにはない着こなしで、ビジネススタイルの変化によって発生した着こなしです。

ジャケットを羽織るスタイルはカジュアルデザインのスーツに限定される着こなしであるため、かっちりとしたスーツデザインや重要なビジネスシーン、結婚式で前を全部開けることは避けましょう。

アンボタンマナーに反した2人の話

ここで興味深いお話を2つ紹介します。

1つ目はアンボタンマナーを知ったうえで、あえてすべてのボタンを留めていた方のお話。

その方はアメリカの第35代大統領であるジョン・F・ケネディ氏。

彼は演説中の身振り手振りでジャケットが持ち上がったとき、ワイシャツのお腹の部分が見えるのを嫌ったそう。そのため、ジャケットのすべてのボタンを留めていたのです。

しかし、彼が着ていたスーツはすべてのボタンを留めても窮屈にならないように仕立てられていたもの。アンボタンマナーの理由を知り、そのデメリットを回避したうえで表現した彼のオリジナリティだったのです。

2つ目はあえてかつてのイギリスの着こなしにこだわる方。

1900年以前のイギリスのスタイルにこだわる方も現在のアンボタンマナーに反する着こなしをします。

それはなぜか?当時のスーツは一番下のボタンまで留める仕様であったからです。
一番下のボタンが今より上についており、すべてのボタンを留めても窮屈にならなかったのです。

現在でも当時のようなスーツを仕立てることは可能。当時のスタイルにこだわりを持っている方は(もちろんアンボタンマナーを知っていても)、一番下のボタンは留めません。

スーツのボタンの留め方にルールがある?スーツのボタンの留め方を解説!

アンボタンマナーの解説をしましたが、ボタン配列やボタンの数はスーツによっていくつかのパターンがありますので、1つずつ解説いたします。

また、先ほど紹介しましたアンボタンマナーの例外も登場します。どれが例外か、考えながら読んでみてください。

【ルール1】ボタンは上1つを留める

スーツのボタン配列には、縦一列に並んだ「シングルブレスト」(以下、シングルスーツ)と、縦二列に並んだ「ダブルブレスト」(以下、ダブルスーツ)があります。

まずは2つボタンシングルのスーツについて説明いたします。

⚫︎2つボタンシングルとはどのようなスーツ?

2つボタンシングルは現在のスーツの形の中の定番。迷ったらこの形にしましょう。

とくにリクルートではスーツで個性を表現する必要はありません。2つボタンのシングルを選んでおけば間違いないでしょう。

Vゾーンが広くウエストラインが際立ちやすくなるため、スタイリッシュに着たい方におすすめです。ネクタイが映えるのも2つボタンシングルの特徴。ビジネスシーンでもささやかなオシャレを楽しみたい方は2つボタンシングルのスーツがいいでしょう。

⚫︎定番の2つボタンシングルが似合うのは?

このような特徴を持つ2つボタンシングルのスーツ。どのような方が似合うのでしょうか?

2つボタンシングルのスーツが似合うのは、背が高く胸板の厚い方です。2つボタンシングルより長い歴史を持つ3つボタンシングル(詳細は後述)は細身の人が着用すると様になるもの。しかし、これではスーツを着用する人を選んでしまう。

そこでさまざまな体型の方をカバーするために2つボタンシングルが一般に広まったのです。Vゾーンが広いため首元に余裕があり、第一ボタンの位置が低いので腹回りにも余裕があります。

胸が薄い方が2つボタンシングルを着用すると胸がぽっかり空いてしまいます。また、身長が低い方が着用すると第一ボタンの位置が低いため身長がより低く、足がより短く見えてしまうのです。

そのようなときはどうすればいいのでしょうか?
答えは第一ボタンの位置を上げることです。

もちろん既製品のスーツでは対応できないこと。オーダースーツを作るときにスタイリスト(お店によってはフィッターと呼ぶ)の方に相談してみましょう。

⚫︎2つボタンシングルの着用シーン

2つボタンシングルはスーツの中でもオーソドックスな形。主流のデザインでもあり、ほとんどの人が着用した経験を持っているのではないでしょうか。
そのため、結婚式などのフォーマル(冠婚葬祭)、ビジネス、リクルートと幅広いシーンで着られるのです。ネイビーやグレーならなおさら無難です。

年齢層も選ばないので、体型さえ変わらなければ若いころに買った一着を長く着られるのです。とはいえ、2つボタンシングルはゆとりがあるので多少ウエストが大きくなっても対応できます。

⚫︎2つボタンシングルの留め方とは?

2つボタンシングルでは第一ボタン(一番上のボタン、以下同様)のみ留めます。アンボタンマナーをそのまま守った形で着用するのが正解なのです。下のボタンは装飾用ですので、どんな時でも留めることはありません。

ボタンのかけ方に迷った時は、一番下を開けましょう。

⚫︎2つボタンシングルが広まった経緯

2つボタンシングルにさらにボタンを1つ追加した3つボタンシングル(詳細は後述)。1920年代にすでに主流だった3つボタンシングルが大流行したのが1930年代なのです。

仕掛け人となったのは当時イギリス皇太子であったウィンザー公(エドワード8世)。彼が好んで着用していたスーツが「イングリッシュドレープスーツ」と呼ばれるようになり、イギリスやアメリカで大流行したのです。このころから一番下のボタンを留めないようになったとも言われています。

また、1930年代中頃のスーツ業界関係者に向けた資料では「3つボタンシングルの一番下のボタンは留めない」という趣旨の記載があったとも言われています。このころに後のアンボタンマナーが誕生したのではないかと推測できます。

そして1950年代にアメリカで流行したのがアイビースタイルです。移民が多い自由な気質のアメリカ人が作ったのが、3つボタンシングルの第一ボタンがラペルの下に隠れた段返り(詳細は後述)。
イギリスのクラシカルな雰囲気は残しつつ、機能性を高めるために第一ボタンの位置を下げて首元の雰囲気を自由にしたのです。

アイビースタイルと同じころに誕生したのがコンチネンタルスタイル。背が高く手足の長いアメリカ人が、自分たちのスタイルにより合うスーツを求めて作ったのが2つボタンシングルなのです。

1960年代はじめにアメリカのブルックスブラザーズが2つボタンシングルを発表。そして当時のアメリカ大統領であるジョン・F・ケネディ氏が愛用したことで世界中に広まりました。

ファッション以外でもアメリカの影響を強く受けてきた日本。アイビースタイルやコンチネンタルスタイルの影響も受けたことでしょう。1990年代には日本でも3つボタンシングルが流行。

そして2000年代に入ると2つボタンシングルが主流になり現在もそのトレンドは続いています。

歴史としては3つボタンシングルの方が長いですが、流行は変わるもの。時代は前後しますが、実は1900年代はじめには「3つボタンはすでに古い」と言われる時期もあったのです。
しかし、一言に2つボタンシングル、3つボタンシングルと言ってもディテールは時代によって変わります。
今後、ふたたび段返りが流行するようなことがあっても、おそらくアイビースタイルそのままというわけにはいきません。その時々にあったスーツを着るようにしましょう。

【ルール2】ボタンは上と中2つを留める

次は3つボタンシングルについて説明いたします。前身頃を留めるボタンが3つあるのが3つボタンシングル。第一ボタンがラペルの折り返しより下にあるのが特徴。「3つボタン2つ掛けスーツ」とも呼ばれています。

⚫︎3つボタンシングルとはどのようなスーツ?

3つボタン2掛けスーツ(以下3つボタンシングル)とは、ジャケットの上から2つまでのボタンを留めて着用するデザインのこと。ボタンを留めた分タイトなシルエットになるため、クラシックな印象になります。

2つボタンに比べて胸元が見える範囲が狭くなるため、印象としては少し固めです。

とはいえ、ウエスト部分の絞りが緩いため、少し古びたデザインになります。そのせいか、近年では3つボタン2掛けスーツを着用する人は減ってきているのです。

⚫︎3つボタンシングルが古いといわれる理由

なぜ、3つボタンシングルが古いと言われてしまうのでしょうか?

2つボタンシングルのスーツが主流になってきた近年では、3つボタンシングルのスーツは「古い」と言われています。考えられる理由は以下の2つです。

  • ラインが緩いから
  • きちんと感が出過ぎてしまうから

3つボタンシングルのスーツが古いといわれている理由を見ていきましょう。

3つボタンシングルのスーツが古いといわれる理由の1つ目は、「ラインが緩いため」です。ラインが緩いと体にメリハリが出にくいため、野暮ったさが出てしまいます。

とくに、ウエストラインが緩いと、どこか古臭く見えてしまうでしょう。とはいえ、3つボタンシングルスーツの中には、ウエストラインが絞られているデザインもあります。

3つボタンシングルスーツを購入しに行った際には、スタイリストに「3つボタンシングルのスーツでウエストが絞られたデザインが欲しい」と伝えましょう。

ブランドにもよりますが、タイトでエレガントな3つボタンシングルのスーツを用意してくれるでしょう。

3つボタンスーツが古いといわれる理由の2つ目は、「きちんと感が出過ぎてしまうから」です。近年、スーツはファッションの一部になりつつあるため、カジュアルさを取り入れたコーディネートが流行っています。そのためきちんと感が出過ぎてしまうと、一昔前をイメージさせるような見栄えになってしまうのでしょう。

とはいえ、きちんと感が出ているのは決して悪いことではありません。むしろ、誠実なイメージがあるため、好印象を与えられるでしょう。しかし、行き過ぎたきちんと感はどこか古いイメージがでてしまうのかもしれません。

⚫︎違うのはボタンの数だけ?

スーツのボタンの数が違うと、シルエットが異なります。

2つボタンシングルのスーツであれば、ウエストがある程度絞られているデザインが主流でしょう。

一方で、3つボタンシングルのスーツはデザインにもよりますが、ウエストがそれほど絞られていません。

シャツとの組み合わせ方にもよりますが、ウエストが絞られたデザインはスマートな印象を与えます。ウエストが絞られていないデザインは、クラシックな雰囲気を醸し出せます。

スーツのボタンが違うとシルエットが異なるため、着用シーンや会う人に応じてコーディネートするのが好ましいのです。

⚫︎3つボタンシングルの着用シーン

3つボタンシングルのスーツは基本的にどのシーンでも着用できます。しかし、現在では2つボタンシングルのスーツを着用している人の方が多いようです。
服装の違いで周囲から浮いてしまう可能性があることを考えると、会議や商談などの重要なシーンでは3つボタンシングルのスーツは控えたほうがいいでしょう。

3つボタンシングルのスーツは普段の何気ないオフィスでの仕事であれば、着用しても問題ありません。ただし、周囲に馴染める服装を選ぶなら、2つボタンシングルのスーツが無難かもしれません。

⚫︎3つボタンシングルの留め方とは?

3つボタンシングルのスーツを着用する時でも、ボタンの留め方にはマナーがあります。

上二つのボタンは留め、一番下のボタンのみ外して着用します。
一番下のボタンを外すことで、腰回りにシワがつきにくくなるため、エレガントな雰囲気を醸し出せます。

【ルール3】ボタン段返りは中1つを留める

次は段返りのボタンについて説明いたします。

⚫︎段返りとはどのようなスーツ?

3つボタンシングルの段返りスーツ(以下、段返り)とは、ジャケットの一番上のボタンが襟で隠れているデザインのことです。

一番上のボタンが隠れているため、一見2つボタンシングルのようなスーツに見えます。
とはいえ、2つボタンシングルのスーツよりも、Vゾーンが狭いためよりクラシックな印象になります。そのため、ネクタイが見える範囲も2つボタンシングルのスーツより狭いのです。

一番上のボタンは装飾用と考えて、2つボタンスーツとして着用するイメージです。

⚫︎ややクラシックな印象の段返りが似合うのは?

段返りが似合うのは身長が高く細身の方です。身長が170cm半ば以上、細身といっても極端に細い必要はなく普通体型の方なら似合います。

Vゾーンの下端(襟の折り返し)の位置が2つボタンシングルより上にあるため、小柄な方やふくよかな方が着用すると首元が詰まった印象になってしまうのです。

⚫︎段返りはスーツを着こなすポイントの1つ

3つボタンスーツを着こなすポイントは、以下の3つです。

  • サイズ感
  • シルエット
  • 段返り

3つボタンスーツを購入するなら、上記のポイントを意識したデザインを選びましょう。サイズ感だけを見て購入すると、古臭い印象になりかねません。3つボタンスーツを着こなすポイントを紹介します。

はじめに大切なのは「サイズ感」。

ウエストや肩周りが窮屈すぎたり緩すぎたりすると、動きにくかったり見栄えが良くなかったりします。
また、ジャケットの袖が短かったり、パンツの丈が短かったりするのもNGです。みすぼらしい格好になりかねません。

3つボタンスーツを着こなすなら、デザインも大切ですが、何よりも自分にあったサイズ感を重視しましょう。

次に大切なのは「シルエット」。

シルエットの見栄えを良くするには、ある程度タイトなデザインやサイズ感の3つボタンスーツを選びましょう。見栄えがいいシルエットの3つボタンスーツを選ぶなら、ゴージラインが高めのものやラペルの幅がやや狭いものを選ぶのが無難です。ゴージラインとは、上襟とラペル(下襟)の縫い目を指します。ゴージラインが高いデザインは、Vゾーンがスッキリして見えるため、見栄えが良く映るのです。

そして段返りのデザインも大切。

段返りは、2つボタンシングルのスーツのデザインと似ています。そのため、3つボタンが持つクラシックな印象の中に、どこか2つボタンシングルのスーツを彷彿とさせる雰囲気を醸し出せます。

つまり、段返りのデザインは、3つボタンスーツと2つボタンシングルスーツの特徴を併せ持ちます。

よりおしゃれに3つボタンスーツを着こなすなら、段返りのデザインがおすすめです。

⚫︎段返りの留め方とは?

真ん中のボタンしか留めないのが段返りです。
3つボタンスーツと一口にいっても、ボタンの留め方はさまざまです。スーツを着こなすならボタンの留め方には細心の注意を払いましょう。

3つボタンスーツを着こなせると、ワンランク上のエレガントな雰囲気を醸し出せるでしょう。3つボタンスーツを購入するなら、自分に合ったサイズ感やシルエット、段返りのデザインのものがおすすめです。

【ルール4】シングルスーツ1つボタンは留める

前側にひとつだけボタンが付いているタイプのジャケットです。ボタンがひとつしかないため、Vゾーンが広くなるのが特徴といえるでしょう。

「1つボタン」は最もフォーマルなボタン数であり、フォーマルスーツにも広く採用されています。そんな「1つボタン」ジャケットのボタンについては、しっかりと留めておくのがマナーです。先述した「アンボタンマナー」は適用しないことをしっかりと押さえておくようにしましょう。

【ルール5】4つボタンダブルは上1つを留める

「ダブルスーツ」とはスーツのフロント側にあるボタンが2列になっているスーツのことです。ダブルスーツは1980年代に大流行しましたが、その後はシングルスーツが主流となっています。このため、ダブルスーツに対して「古くさい」「野暮ったい」と考える人もいるのではないでしょうか。しかし、近年はクラシックなダブルスーツが見直されており、着用する人も増えています。1980年代のダブルスーツはダボッとしたタイプでしたが、近年のダブルスーツはスタイリッシュになっているのが大きな特徴といえるでしょう。

ダブルにはボタンの数が異なる「4つボタン」と「6つボタン」の2つの種類があります。ここでは4つボタンダブルについて説明いたします。

⚫︎4つボタンダブルとはどのようなスーツ?

4つボタンダブルとは2つのボタンが2列、合計4つならんだスーツのこと。シングルより重厚感と安心感がありスポーティーな印象で、筋肉質やふくよかな体型の方に似合います。

⚫︎4つボタンダブルの留め方とは?

正面から見たとき、ボタンを縦に2つのグループにわけます。

正面から見て右側のグループは飾りボタンであるため留めません。左側のグループの上ボタンのみ留めます。また、内側にもボタンがあるのが4つボタンダブルの特徴。このボタンの役割は前身頃がずれるのを防止することですので、必ず留めるようにしましょう。

ダブルはボタンホールが左右にあるため、どっちが前なのか迷う場合があります。
前身頃の重ね方が分からない場合には、ジャケットを着た後に、右側を内側に、左側を外側にしてボタンを留めます。

スーツの前合わせは、常に左側が表に見えるように重ねます。

また、ダブルスーツをダブルボタンと呼ぶことがありますが、正式な言葉ではなく、本来はダブルブレストが正式です。

実は4つボタンダブルの中には、上ボタン2つが外に開いてY字状に付けられているタイプも。4つボタン1つ掛けタイプと呼ばれ、上のボタンは飾りのためボタンホールがなく留められない仕様になっています。

この場合は左側の下ボタンを留めるようにしましょう。アンボタンマナーからは逸れますが、これが正解です。

4つボタン1つ掛けのダブルスーツは、衿が長くなるため、別名ロングターンとも呼ばれます。バブル期の頃、このダブルのスーツを実際のサイズより大きめに作るのが流行しました。今はあまりありませんが、当時はスーツの色もパープルやイエロー、グリーンなどに人気が集まりました。現在も根強いファンから一定の支持を得ているデザインです。

⚫︎4つボタンダブル2つ掛けの留め方とは?

4つボタン1つ掛けのデザインに対して、2つ掛けは衿の空き部分が狭くなり、タイトな印象になります。ボタンは2つとも留めて着用するとフォーマルな雰囲気になるため礼服などにおすすめです。
上だけ留め、下を開けるとビジネス風な雰囲気になります。

葬式など、お悔やみの場では、ダブルのボタンをすべて留める方が無難です。
服のシワや、シルエットを気にする場ではないためです。

ただ、ダブルの場合は、一番下のボタンは、留める、開けるどちらでも着用が可能なため、必ず守らなければいけない留め方などはありません。

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【ルール6】6つボタンダブルは中1つ、または中下2つを留める

もう1つのダブルが6つボタンダブルです。

⚫︎6つボタンダブルとはどのようなスーツ?

6つボタンダブルとは3つのボタンが2列、合計6つならんだスーツのこと。ただでさえ重厚感のあるダブルですが、ボタンが増えるため4つボタンダブルよりさらに重厚感があります。

⚫︎6つボタンダブルの留め方とは?

基本的な考え方は4つボタンダブルと同様です。

6つボタンダブルの中でオーソドックスなのは一番上のボタンが左右に開いて取り付けられたY字状の配列。4つボタンダブルと同様に一番上のボタンは飾りです。左側の真ん中のみ留める、きちんと感のある着方として左側の下も留める、いずれも正解です。アンボタンマナーからは逸れることになりあますが、これが6つボタンダブルの着方なのです。

ダブルスーツはシングルスーツに比べると、重厚感のあるシルエットになります。そのため着用されるのは40代、50代以降の方が比較的多かったようです。しかし最近では、ダブルスーツでもタイトなデザインのものが出ており、若い方を中心に人気があります。

中にはボタンが3つずつI字状に2列に並ぶ6つボタンダブルもあります。この場合も例外として左側3つすべてのボタンを留める着方があります。

これも例外ですが着崩しのひとつとして、一番下のボタンしか留めないというパターンもあります。ただし、プレゼンや商談でなくオフィスの自分の机で仕事をするときなど、かなりシーンを選びますので注意が必要です。

ダブルスーツの場合、左側ボタンの上側だけを留めるスタイルが一般的ですが、「ボタンマナー」というほど強いものではないことを覚えておきましょう。左側ボタンの下側を留めてもマナー違反にはなりませんが、外すことで「こなれ感」を出すことができます。なお、4つボタンの場合は右の内側にもボタンが付いています。こちらは右前身頃がずれないようにするためにあるボタンですので、留めておくと良いでしょう。

【ルール7】座る時には外すのがマナー

座るときにはすべてのボタンを外すのがマナー。座る時にサッとボタンを外し、立ち上がるときにさりげなくボタンをつける。デキるビジネスマンは呼吸するようにこの動作を行います。

⚫︎着席時のボタンマナーとは

▼シングルスーツ着用時

ボタンを外していると失礼になるのではないかと考える人もいるかもしれませんが、実はどんなに重要な会議や商談においても、着席時に前ボタンを外すことは失礼になりません。着席している時はスーツにシワが入ったり、型崩れしやすい状況です。生地の傷みも発生しやすいので、着席時は前ボタンを外すことが推奨されています。

▼ダブルスーツ着用時

ダブルスーツの場合は、座るときにボタンを外しません。ダブルスーツは前身頃の重なる面積が広いのでボタンを外すとだらしない印象になってしまいます。
シワが気になる場合は、着席前にジャケットを脱ぐのもひとつの選択肢ですので、TPOに応じて対応すると良いでしょう。

ただし、例外もあります。

まずレディーススーツの場合はデザインの関係上座るときもボタンを外しません。

メンズスーツでもリクルートの場合はボタンを外さない方が無難です。面接官の中には就職活動中の学生がジャケットを全開にして着用する姿を見て「偉そうだ」と思う方もいるでしょう。

スーツに興味のある学生の方、あるいは繊維業界やアパレル関係を目指す学生の方はアンボタンマナーをご存知かもしれませんが、リクルートにおいては「あえて外さない」選択が無難のようです。

ビジネスマナーとしてボタンを外すのは、入社してからにしましょう。

ダブルスーツにおける着こなしテクニック

シングルスーツとは雰囲気が異なるダブルスーツ。着こなすには少々テクニックが必要なようです。 

ダブルスーツの起源

着こなしのテクニックの前に、まずはダブルスーツの起源について説明いたします。

ダブルスーツの原型となったのはイギリス海軍の上級将校が着用していた軍服。その軍服のボタン配列が2列だったのです。なぜ、上級将校が着用していた軍服のボタン配列は2列だったのでしょうか?

イギリスに限らず海軍は船に乗って海上で戦うもの。航行中の船の甲板に兵士を集め、何か話すようなことも多かったでしょう。しかし、洋上は風が強いため現在のシングルスーツのような服だと、前身頃が風で揺れて落ち着かない印象に。そのため、ボタン配列を2列にして前身頃の重なりを大きくし、強い風が吹いても揺れないようにしたのです。

この起源の名残りが今でもあるのがPコート。

風が強いとき、風向きと前身頃の合わせる向きによっては風が入ってきます。風が入ってこないようにするため、上級将校の軍服の前身頃は左右どちらでも合わせられるようにできています。現在のダブルスーツはそうなっていませんが、この頃の名残がPコートに残っているのです。

実はダブルスーツにはもう1つ起源があるとも言われています。元になったのはやはり軍服。

かつて軍隊が持つ武器は剣が主流でした。剣を使った戦闘は立った状態で行いますので、着たり脱いだりしやすいシングルのボタン配列が好まれました。しかし時代が進み銃が主流になると、戦闘において剣では考えられなかった姿勢を要するのでした。

それは「腹ばいの姿勢」。

腹ばいになると体の中央にあるボタンがちょうど邪魔になります。そのまま匍匐前進(ほふくぜんしん)をすることもあるので、やはりボタンが邪魔に。そこで生まれたのがダブルのボタン配列なのです。ダブルのボタン配列だと、お腹の両サイドにボタンがあるため匍匐前進の邪魔にならなかったことでしょう。

「格式高いダブルスーツを簡略化したのがシングルスーツ」と思われる方がいるかもしれませんが、そのようなことはありません。見た目の印象は違う2種類のスーツですが、格式の高さは変わりません。

ダブルスーツが周りに与える印象

ダブルスーツはそもそもシングルスーツより重厚感や威厳を感じさせるもの。それに加えてある特定の時期に流行った印象が一定以上の世代の中にあるようです。

その時期とは日本のバブル経済(以下、バブル)のとき。

不動産関係のビジネスを行っている富裕層が好んでダブルスーツを着用していた時期がありました。そのため一定以上の世代では、特に若い方がダブルスーツを着用すると「偉そうだ」ととらえる方がいるそうです。リクルートで着用しない方がいいのは言うまでもありません。

一方、フォーマルでは問題なく着用できるのもダブルスーツの特徴。前述の通りシングルスーツとの格式の差はありませんので、問題なく着用できます。ただし、フォーマルで着用する場合は光沢がありすぎるスーツを着用しないように気をつけましょう(これはシングルスーツも同様)。

ダブルスーツを着れる4つのビジネスシーン

ビジネスシーンで着用すると周囲の方から抵抗があると感じられるかもしれないダブルスーツ。どのようなビジネスシーンであれば着用しやすいのでしょうか?

ダブルスーツを着用しやすいシーンを4つ紹介いたします。

【①社員の方が全体的に若い会社】

まずは社員の方が全体的に若い会社です。

スタートアップ企業(ベンチャー企業)であれば社員の平均年齢が30代の会社もあるでしょう。社長もそれくらいの年代であればなお、いいかもしれません。

理由はバブルの頃のスーツを知らないためです。筆者も30代ですがバブルの頃はまだ子どもでしたので、当時流行ったダブルスーツの印象を肌で感じたことはありません。当時の写真でダブルスーツを見ても「このような時代があったのか」と思う程度。ダブルスーツに対して特別な思いはないのです。

しかも、最近のダブルスーツは体にフィットするスタイリッシュなものが多く、当時のものとはシルエットが異なるためなおさら気にならないでしょう。

【②海外の方が多い会社】

2つ目は海外の方が多い会社です。

海外の方も(日本の)若い方と同様ダブルスーツに対してバブルのイメージは持っていません。そのため、海外の方が多い会社ではダブルスーツを着やすいでしょう。

ただし日本での仕事歴が長く、バブルの頃既に日本で働いていた方がいれば要注意です。もしかするとダブルスーツに対して年配の日本人と同じような感覚を持っているかもしれません。

【③講演会で話すシーン】

3つ目は講演会で話すときです。

講演会であなたが話す。そのようなときはあなたが主役ですのでダブルスーツを着用しても問題ありません。
しかもダブルスーツには威厳や信頼を醸し出す効果も。聴講者の信頼を得るためにもダブルスーツはいい選択かもしれません。

【④立場上問題ないシーン】

4つ目は組織の中でダブルスーツを着用しても問題ない立場であるときです。

目上の方がまったくいなければいいですが、そのような立場の方は社長や会長だけ。それでは社長や会長以外はダブルスーツを着用できないのか、と思うかもしれませんがもちろんそういう訳ではありません。

組織の中では上になればなるほどダブルスーツを着用する方が増えます。その方たちの立場とあなたの立場を比べ、同等以上であればダブルスーツを着用しても問題ないでしょう。

言うまでもありませんが、新入社員のうちにいきなりダブルスーツを着用するのは避けたほうがいいでしょう。

ダブルスーツの選び方

⚫︎身長から選ぶ場合

まずは身長から選ぶ場合。身長が高い方はスーツに限らずどのような服を着ても似合う傾向にあります。そのため、ダブルスーツを選ぶときも特に気をつけることはないでしょう。気を遣ったほうがいいのは身長が低めの方です。

シングルスーツに比べて胸元がつまりやすいのがダブルスーツの特徴。身長が低めの方はアクセントとなるようなネクタイやチーフを使用して、見る人の目線が上にあがるように工夫しましょう。着丈にも気を遣いましょう。

着丈が長すぎると体に合っていない大きなスーツを着ているように見られてしまうことも。そのため、自分の体に合った着丈のスーツを着用しましょう。現在の着丈のトレンドはヒップが少し見える程度です。

肩パッドも厚すぎず自然な薄さのものを選びましょう。身長が低めの方が厚い肩パッドの入ったスーツを着ると、「スーツに着られている感」が出てしまい実際の身長よりも低い印象になることがあります。自分の体の特性を理解してシルエットを補うような着こなしを身に着けましょう。

⚫︎体型から選ぶ場合

次は体型から選ぶ場合。スーツに限らず服の色は着る人の印象をコントロールする要因となります。

色は大きくわけて2種類。「明るく外に向かって広がるような色」と、「暗めで全体を引き締めるような色」があります。この2種類の色を体型によって使い分けるのです。

・細身の方

細身の方はダブルスーツを着ることで堂々した印象を与えられるようにしましょう。

そのために必要な色はグレー。グレーの中でも明るめのグレーがおすすめです。明るめのグレーは広がりを持つため、体全体を大きく見せる効果が期待できます。

・ふくよかな方

ふくよかな方は引き締まった印象を与えられるようにしましょう。

そのために必要な色は濃いネイビーやダークグレー。体にフィットするサイズのスーツを着用するのはもちろんですが、見た目にも体にフィットする色を選びましょう。
濃いネイビーやダークグレーなど引き締める効果がある色を選べば、余計な広がり感を持たせることなく引き締まった印象を与えられるのです。

・肩幅が広い方

ダブルのスーツが似合う人として、肩幅が広い人が挙げられます。
肩幅が広い、がっちりとした体型の方は、身長に関わらずダブルが似合います。
広い肩に、幅広のピークドラペルがバランスよく見え、堂々とした印象です。
着丈や袖丈、裾丈をジャストサイズに合わせ、胸からウエストへ向かって自然なラインで絞ったダブルスーツがスッキリ見えます。
肩幅が広い方は、オーダースーツのダブルでジャストサイズを意識して仕立てると、スタイルが良く見えるためおすすめです。

⚫︎着用シーンで選ぶ場合

次は着るシーンで選ぶ場合。スーツは着るシーンによって形や色柄が分かれています。場違いなコーディネートをしないよう、着用するシーンに合ったスーツを選ぶようにしましょう。

ビジネスシーンでは派手さをおさえた無地やシャドーストライプなど主張しない柄がおすすめです。ビジネスシーンで着用するスーツはとくに相手への心遣いを表すもの。個性をアピールするのではなく、相手が不快に思わないことを一番に考えましょう。

反対にカジュアルシーンでは個性を発揮しても問題ありません。ペンシルストライプやウインドウペーンなどカジュアルでラインが太めの柄でオシャレを楽しみましょう。

結婚式ではシャドー系、パーティーではストライプなど、その場に合わせたコーディネートが楽しめます。ただし、主役(結婚式の場合は新郎や新婦)より目立たないようツヤ感を気にした方がいいでしょう。

葬儀でもダブルスーツを着用できますが、ツヤ感がなく漆黒に近い無地のブラック(喪服)を選ぶのは言うまでもありません。

⚫︎年齢で選ぶ場合

最後は年齢も気にしましょう。ダブルスーツは重厚感や威厳を感じさせるもの。そのようなスーツですので、着用する人自身の印象とスーツの印象がマッチしないと不自然に思われます。

たとえば就職活動中のフレッシュで若々しい学生が面接でダブルスーツを着用すると不自然に映るもの。また、社会人になった後も特に年配の方が多い職場では冷たい目で見られるかもしれません。

最近ではスリムなダブルスーツが若い方の間で人気があるそうです。しかし、スーツは一緒に仕事をする周りの方への感謝の気持ちと敬意を表すもの。周りの方からどのように見られるかも気にするのが大人のスーツの選び方です。周りでダブルスーツを着用している方がいれば参考にするのもいいかもしれません。

ダブルスーツの着こなし方

スーツはサイズ感が命と言われていますが、シングルスーツより顕著なのがダブルスーツ。

とくに1930年〜1940年代に確立されたクラシックな「イングリッシュドレープ」を彷彿とさせるシルエットを持つダブルスーツを着こなすにはサイズ感が大切なのです。

イングリッシュドレープの考え方はまさにメリハリ。肩と胸で存在感を出してウエストで息に絞り、そしてトラウザーズ(イギリスではスラックスの意味)へ広がるライン。これこそが英国のトラディショナルなスタイルなのです。

まずは肩と胸に厚みを持たせます。しっかりと入った肩パッドとふくらみのある胸の生地。バブルの頃のスーツだと現在の感覚ではやりすぎですが、シングルスーツよりは厚みのある存在感を出すのがコツです。

次はウエスト。正面から見たときに重厚感のある肩や胸から下りてくるラインを、一気に引き締めるのがウエストなのです。極力ゆとりをなくしてサイズを詰めましょう。
しかし、ボタンを留めたときにシワが入るのはNG。シワが入る直前で詰めをやめるのがベターです。目安としてお腹とボタンの間に拳が1つ入る程度のスペースを持たせましょう。

最後は裾。ウエストで一気に絞ったラインがふたたび広がることで砂時計のような男性的な曲線美が描けるのです。

このとき注意したいのが裾の丈。シングルスーツを中心に現在は丈の短いスーツが流行しています。もちろんダブルスーツにも裾の短いものがあるのも事実。

しかし、裾が短すぎると砂時計の最後の広がりが途中で切られてしまい、アンバランスな印象になりかねないのです。ダブルスーツ全体の雰囲気も損なわれるので注意が必要です。

ラペルの幅にも気をつけましょう。ダブルスーツに似合うのは幅が10cm前後のピークドラペル。肩は胸の存在感に負けないようにある程度の幅が必要なのです。しかし、小柄な方の中には10cmもラペルの幅があると心配になる方もいらっしゃるでしょう。そのような場合には少し幅を狭くしても構いませんが、9cm以下にはならないようにしましょう。

また、スラックスも細くしすぎないことが大切。重厚感のある上半身に対して下半身のラインが細すぎると、これもアンバランスになる可能性があります。

スーツの形は同じボタン配列でも流行り廃りがあり変化するもの。しかし、スーツに限らずどのようなことでも、その起源を大切にすることで基本がおさえられます。基本を忠実に守るのもあなたなりに着崩すのも、基本を知っているからこそできるのです。

ベストにおける着こなしテクニック

スーツスタイルで「ベスト着用」といえば、スリーピーススーツを連想する人が多いのではないでしょうか。ジャケットの中に着るだけでフォーマル感を高め、安心感や信頼感を演出してくれるベスト。ここではスリーピーススーツについて簡単に解説した上で、ベストの着こなしテクニックをアンボタンマナーとの関連にも触れながら述べていきます。

スリーピーススーツとは?

スーツには「ツーピーススーツ」と「スリーピーススーツ」と呼ばれるものがあることを知っているでしょうか。

ツーピーススーツとはジャケットとパンツで構成されているスタイルのことであり、スリーピーススーツとはジャケットとパンツに加えてベストを着用するスタイルのことです。

スリーピーススーツはスーツの本場であるイギリスで考案されたスタイルであり、日本では「三つ揃えスーツ」とも呼ばれています。この様に書くと、「スーツスタイルにベストをプラスしたスタイルのことをスリーピーススーツと呼ぶのだ」と考える人もいるかもしれませんね。

ここは勘違いする人がたくさんいるところですが、スリーピーススーツとはスーツジャケット、パンツ、ベストの3点がすべて同じ生地で仕立てられているスタイルになります。スーツの生地とは異なるベストを着用しているスタイルの場合は「ツーピーススーツ」となるので覚えておきましょう。

ベストの起源

着こなしテクニックの前にまずは、ベストの起源から説明いたします。

イギリスでスーツが誕生したころ、現在のスーツ姿とは違う点がありました。現在ではベストを着ない方もいますが、当時はジャケットとスラックスと一緒に必ずベストを着用していたのです。

形も現在のベストとは違って袖があったと言われています。その後ジャケットの袖口がタイトに変化していったこともあり、現在のように袖のない形に落ち着きました。

なぜ、イギリスでは必ずベストを着用していたのでしょうか?
その理由は当時のワイシャツに対する考え方にあります。当時ワイシャツは下着と考えられていました。とはいえ、人前でジャケットを脱ぐシーンはあるもの。そのような時に人前で「下着姿」にならないようにベストを着ていたのです。

それではなぜワイシャツが下着と考えられていたのでしょうか?

現在では下半身の下着(ブリーフやトランクスなど)を履くのが一般的ですが、かつてイギリスでは現在の形のような下着はなかったと言われています。それでは下着を履かずに直接スラックスを履いていたのか?、と思いますが決してそうではないでしょう。

実は足の付け根が隠れるほど長いワイシャツの裾にボタンがついており、それを留めることで現在下半身に履く下着の役割を果たしていたそうです。

つまり「ワイシャツが下着と考えられていた」のではなく、名実共にワイシャツが下着だったのです。ちなみに日本には「ふんどし」があったので、スーツが国内に入ってきた明治までさかのぼってもこのような下着は使用していなかったそうです。

ベストのメリット

ベストを着るとさまざまなメリットがあります。1つずつ説明いたしますので、気になるところをチェックしながら読んでみてください。

【①フォーマル感を高められる】

まずはフォーマル感を高められること。

ジャケット、スラックス、ベストの3点セット(スリーピーススーツ)をワントーンでシックにまとめると威厳と自信に満ちた印象となり、よりフォーマルになるのです。

そのためベストを着用するだけで、格がワンランク上がったような雰囲気を演出できます。ジャケットとワイシャツの間にベストが入るため奥行き感が増し、より体を立体的に見せる効果もあるのです。

【②オシャレな印象を与えられる】

次はジャケットを脱いだときの印象。

現在ではワイシャツを下着と考える方はいないと思いますが、ジャケットを脱いだときの印象は変わります。ベストを着ているとジャケットを脱いだときのスラックスとの統一感を出せます。

そのため、フォーマルでありながらオシャレという印象を与えられるのです。

【③スタイリッシュに見える】

3つ目はよりスタイリッシュになれること。

ベストを着ると強調されるのが縦のライン。そのため、スマートでスタイリッシュな体のラインを見せられます。シックな色のベストであれば、やや自信のないウエストをカバーできたり、目線が上に上がることによる脚長効果が期待できたりすることも。

ベストは見た目の印象を高めるだけでなく体のラインをカバーできるすぐれものなのです。

【④体温調節ができる】

4つ目は体温調節ができること。

冬の寒い時期や室内が冷房で冷えきった夏の時期。ベストを着ていればお腹を冷やさずにすみます。人によっては働く環境の温度に敏感な方も。

寒さを感じるときはためしにベストを着てみてもいいかもしれません。

ベストを着用するときの注意点

メリットの多いベストですが、着用するときには注意点があります。

まずは着る人を選ぶことです。

ダブルスーツと同様に威厳を感じさせるのがベスト。あまり若い方が着用した場合、とくに年配の方から「偉そうだ」と思われることも。はじめて会う目上の方(取引先の担当者など)の前でもベストを着用しない方が無難です。

似たような理由でリクルートと葬儀でもベストを着用しません。

リクルートは自分の人生を決める大切な場であり、葬儀は故人を偲んだり遺族への思いやりを表現する場。場に合わないコーディネートはマナー違反となり、「常識を知らない人」と思われる可能性がありますので、気をつけてください。

ベストのアンボタンマナー

ジャケットと同様にベストにもアンボタンマナーがあります。
ジャケットもベストの有無でボタンルールが変わるため、合わせて確認しておきましょう。

【ルール1】シングルスーツでベスト着用の場合

シングルスーツジャケットの下にベストを着用している場合、ジャケットのボタンは全開にしていても、留めていてもどちらでも問題ありません。

【ルール2】ダブルスーツでベスト着用の場合

ダブルスーツでジャケットの下にベストを着ている場合は、基本的にジャケットのボタンは外しません。ダブルスーツでジャケットのボタンを外してしまうと、だらしなく見えてしまうためです。座った時にボタンがきつい場合などは、ジャケットを脱ぐなどしましょう。
中に着るベストは、ダブルを避けシングルになります。

【ルール3】ベストのボタンの留め方

ベストのボタンは4つ・5つ・6つの3種類がありますが、どのタイプでも一番下のボタンは外して着用します。

 ダブルスーツでは一番下のボタンを留める例外がありますが、ベストでは一番下のボタンは留めません。ベストのデザインによっては、一番下のボタンのみがやや外側に配列されているタイプも。

そのようなベストの場合相手となるボタンホールはありますが、装飾目的のボタンのためかなり無理しないと留められません。窮屈になったり変なシワが入ってシルエットが崩れたりするのは言うまでもないでしょう。

ベストの着こなし方

ベストは着こなしがやや難しいもの。ここではカッコよく見られる着こなし方を説明いたします。

ベストの最大の魅力はスラックスへとつながる自然な曲線美。前を開けたジャケットから見え隠れするのがオシャレですね。しかし、よく見ると腰のあたりに帯状の盛り上がりが。

あなたは帯状の盛り上がりが何かわかりますか?

そう、ベルトです。

スラックスを履くときはベルトをするもの、という固定概念はありませんか?実はベルトをしてベストを着用すると、ベルトの形がベストの裾に浮かび上がってベスト特有の曲線美が崩れてしまうのです。

ベルトがNGならどのようにスラックスを履けばいいのでしょうか?

サスペンダーを使うのです。サスペンダーはアメリカ英語でスーツの本場イギリスではブレイシーズと呼びます。

サスペンダーを使えばスラックスのウエストを必要以上に絞る必要もないので、お腹周りにゆとりが生まれます。へその少し上にスラックスのベルトラインがくるように深めに履けば、ベストを必要以上に長くせずにすむので、脚長効果も期待できるのです。

会社の雰囲気でベルトをしないわけにいかない、といった事情がある方もいらっしゃるでしょう。その場合はベルトをするしかないかもしれません。しかし、普段使うベルトより細くて薄く、バックルもシンプルなものにしましょう。いつものようにベルトを締めるとベストの裾からバックルが見えてしまいます。そのようなときはバックルの位置をずらしベストの下に隠してしまうのです。

ベストのVゾーンの深さも気にしてみましょう。Vゾーンが浅いベストは若くてカジュアルなイメージがあります。そのような着こなしが似合う年齢ならかまいませんが、大人の着こなしをしたい年齢の方はVゾーンが深めのベストを選びましょう。

ベストのサイズ感も気にするポイントです。ゆとりがあるとベストからスラックスへの曲線美がきれいでなくなります。ベストは体にぴったりとフィットしたサイズがGOOD!体型が変わってしまったときは作り直すことになりますが、カッコよくスーツを着こなすには自分の体型を自分で管理できる大人力も必要なのです。

脚長効果の部分でも少し触れましたが、合わせるスラックスは股上が深めのものをおすすめします。また、ノータックは本来デニムやチノパンツに似合うデザイン。とくにベストを着用するときはクラシカルなワンタックや、さらにゆとりのあるツータックがおすすめです。

ベストはさまざまなアイテムと関連して着こなすアイテム。ベストから逸れた話も少しありますが、ベストを着こなすにはベスト以外のアイテムにも気を遣わなければいけません。大人の着こなしには細やかな配慮が必要なのです。

シングルベストとダブルベストとは?

スーツにシングルとダブルがあるように、ベストにもシングルとダブルがあることはあまり知られていないのではないでしょうか。
シングルベストは一番下を開けますが、ダブルのベストは、一番下を開ける、留めるどちらも可能です。

なぜアンボタンマナーってあるの?

現在のスーツにおいて一番下のボタンの目的はあくまでも装飾。

一番下のボタンを留めてしまうと、腹回りが窮屈、下半身を動かしづらい、ジャケットに余計なシワができる、ジャケットのシルエットが崩れるという問題が起きます。

スーツは仕事道具。キレイなシルエットという見た目と、動きやすさを追求した結果がアンボタンマナーなのです。

なぜ、このようなマナーができたのでしょうか?スーツの変遷をたどるとヒントが隠されています。

スーツの原型は19世紀後半のイギリスで誕生。当時のスーツはカジュアルな装いであり、運動するときや街へ出かけるときに着られていました。当時は喉元につけられた第一ボタンを留めていただけのようです。

時代は進み20世紀を迎えるころ、スーツがビジネスシーンで使われ始めます。用途が変わったスーツのボタンは取り付ける位置が変わりました。しかし、当時のボタンは今のスーツより高い位置にあったそうです。そのため、すべてのボタンを留めても窮屈になることなく着られていたのです。

このような逸話も残っています。

1901年にイギリス国王の座についたエドワード7世。彼はファッションやハンティングなど多彩な趣味の持ち主でした。そのなかでも大好きな趣味が食事。おいしいものを食べるのが大好きだったのです。しかし、このような趣味があっては体型がふくよかになるのは当然。ある晩餐会で事件が起こってしまいました。

大きくなっていくお腹が少し気になりつつも、いつものように食事を楽しむエドワード7世。しかし、この日ばかりはなぜかいつもより窮屈に感じたのです。最後には我慢できなくなり、一番下のボタンを開けてしまいました。

しかし、一番下のボタンを開けたのはエドワード7世だけではありません。周りにいた人たちもそうしたのです。

「この時代のイギリス人は、皆ふくよかだったのかな?」と思うかもしれませんが、そうではないでしょう。国王に恥をかかせてはならない、と周りにいた人たちも皆一斉に一番下のボタンを開けたのです。

さらに時代が進むと、ボタンの取り付け位置は下がっていきます。そのうち一番下のボタンは装飾用と考えられるようになり、前身頃を留める役割を終えたのでした。

一度すべてのボタンを留めて現在のスーツを着てみてください。

お腹周りや腰回りに窮屈さを感じると思います。ふくよかな体型の方でなくても、一番下のボタンを中心に生地が左右に引っ張られたようなシワができてしまいます。そうなると普通体型の方でも実際よりふくよかに見えたり、ふくよかな体型の方であれば体のサイズに合っていないスーツを無理して着ているようにも見えたりしてしまうのです。

せっかくあなただけのためにカッコよく仕立てられたスーツを着るのに、とてももったいないこと。スーツを着る社会人として知らないと恥ずかしいのはもちろんですが、あなたのスーツ姿をカッコよく見せるためにもアンボタンマナーを守るようにしましょう。

シワが入るとシルエットが悪くなるだけでなく、スーツの耐久性も落ちることになります。機能性も考慮した結果、現在のスーツでは一番下のボタンを留めないのがマナーとなっているのです。

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社会人としての第一歩となるリクルート面接ですが、学生時代には知らなかったスーツの着こなし術を知っておくと、常識人として高い評価を受けることが期待できます。この生地ではボタンマナーを中心に、リクルートスーツを着用する際のチェックポイントを詳しく解説します。

スーツにおけるボタンの種類とその選び方を一挙にご紹介!

スーツのボタンの留め方について説明いたしました。ここまで読んでくださった方は、ボタンの留め方についてかなり詳しくなったと思います。

ここからは実際にスーツに使用されるボタンの種類を説明いたします。

ボタンは小さいながらも役割や存在感の大きいもの。最後まで読むと今よりボタンに詳しくなれます。スーツをオーダーするときにはボタンにもこだわりを持つ。そのようなカッコいい大人になれるのです。

【ボタンの選び方1】水牛

スーツに使用するボタンの中では最高級の水牛。ここでは水牛ボタンの特徴や選ぶときの注意点などを説明いたします。

⚫︎水牛ボタンの特徴

水牛ボタンとは水牛の角(一部骨)を使用して作るボタンのこと。天然素材のため2つとして同じデザインが存在しないことが魅力です。

水牛ボタンは前身頃と留めるフロントだけでなく、補強ボタンとしても使われます。

補強ボタンとはジャケットのフロントボタンの裏側に付いている、直径10mmほどの小さなボタンのこと。フロントボタンの縫い目に力がかかるので、補強を目的として使われます。見えないところにこだわりを持つのは、カッコいい大人の着こなしですよね。

⚫︎水牛ボタンの製造方法

水牛ボタンはどのようにして作られるのでしょうか?ここでは後述するタツの製造方法を紹介いたします。

はじめに水牛の角を一定の厚みにスライス。次に専用の刃物がついたパンチングマシーンで丸く切り抜きます。ボタンになる前のくり抜いただけの状態のものを「ブランク」と呼びます。

今度はボタン(ブランク)の形を整えていきましょう。回転する機械にブランクをセットして、バイトと呼ばれる専用の刃物を押し当てて削ります。そして、また別の刃物を使って糸の通し穴を開けるのです。最後に表面のバリ(毛羽立ち)や余計な油分を落としたら完成です。

⚫︎スーツにおける水牛ボタンの注意点

高級な水牛ボタンには天然素材ならではの注意点があります。それは熱や水に弱いこと。クリーニングに出すときは注意が必要です。

ホットプレスやタンブラー乾燥すると、ボタン表面の油分が落ちてしまいツヤがなくなったり割れやすくなったりします。クリーニングに出すときはお店の方によく相談するようにしましょう。心配であれば一度ボタンを取ってしまうのがベストです。

また、クリーニングはドライクリーニングにしましょう。ドライクリーニングは石油などを原料にした特殊な溶剤を使って衣類へのダメージをおさえるクリーニング方法。水で洗うと型崩れや色落ちが発生してしまう衣服のために開発された方法です。

⚫︎本水牛ボタンと水牛「調」ボタンの見分け方

後述するポリエステルのボタンの中には、本水牛ボタンに見た目を似せて作った水牛「調」ボタンがあります。本水牛ボタンとはどのように見分ければいいのでしょうか?

模様を見るだけでは違いのわからない2種類のボタン。近年の水牛調ボタンは複数の原料をまぜて本物に近い模様を再現しています。しかし、決定的な違いが1つだけあるのです。

それは人間の爪のような筋が入っていること。あなたの爪を見てみてください。指が伸びる方向に薄い筋が通っていると思います。本水牛ボタンにも同じ筋があるので、水牛調ボタンと見分けるときの判断材料となります。

【ボタンの選び方2】原産地

ここでは最高級ボタンである本水牛の原産地を紹介いたします。あわせて水牛の特徴も紹介いたしますので、参考にしてみてください。

⚫︎本水牛ボタンの原産地

水牛の生息地域がそのまま原産地となります。水牛が生息するのはインド、アフリカ、南米、東南アジア、オーストラリアなど。野生の水牛はインド、ネパール、ブータン、タイにわずかに生息するのみとなっており、大半が家畜として飼われています。

一言に水牛と言ってもアジア水牛とアフリカ水牛にわかれていますが、全世界の水牛の95%がアジアに生息しているそうです。日本にはインドや東南アジアのものがよく輸入されますが、原産地は明記されていませんので両者を見分けるのは難しいものです。

⚫︎そもそも水牛とはどのような動物?

水牛は名前に「水」という字が入る通り、河川や沼地・湿地を好んで暮らす牛です。体の大きさはおおよそ次の通り。

  • 体長:2.5m〜3m
  • 体高:1.5m〜1.8m
  • 体重:0.8t〜1.0t

牛の中では体の大きさが最大であり、群れをつくって暮らしています。日中は寝たり反芻(はんすう)したりして休んでおり、早朝や夕方にえさを求めて活動します。ちなみに反芻とは一度胃の中に入れた食べ物を再び口に戻し、よく噛んでから再び胃に戻すことです。

大人になると体の表面にほとんど毛がなく、皮膚の色はグレーやブラック。しかし、昆虫による皮膚への害を防ぐため、どろの中で転げまわることが多い水牛。常に体の表面にどろがついているような状態ですので、実際に皮膚の色は分かりづらいのです。

【ボタンの選び方3】タツ・イタ

本水牛ボタンは水牛の角を使うと説明いたしましたが、使う部分によって材料の名前が変わります。

⚫︎先端部を輪切りにしたタツ

水牛の角の先端部分であり、中身がつまっている角を輪切りにしたものがタツ。水牛の角は先端部分以外空洞になっているのです。

縦方向に切ること、また「裁つ」(たつ)ことが名前の由来です。べっ甲のような天然素材ならではの色柄が特徴で、ヌルっとした美しい風合いをもっています。

⚫︎空洞部を板状にしたイタ

角の空洞部分を切り開き、板状にしてからくり抜いたものがイタ。タツもそうですが、ワシントン条約の都合上、水牛の角をそのままの形では輸入できません。

刷毛目(はけめ)の自然な柄を持つことが特徴。刷毛目とは陶器や土偶などの表面に見られる、多数の直線が平行にならんだ柄のことです。

【ボタンの選び方4】形状

スーツに使用されるボタンの形状は次の3種類です。

  • 二重タライ:ボタン中央部の凹みが二段階になっている
  • 細輪   :縁の部分が細い円になっている
  • ボウズ  :糸を通す穴以外が平らになっている

二重タライは英国のビスポークのジャケットやスーツによく使用されます。一時期は二重タライを使用するのが常識であったほど。縁、糸を通す穴、それ以外の部分で高さが三段階になっているので、立体感のある見た目が特徴です。

細輪は縁が細いので、さりげない色柄が似合うボタンです。

ボウズはなだらかな丸みを帯びた表面(おもてめん)と、平らな裏面で構成されています。ツルッとした様子が名前の由来。後述するシェルによく使われる形です。

【ボタンの選び方5】色

本水牛ボタンにはさまざまな色があります。しかし、天然素材において同じ色は2つとないもの。ただ、分類の都合上大きくわけるとベージュ、ブラウン、ブラックの三種類にわかれます。

一言に本水牛ボタンと言っても色は3色あります。

  • ベージュ:べっ甲調(樹液のような色をした亀の一種)の美しさを持つ
  • ブラウン:マーブル模様がキレイ
  • ブラック:真っ黒な背景に白い筋がサッと入ることがある

どの色もウール系のスーツとの相性が抜群。高級感があり、スーツ全体をキリッと引き締める効果が期待できます。価格は色合いによって異なるもの。透明感があるほど高価で、ブラックに近づくほど安価になります。価格は採取できる原料の希少性に関係しているのです。

ブラックなど濃い色は単色ですが、ベージュなど薄くなると違う色味が少しずつまざって模様となります。たとえばベージュの中に一部ブラウンの模様があったり、またブラウンの中でも色の明るさに差があったりするのです。

【ボタンの選び方6】ツヤ

ボタンにはツヤありとツヤなしがあります。ツヤは元々あるものではありません。さて、どのようにしてツヤを出すのでしょうか?

ボタンにツヤをつけるときは「ガシャ」と呼ばれる機械を使います。ガシャとは木で作られた多角形のドラムであり、そこにボタンと磨き剤を入れます。そして、数時間ドラムを回すと磨き剤によってボタンの表面が削られてツヤが出るのです。

入れる磨き剤によってツヤを出したり、ツヤを消したりできます。強いツヤを出したい時は竹チップを磨き剤に、反対にツヤを消したいときは綿を磨き剤にします。綿よりツヤを消したいときは磨き剤を水にするのです。

イタリアのボタンで見られるのが、さらにツヤを出したクリア加工。ガシャで出るツヤはやわらかいですが、クリア加工をすると明らかに光を反射するツヤに。さすがにガシャでは対応できないため、表面にツヤのコーティングを施します。鏡面仕上げとはいきませんが、光を反射して存在感のあるボタンとなります。

ツヤの有無によっても表情を変えるのが本水牛ボタンの特徴。耐久性があり長年使っても変色しませんが、使うほどに味わいを増すのはさすが天然素材。ツヤありは全体的にやわらかな光沢があり、ツヤなしはシックな落ち着きがあります。

【ボタンの選び方7】ナット

水牛や後述のシェルと並ぶ貴重な天然素材であるナット。ナットとはどのようなボタンなのでしょうか?

⚫︎ナットボタンの特徴

ナットはエクアドル産のタグワヤシの実で作られるボタン。ヤシの実と聞くと茶色い皮のついた実をイメージしますが、ボタンとして使うのは皮を剥いた状態の実。そのため、やや黄色がかったやさしい風合いの象牙色なのです。見た目の特徴から「アイボリーナット」、または「ベジタブルアイボリー」と呼ばれることもあります。

ナットが本水牛と大きく違うのは染色できること。ナットは地の色が薄いため、着色しやすいのです。また、ナットには着色しても浮かび上がる模様が特徴あります。年輪のような渦巻き模様のため、キリッと締まる本水牛に対してやさしさとぬくもりを持ったようなイメージがあるのです。

⚫︎ナットボタンの製造方法

まずはヤシの実を一定の厚さにスライスします。そして専用の刃物でくり抜いてブランクを作ります。ブランクを回転させて削りながら形を整えたら、表面を研磨して仕上げをするのです。そして、最後の工程が染色。本水牛ボタンと違いナットボタンは染色できるのでこの工程でさまざまな色を持つボタンへと生まれ変わるのです。

⚫︎ナットボタンの色合い

ナットは無着色の状態では象牙色。着色することでさまざまな色に変化します。

  • ホワイト:象牙のようにやや黄色みがかっており、パールホワイトのような光沢がある
  • ブラウン:珈琲や紅茶の飴のような色をしており、輪郭が際立つ。ボタン中央の凹みもわかりやすい
  • ブラック:全体的に暗くなり、輪郭も分かりづらくなる

色の濃さも見た目の雰囲気を変えます。薄めの色のボタンは模様が強く浮かび上がり、ナチュラルな雰囲気となります。反対に濃い色は艶やかな高級感を演出するのです。

元々はやわらかい色を持つナット。しかし、染め方やツヤの有無でさまざまな表情を持つのです。

また。ナットの色は経年によって変化します。浮き上がった年輪のような模様が色ムラとなり、使うほど味が出るのです。

⚫︎スーツにおけるナットボタンの注意点

水牛と同様、天然素材ですので水に弱い特徴があります。水に濡れたまま長い時間放置すると色落ちすることも。現在のボタンはコーディングにより色落ちの心配は少なくなったようですが、それでも気をつけるに越したことはないでしょう。

中には濃い色で染色したナットもあります。色落ちした染料が生地に移ることもありますので、やはり水に濡れたときはすぐに拭くか乾燥させるのがいいでしょう。また、水牛は熱に弱い特徴がありますが、ナットは天然素材の中では耐熱性があります。

【ボタンの選び方8】シェル

水牛やナットと並ぶ貴重な天然素材であるシェル。シェルとは貝殻のことです。ここではシェルの特徴やボタンに使われる貝の種類などを説明いたします。

⚫︎シェルボタンの特徴と色合い

アンボタンマナーでも触れたようにボタンには生地を留めるだけでなく、装飾の役割があります。装飾と聞くとイメージしやすいのがシェル。シェルが放つ光沢は独特なのです。儚くて繊細な輝きをもち、今しか見られないのではないか?と思うような自然の姿をそのまま切り取った印象です。

主に使われる貝は次の5種類。色合いは素材となる貝によって違います。

1つ目は高瀬貝。後述の黒蝶貝とならんで現在のシェルの主要材料となっています。高瀬貝は赤道付近に生息する巻貝。ボタンの形にくり抜かれた状態(ブランク)で輸入し、国内でボタンに仕上げます。

他のシェルは二枚貝ですが、高瀬貝は巻貝のためシェルの中では比較的強度があります。

色は全体的に白く模様はほとんどありません。後述の白蝶貝ほど白くはありませんが、やさしい自然の色をしているのが高瀬貝の特徴です。

2つ目は黒蝶貝。フィリピンやタヒチで取れる二枚貝であり、黒真珠を育てる貝です。ボタンの色はパールがかった光沢のある黒。ですので、ダークでシックなスーツとの相性が抜群です。反対に明るい色のスーツにアクセントとして付けることもできます。

黒蝶貝の色合いは複雑。黒をベースにして薄い緑や薄い黄緑、それに薄い紫が複雑に合わさっているのが特徴。色は連続的に変わっているので、境目がなかなかわからないもの。一言では表現しづらい色をもつ不思議なボタンに仕上がります。

3つ目は白蝶貝。シェルの中でも最高級なのが白蝶貝です。白蝶貝は真珠を育てる貝。そのため、真珠のような光沢を持っており「宝石をそのままボタンにしたようだ」とも言われます。古くから装飾品として使われてきた希少性の高い貝。同じ白基調である高瀬貝と比べるとかがやきに差があります。

高瀬貝はほんの少しだけ黄色がかったやさしい白色ですが、白蝶貝はストイックに白さを求めた純白。同じ白でもまったく風合いが違うのです。

4つ目は茶蝶貝。茶蝶貝も真珠を育てる貝。パールのようなやわらかい光を放つ、明るい茶色のボタンができます。おだやかな印象ですのでナチュラルテイストのスーツにぴったり。ボタンの茶色とシェル特有の筋のような模様がノスタルジックな雰囲気を演出します。茶色のベースに入る薄い緑や薄いピンクの筋になつかしさを感じるものです。

5つ目はあわび。食用としても人気のあわびですが、あわびの貝殻はボタンにも利用されているのです。産地によって雰囲気を変えるのがあわびのおもしろいところ。日本産のあわびはシャンパンゴールドやベージュといったあたたかめの色をしていますが、メキシコ産のあわびはグレーやブルーのスモークがかった色をしているのです。日本産あわびのボタンはさりげないオシャレに、メキシコ産のあわびはアクセントに使えます。

独特なヒビのような線が入るあわびの模様。線にかこまれたエリアがまるで独立した曲面のように立体的に浮かび上がるのは、何度見ても不思議な気持ちになります。平面のはずなのにそこに凹凸があるように見えるのです。

⚫︎シェルボタンの製造方法

貝を専用の刃物でくり抜いてブランクを作ります。そしてブランクを回転させて切削加工してから糸を通す穴を開けます。最後に表面を研磨したら完成です。

⚫︎スーツにおけるシェルボタンの注意点

シェルに共通して言える注意点が、力や熱に弱いこと。繊細で割れやすいため普段の取り扱いに気をつけるのはもちろんですが、熱にも弱いためクリーニングの高圧プレスにも注意が必要です。

傷んだり割れたりすることがあるのがシェルの怖いところ。クリーニングに出すときはお店の方に相談するか、可能であれば一時的に取り外す方が無難です。

また、取り扱い上の注意ではありませんが、割れやすいシェルは切削加工するときに特殊な技術を必要とします。

【ボタンの選び方9】革

鞄や財布に使われる天然の革。実はスーツのボタンにも使われます

⚫︎革ボタンの特徴

ボタンに使われるのは牛や馬や山羊の革。独特の風合いを持ち、他の天然素材には出せない味を出します。革ボタンは秋冬もののジャケットでよく使われます。

⚫︎革ボタンの製造方法

他の天然素材は硬いですが、革はやわらかいもの。どのようにしてボタンにするのか気になるところです。

手順は次の通り。まずは革をボタンサイズに合うように裁断します。そして、薄く剥いだ革を重ねます。そして、重ねて厚みをもった革を一つずつ型押し(プレス)して成形したら完成です。

薄く剥いで重ねて革ではなく、一枚の厚い革を使う場合もあります。ボタンの足は革製と金属製がありますが、耐久性が高いのは金属製です。使い込むほどに味が出るのも革の特徴。長く使えば使うほど、あなただけのボタンになります。

⚫︎革ボタンの色合い

革ボタンの色は大きくわけて次の3種類です。

  • ブラウン  :柔らかく明るさと暖かみのある色。バスケットボールのような色をしている
  • 濃いブラウン:チョコレートを彷彿とさせるような濃い茶色
  • ブラック  :漆黒というより濃いブラウンをさらに濃くした感じのブラック。全体的に暗めとなるため、革の輪郭(継ぎ目)も分かりづらい

⚫︎スーツにおける革ボタンの注意点

他の天然素材と同様に水に弱いのが革の特徴。クリーニングに出すときはドライクリーニングを選ぶようにしましょう。

【ボタンの選び方10】ポリエステル

最後に紹介するのは唯一の化学素材であるポリエステル。ポリエステルと聞くとチープなイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか?

⚫︎ポリエステルボタンの特徴

ポリエステルは石油を原料とした樹脂の一種。チープなイメージがあるかもしれませんが、現在では天然素材に勝るとも劣らない質感や品質を持っているのです。

加工がしやすく染色もできるため、天然素材に匹敵するような人気も。見た目の質感だけでなく耐久性や機能性も高いため、非常にバランスのいい素材なのです。

⚫︎ポリエステルボタンの製造方法

ポリエステルボタンの製造方法は大きくわけて2つ。

1つ目は遠心成形法(大口径法)。回転している直径1m以上の金属製ドラムに、複数の染色したポリエステルを順番に流し込んでいきます。ドラムが回転しているので、ポリエステルは板状にのびて層を形成。この状態のまま触媒の作用で硬化させるのです。

完全に硬化する前にドラムから取り出しパンチングマシーンで丸くくり抜きます(ブランク)。最後に熱処理することで完全に硬化して強度をもちます。硬化したらバイトで表面の形を整えて、糸を通す穴を開けるのです。

2つ目は棒管成形法。アルミパイプに複数のポリエステルを流し込みます。複数あるため、単一素材では表現できない、自然に近い色や柄を表現できるのです。固まったら輪切りにして熱します。あとの手順は遠心成形法と同じ。水牛調ボタンなど天然素材の代用品として作られるポリエステルボタンの品質は年々高くなっています。

ポリエステルの他にもボタンに使われる樹脂があります。たとえばアクリル。1950年代半ばにシェルの代用品としてポリエステルが使われるようになるまでは、シェルの代用品といえばアクリルだったようです。アクリルそのものは現在でも使われます。その他にも牛乳を原料とするカゼイン、堅牢性の高いユリア樹脂(尿素樹脂)などがボタンの材料として使われているのです。

⚫︎ポリエステルの色合い

自由に染色できるポリエステルですが、スーツに使われるときは天然素材の代用品として使われます。そのため、本水牛やシェル、それにナットと同じような色に染色されるのです。

また、ポリエステルには「焼き加工」と呼ばれるアクセントになる加工方法があります。焼き加工するとボタンの縁だけ色が変わり、風合いが一味違ってオシャレに見えます。ボタンのベースの色がベージュなら縁には濃いブラウンの焼き加工が、ベースの色が濃いブラウンやブラックなら縁にはベージュの焼き加工が入るのです。

⚫︎スーツにおけるポリエステルボタンの注意点

機能性や耐久性の高いポリエステル。天然素材のような取扱い上の注意点はほぼありません。しかし、天然素材の代用品として使われることが多いので、本物とのわずかな違いがあるのです。

たとえば本水牛ボタンには人間の爪にあるような筋が入っていますが、ポリエステルボタン(水牛調ボタン)にはそのような筋はありません。遠目からは本物と区別がつかなくても、わかる人が近くで見れば代用品だとわかってしまうので唯一の注意点です。

スーツの袖ボタンがなぜついているか知っていますか?

スーツの袖口に必ずついているボタン。このボタンは何のためについているのでしょうか?

ここでは袖口のボタンの起源と、現在のスーツにつけられている袖口のボタンの意味を説明いたします。

袖口のボタンの起源

袖口にボタンが付けられるようになったのは諸説あります。そのうち2つを紹介したいと思います。

1つ目の説のキーワードは「ナポレオン」。1812年、ナポレオンがフランス軍60万人を率いてロシアに攻め入ったときのお話。ロシアの低い気温に体が慣れていなかったフランス軍の兵士は、寒さでよく鼻水をだしていたとのことです。当時、軍服の袖にはボタンがなく、兵士は袖で鼻水を拭いていたのです。

しかし、鼻水がついた袖口は次第に汚れていきテカリが出る始末。これを嫌ったナポレオンが鼻水を拭かないようにするために、軍服の袖口にボタンを付けるようになったのです。

現在のスーツのボタンは縦についているので、鼻水を拭こうと思えばボタンのない生地の部分で拭けます(もちろんおすすめはしません)。しかし、当時のボタンは横に一周ついており、鼻水を拭きたくても拭けなかったという話もあります。

2つ目の説のキーワードは「外科医」。かつて外科医がスーツを着てオペしていた時代があったよう。オペするときは袖をまくりやすくするために、袖口が開くようにする必要があったのです。しかし、袖口を開きっぱなしにしておくとヒラヒラしてしまう。そこで袖口を留めるためにボタンが付けられたのです。

現在のスーツにつけられている袖口のボタンの意味

それでは現在のスーツの袖口にはなぜ、ボタンがついているのでしょうか?

現在のスーツの袖口は、開かない袖にボタンがついているだけの「開き見せ」(あきみせ)と、ボタンを外すと袖口が開く「本切羽」(ほんせっぱ)があります。

開き見せは袖口についたボタンの周りに、ボタンホールがあるかのような縫い目をつけますがあくまでもフェイク。装飾の目的で付けられるボタンなのです。

ボタンの付け方には並びボタンと重ねボタンの2種類があります。並びボタンとはボタンの外周部が接するようにつけられたボタン。重ねとは外周部が重なるようにつけられたボタンです。重ねボタンは手元に立体感を出せてオシャレですが、カジュアルな印象となるため冠婚葬祭では避けたほうが無難です。

本切羽はボタンを外すと実際に袖口を開けられます。両方1つずつボタンを外したり、左右で開け方を変えたりとオシャレを楽しめるアイテムです。しかし、現在のビジネスシーンでは必ず袖口を開けるシーンはありません。開き見せと同様にあくまでも目的は装飾です。

ただし、本切羽には1つだけ注意点があります。ボタンの位置が決まっている本切羽は、ボタンより下の部分しか袖丈を直せません。開き見せの場合はボタンとボタンホールに見せた縫い目を移動させればいいのですが、本切羽はそのようには出来ませんので注意が必要です。

ボタンに関する逸話を1つ紹介いたします。かつてスーツ発祥の地であるイギリスでは、ボタンの数によって出身地を表していたという話があります。たとえば3つはスコットランド、4つはイングランド、5つはウェールズのように。現在のスーツでは袖口のボタンにこのような意味はありません。

スーツのボタンが取れてしまった!スーツのボタンの付け方を紹介

スーツは長年使うもの。その中でボタンが取れてしまうことはどうしてもあります。ここではボタンが取れてしまったときの対処法を紹介いたします。

ボタンが取れたときに慌てないように、じっくり読んでみてください。

【恒久処置】ボタンを縫い付ける

1つ目はボタンを縫い付けることです。これは恒久的な処置となります。

用意するものは針と糸だけ。出先など緊急のときはコンビニで売っているものでもかまいません。ただし、可能であれば平たく巻かれた手縫い用の糸やボタン付け用の糸を探してみてください。

色は既存のボタン用の糸と同じ色か、生地に近い色を選びましょう。明るめの生地であれば生地よりやや明るめの糸を、暗めの生地であれば生地よりやや暗めの糸を選んでおけば目立ちません。

ボビンに巻かれたミシン用の糸ならある、という方もいらっしゃるかもしれませんがミシン用の糸はおすすめしません。ミシン用の糸は手縫い用の糸よりほつれやすい構造で、糸がほつれやすく縫いづらいのです。また、手縫い用の糸に比べて細いのも特徴。糸が切れてせっかく縫ったボタンがまた取れることもありますので、注意してください。

自分でボタンをつけられるようになっておくと便利です。
慣れればボタン1つをつけるのに5分もかからないでしょう。

⚫︎ボタンを縫う手順

  1. まずは針に糸を通します。ボタンは強度が必要ですので、通した糸を輪のようにして端を玉結びにします。
  2. ボタンが縫い付けられていた場所(生地)の表から裏に糸を通します。裏で少し生地をすくってからふたたび表に糸を通します。(ボタンの土台となる強度を確保するため)
  3. 他のボタンを見て糸の通し方を確認します。たとえば4つ穴のボタンの場合はバツ印を描くように通すのか、平行に2本通すのかボタンによって違います。
  4.  はじめはボタンの裏から糸を通します。そして、次は表から裏に向けて糸を通します。
  5.  ボタンの付け根付近の生地に糸を通したら、他の穴に対しても同様に糸を通します。このとき、ボタンが生地から5mm程度浮くようにします。(これがボタンの足になります)
  6.  すべての穴に糸を通し終わったらボタンと生地の間を通る糸の周りに、らせん状に糸を巻いていきます。これがボタンホール側の生地を収めるスペースになります。
  7.  ボタンの足が緩まないように、足の真ん中に糸を通します。
  8.  90度向きを変えて7.と同じことをします。
  9.  さらに45°向きを変えて7.と同じことをします。
  10. . 足の付け根を狙って生地の表から裏へ糸を通したらカットします。

以上でボタン付けは完了です。文章で読むとやや煩雑に感じるかもしれませんが、慣れてしまえば時間のかからない作業。いざというときに慌てないようにしっかりマスターしましょう。

少し話は逸れますが、あなたは普段スーツのお手入れをしていますか?

スーツは着用後には馬の毛のブラシを使ってブラッシングするもの。普段からお手入れをしておけば、ほつれたボタンの糸を早めに発見できるのです。

しかし、ボタンが取れていることに気づいたときには、既に縫っている時間がないこともあるでしょう。そのようなときの応急処置を4つ紹介いたします。

【応急処置①】安全ピンを使用してボタンを留める

1つ目は安全ピンを使う方法。安全ピンを使ってボタンをつけます(仮づけ)。ボタンに残っている糸の塊に安全ピンを刺し、そのままスーツの生地につけます。ボタンに糸が残っていないと対応できないこと、生地に穴が空いてしまうことが注意点。

また、あくまでも応急処置のため強度も低く、その場をやりすごす方法でしかありません。

【応急処置②】器具を使用してボタンを留める

2つ目はボタンを留める器具を使用する方法。針は糸を使わずにボタンを留められる便利な器具があります。

全長約5cmのアームの中央にヒンジがついており、折り返すクリップのような形をしているこの器具。一方のアームにツメ、もう一方のアームには受けがついていてボタンを挟み込むことで固定できます。

⚫︎使い方

  1. 生地の裏側からツメを貫通させます。
  2.  器具一つにつきツメは二つあるので、ツメにボタンの穴をあわせて付けます。
  3. 受けの着いたアームを折り返し、ツメと受けでボタンを挟み込みます。(パチンと音がします)

これでボタンが付きました。しかし、アームが邪魔でこのままではボタンが留まりません。どのようにすればいいのでしょうか?実はこのアームが取れるのです。

ボタンを持ちながらアームを左右に振ると、アームが取れます。

これでボタン付けが終わりました。針も糸も使わず簡単ですね。付属の説明書に沿ってやれば誰でもできる簡単な作業です。

ただし、負荷のかかる第一ボタンなどに使用する場合は強度が足りるか不安があります。あくまでも応急的な処置と考えましょう。また、販売しているのは一部の紳士服店やECサイトのみ。ボタンが外れてからの購入では間に合いませんので、事前に購入して鞄などに入れておくといいでしょう。

色は黒や水色などがありますが、ボタンの色を合わせないと目立ってしまいます。持っているスーツのボタンの色に合わせて色を選ぶようにしましょう。

【応急処置③】お直し店やクリーニング店に持ち込む

3つ目は洋服お直し店やクリーニング店に持ち込む方法。空いていれば30分程度で対応してくれることも。また、金額も1,000円もあれば足りるでしょう。

都市部ではこのようなお店が多いのですが、出張などで地方にいる場合はなかなかないことも。そのようなときはお近くのスーツ量販店に相談してみましょう。

この方法の最大のメリットはすぐに対応できる応急処置であるうえに、恒久的な処置であること。ボタンをつけてしまえばそれ以上の対策は必要ありません。

ただし、近くにお店がないときは自分で縫うのが早くて確実です。ボタンのつけ方をマスターして針と糸を持ち歩いておけば、心配することはありません。また、ときにはボタンごとなくなっていることも。スーツについてくる予備のボタンは必ず保管しておくようにしましょう。

【応急処置④】縫わずに付けられるシャツのボタンを使用する

ボタンはスーツだけではなく、シャツにも付いているもの。4つ目に紹介するのは縫わずに付けられるシャツのボタンを使用する方法。

通常ボタンに開いている糸を通す穴は二つ、あるいは四つ。しかし、このボタンはさらに真ん中にもう一つ穴が開いています。さらに箱の中には付属のピンが。このボタンはどのようにして付けるのでしょうか?

⚫︎手順

 1. 生地の裏側からピンを貫通させます。

 2. 生地の表側に突き出たピンに、ボタンの真ん中の穴を合わせて付けます。

 3. カチッと音がするまで押し込こみます。

これでボタン付けが終わりました。ピンがボタンから飛び出すこともなく安心して使えます。また、100円ショップなどで販売されているので比較的購入しやすいこともメリット。

しかし、ボタンを外す時はニッパーなど工具が必要なことや生地に針より大きな穴が開いてしまうというデメリットも。ボタンは専用となりますので、ラインナップ以外のボタンを付けることもできません。

取り付けたボタンをそのまま使用する場合は問題ないかもしれませんが、後で別のボタンを付けるまでの応急的な処置と考えるなら注意が必要です。

オーダースーツSADAであればボタンを自由にカスタマイズ!19,800円(税込21,780円)〜でフルオーダーを!

大正12年。関東大震災のあったこの年にSADAグループの原点となる服飾雑貨卸商が開業したのです。そして戦後焼け野原となった東京・神田での再建、卸業から縫製業への転換、海外への進出や自動設計システム・自動裁断システムの導入を経て現在にいたります。

2023年はオーダースーツSADAにとって創業100年の節目の年。ここでオーダースーツSADAについて、少し学んでみましょう。

オーダースーツってどんなもの?

初めにオーダースーツについて解説します。オーダースーツには、フルオーダー、イージーオーダー、パターンオーダーの3種があり、種類の違いによって体へのフィット感が変わります。

例えば、フルオーダーだと、体型に合わせた型紙を一から作ります。一方パターンオーダーは、スーツの型が決まっており、ボタンや袖の長さなどの簡易的な補正を行います。
イージーオーダーはフルオーダーとパターンオーダーの中間的な仕立てで、パターンオーダーよりも修正範囲が広くなります。

オーダースーツSADAは、体型を採寸し、型紙から作成するフルオーダーを、自動設計システムの導入で、効率化しました。

そのため、フルオーダーのフィット感でありながら、既製服と変わらない価格を実現しています。

では、オーダースーツSADAでスーツを作る場合、どのような手順になるのかシミュレーションしてみましょう。

まずはお近くの店舗を予約します。
予約なしでもご利用は可能ですが、予約することで待たずにオーダーが可能になります。

店舗では、はじめにスタイリストと相談しながら生地を選びます。
スタイリストは採寸も行うスーツのプロ。生地について気になることや、悩んでいることがあれば気軽に相談してみてください。

生地が決まったら、次は裏地やディテールなどオプションを決めます。

ボタンは無料オプションでも多くの樹脂のボタンが選べますが、あなたのスーツをより魅力的にするには、天然素材を使用した有料オプションがおすすめ。
白蝶貝、茶蝶貝、黒蝶貝などの貝(シェル)や、天然素材の中ではより高級な本水牛やナットボタンもラインナップしています。

この記事を読んで得たボタンの知識を使って、あなただけのボタン選びを楽しんでみてください。

次はいよいよ採寸です。
スタイリストが丁寧にあなたの体を採寸いたします。

採寸が終わったら入力された採寸データをもとに、あなただけのオリジナルパターンを起こします。そして、生地を自動で裁断し縫製ラインへと流すのです。
最後に検品と仕上げをすれば世界に一着しかないあなたのスーツが完成します。

あなたがお店に来てからスーツが完成するまで多々ある工程。この中でもオーダースーツSADAが大切にするのは採寸。なぜ採寸を大切にするのでしょうか?

スーツの仕上がりを決めるのがオリジナルパターン。そのパターンの良し悪しを決めるのが採寸した値(あなたの体の寸法)なのです。

オリジナルパターンを設計するのも、生地を裁断するのも自動。スタイリストの手が入る唯一の工程が採寸なのです。採寸で間違えてしまうと、その後大きな修正はできません。オーダースーツSADAの魅力はあなたの体にぴったりフィットするスーツを作ること。なおさら失敗はできません。

スタイリストはどのようにして採寸するのでしょうか?

肩幅、バスト、ウエスト、両腕の長さ、着丈の長さ、ウエストなど様々な部位を採寸し、部分的にゆとりを入れたり反対にタイトにしたり。あなたの要望をお聞きしながら、採寸した値をアレンジしていきます。

スタイリストの仕事はあなたの体を正確に測ることだけではありません。猫背、下がり肩、O脚などあなたの体のクセを理解し、あなたの要望を取り入れながらスーツのコンセプトを決めるのです。着用するシーン、着用する頻度、スーツ姿をどのように魅せたいか。あなたがもつ潜在的な部分まで感じとるのがスタイリストの仕事なのです。

スタイリストがあなたと接する時間の中で大切にするのが会話。スーツに対する要望や悩み事など直接的なことはもちろんですが、何気ない雑談の中に隠れているあなたの目指したい姿を読みとることもあります。

これだけ丁寧にあなたのスーツに寄り添うオーダースーツSADA。手間のかかる作業も多いはず。それにもかかわらず初回お試し価格19,800円(税込み21,780円、2023年9月時点)を実現できるのはなぜでしょうか?

価格の理由は徹底した合理化です。本来であればオリジナルパターンを作るのは熟練の技術をもつ職人。そして、生地の裁断や縫製、仕上げを行うのも職人なのです。そのため、フルオーダーのスーツはどうしても時間とコストがかかるものでした。

オーダースーツSADAでは、オリジナルパターンの設計はCADにより自動です。生地を裁断するのもCAMによって自動で行われるためコストを抑えられるのです。コストをかける部分(採寸)とそうでない部分(自動設計・自動裁断)を見極めているので、高い品質を確保しながらもリーズナブルな価格でオーダースーツを提供できるのです。生地の仕入れから販売まで一貫して行えるので、中間マージンが必要ないこともリーズナブルな価格の理由です。

それではなぜ、リーズナブルな価格にこだわるのでしょうか?それはオーダースーツの素晴らしさを多くの方に知ってほしいからなのです。

オーダースーツSADAの社内では次のような話を聞くことがあります。

「オーダースーツを着て営業をしたら、契約が取れやすくなった気がする」

「オーダースーツを着てはじめて出社した日、普段笑うことのない上司がわざわざ自分の席まで来て笑顔でスーツを褒めてくれた」

このようにオーダースーツにはあなたはもちろんのこと、周りの方を幸せにする不思議な力があるのかもしれません。スーツは本来、ビジネスで会う相手に感謝の気持ちと敬意を表すもの。あなたがビシッときめたスーツ姿で接することで、周りの方が少しだけ幸せになるのは当たり前のことなのかもしれません。

このような素晴らしいオーダースーツを、若い方をはじめとした既製品のスーツしか知らない方にも知ってほしい。そのために、リーズナブルな価格にこだわるのです。

オーダースーツSADAが目指すことは「オーダースーツの着心地と楽しさで日本のビジネスシーンを明るく元気にする」こと。このミッションを遂行するために、あなたの体にピッタリと合うオーダースーツを作るのです。

オーダースーツSADAで作ったジャストフィットするスーツを着用してはじめて会社へ行く日。あなたは朝からワクワクしているかもしれません。そのような日は自然にいつもより背筋が伸び、いつもより胸を張って歩いているのではないでしょうか。

スーツはサイズ感が命と書きました。しかし、せっかく宿った命を生かすも殺すもあなたの姿勢次第なのです。スーツをカッコよく見せるには、いいえ、スーツを着たあなたをカッコよく見せるには正しい姿勢でいることが大切です。スーツを着たときにカッコよく見えるのは「見えない糸で胸を引っ張られているように歩く姿」とも言われています。このような姿勢でいると、あなたの気分が良くなり仕事もはかどるかもしれません。

最後に毎日会社で戦うあなたを応援するお話を紹介いたします。

オーダースーツSADAの社訓の中には「執着心」という言葉があります。1万回実験に失敗しても白熱電球を発明したトーマス・エジソン氏や、3度事業に失敗しても4度目に自動車を世に送り出したヘンリー・フォード氏。そして、62歳でケンタッキーフライドチキンを創業するまで、幾度となく事業に失敗して生活保護を受けていたカーネル・サンダース氏。

いずれも執着心があったからこそ成し遂げられたことでしょう。

また、オーダースーツSADAの現社長も、幾度も訪れた会社の危機を救ってきた執着心の持ち主なのです。

毎日スーツを着用して戦っているあなたは、何らかの夢や目標をもっていることでしょう。あなたなりの執着心を持ち、周りの方を少しだけ幸せにするオーダースーツを着用して戦えば、今よりも夢や目標に近づけるかもしれません。スーツはそのようなあなたを支える戦友なのです。オーダースーツSADAはスーツ作りを通して、夢をかなえるあなたを応援しています。

この記事ではスーツのおけるボタンの留め方やマナー、そしてスーツに使われるボタンの種類を紹介いたしました。この記事を読んでボタンに詳しくなったあなたは、きっとお気に入りの一着に出会えるはずです。さあ、オーダースーツ作りの第一歩を踏み出しましょう。

大久保 一雄