礼服の種類や喪服との違いは?マナーや選び方、兼用する際の注意点を解説
「礼服」や「喪服」など、日本の冠婚葬祭では各行事にふさわしい服装が定められています。冠婚葬祭は日常的にある行事ではないため、人によっては直前になって「どんな服を着たらいいのか分からない」と悩む方も多いでしょう。そこで今回は、冠婚葬祭に出席する際の服装選びに困ることがないよう、礼服と喪服の違いや特徴について詳しく解説します。
また、礼服の選び方や着こなし方のマナー、具体的なお手入れ方法についても紹介するので、ぜひ参考にして、今後の冠婚葬祭に備えてください。
礼服とは?礼服の種類や違い
服とは、お葬式や結婚式、各種式典など、主に冠婚葬祭などの厳粛なシーンで着用する服の総称を指します。「フォーマルウェア」 と呼ばれる服の多くは、礼服と捉えて問題ないでしょう。
ただし一口に「礼服」といっても、礼服の種類は大きく分けて下記の3種類に分類できます。
- 【正礼服】モーニング・燕尾服
- 【準礼服】タキシード・ディレクターズスーツ
- 【略礼服】ダークスーツ・ブラックスーツ
まずはそれぞれの違いについて、詳しく説明します。
【正礼服】モーニング・燕尾服
最も格式の高い礼服を「正礼服」と呼びます。男性の正礼服は「モーニング」と「燕尾服」の2種類があり、主に結婚式や披露宴などで着用されます。主な違いは、下記の通りです。
【モーニングコート】
昼間の礼服のなかで、最も格式の高い礼服が「モーニングコート」です。フロックコートの前裾を切り落とし、後ろを斜めに長くカットしたデザインが特徴的です。
結婚式の場では、新郎新婦の父親や新郎が着用します。また、公的な式典や、葬式の喪主が着用することもあります。黒またはグレーのジャケットに、白のシャツを合わせるのが基本マナーです。
【燕尾服】
「燕尾服」は、夜間の礼服として最も格式の高い礼服です。ジャケットの裾が燕(ツバメ)の尾のように2つに割れているのが特徴的です。
燕尾服は、格式の高い結婚式や披露宴などで着用します。ドレスコードで「ホワイトタイ」と指定されている場合は、燕尾服を着用する必要があることを覚えておきましょう。
また、女性の正礼服も男性同様に2種類に分類でき、昼間は「アフタヌーンドレス」、夜間は「イブニングドレス」と、それぞれ呼び名が違います。
アフタヌーンドレスは衿元が詰まり露出が少ないデザイン、イブニングドレスは肩を出したデザインが特徴的なドレスで、昼間と夜間で見た目の雰囲気が大きく異なります。
【準礼服】タキシード・ディレクターズスーツ
正礼服の次に格式の高い礼服が「準礼服」です。男性の準礼服は主に「ディレクターズスーツ」と「タキシード」に分けられます。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
【ディレクターズスーツ】
「ディレクターズスーツ」は、昼間開催のパーティーなどで着用する礼服です。ジャケットは黒の無地、襟はピークドラペルのものを選ぶのが一般的です。ベストはジャケットと共布のものを合わせると良いでしょう。
【タキシード】
「タキシードは」夜間開催のパーティーなどで着用する礼服ですが、最近では昼間の正礼服として選ばれることもあるようです。ドレスコードで「ブラックタイ」と指定されている場合は、タキシードを着用する必要があるため注意しましょう。
女性の準礼服は、昼間は「セミアフタヌーンドレス」、夜間は「ディナードレス」の2種類に分類されます。正礼服と同様に、昼間と夜間で雰囲気が大きく変わるのが特徴的です。
【略礼服】ダークスーツ・ブラックスーツ
「略礼服」は、最も格式が低く、比較的カジュアルに着用できる礼服です。略礼服は別名「平服」と呼ばれることもありますが、「平服」と「普段着」は異なるので、誤解のないよう注意しましょう。
メンズの略礼服は「ダークスーツ」「ブラックスーツ」と呼ばれるのが一般的です。結婚式に招待客として出席する場合や、入社式や入学式に出席する場合など、多様なシーンで着用できるのが略礼服の特徴です。
レディースについては、カジュアル感のないフォーマル仕様のワンピースやアンサンブルに加えて、パンツスタイルも略礼服として通用します。
礼服を着こなそう!選び方のポイントは?
礼服は、ビジネススーツと異なり、冠婚葬祭など必要に迫られたときに着るものです。いざというときに困らない知識をご紹介いたします。
礼服と喪服の違いとは?
礼服と喪服を同じものだと認識している方も多いのではないでしょうか。しかし、実は礼服と喪服には明確な違いがあります。
ここでは、礼服と喪服の違いについて詳しく説明していきます。
礼服と喪服の違いの注意点
礼服と喪服は、衣服のカテゴリー的な面において大きな違いがあります。
礼服は冠婚葬祭全般で着用する衣服の総称ですが、喪服は冠婚葬祭のうち「葬」のみで着用する衣服です。つまり、喪服とは「数ある礼服のなかの一種」ということです。
より詳しく解説すると、冠婚葬祭には慶弔さまざまな行事が含まれており、礼服は下記に挙げるいずれの行事においても着用可能です。
- 「冠」…成人式、七五三、入学・卒業祝い、就職祝い、長寿祝い
- 「婚」… お見合い、婚約、結納、披露宴
- 「葬」…通夜、葬儀、火葬、告別式、四十九日、一周忌
- 「祭」…七夕、お盆、正月、節分、お歳暮
一方で、喪服は弔事でしか着用できず、葬儀や法事の際、喪主、遺族、参列者、弔問客が着用するものです。
和装の場合の違い
「和装の礼服」と「和装の喪服」の違いについて考えてみると、それぞれ着用シーンや着用がふさわしいとされる人の立場が大きく異なることが分かります。
和装の礼服には洋装と同様に「正礼装」「準礼装」「略礼装」という3つの格式が設けられており、それぞれをシーンに合わせて着分けるのが一般的です。
また冠婚葬祭で着用する和装の礼服は、男性であれば黒紋付や色紋付、女性であれば黒留袖や振袖など、多様な種類があります。
いずれも格式の違いや着用にあたっての細かなマナーはありますが、結婚式やパーティーの招待客が和装で出席することがあることからも分かるように、和装の礼服はものによっては幅広い立場の方が着用できます。
一方で、和装の喪服は弔事の服装のなかで最も格式が高いとされています。つまり、弔事のシーンにおいて和装の喪服の着用は、基本的に故人の家族や親族に限定されているのです。
昼夜の違い
上述したように、礼服のなかには昼と夜で着用シーンを分けるべきものがあります。
たとえば、礼服のなかで最も格式が高い正礼服の場合、昼はモーニングコート、夜は燕尾服がふさわしいとされているなど、昼夜で着用すべき礼服が異なります。
一方、喪服は一般的に昼夜で服装を変える必要がないとされています。洋装・和装いずれにおいても、昼夜の着用に関する厳格なルールが設けられていない点は、喪服ならではの特徴といえます。
ビジネススーツとの違い
礼服のなかにはさまざまな種類のスーツが含まれますが、そのなかで喪服としても着用できるスーツに「ブラックスーツ」が挙げられます。
一見するとブラックスーツとビジネススーツはあまり違いがないように思えますが、両者は色合いやデザインの面において顕著な違いがあります。
例えば、ブラックスーツは真っ黒で光沢がない黒色をしていますが、ビジネススーツはグレーがかった少し薄い色合いの黒色が特徴的です。
また、ブラックスーツにはジャケットの後ろの切り込み部分である「ベント」がありませんが、ビジネススーツには必ずベントが入っています。
礼服と喪服の違いと合わせて、上記のようなブラックスーツとビジネススーツの違いについても正しく理解しておくことが大切です。
礼服とビジネススーツの5つの違い!特徴と選び方は?
礼服とビジネススーツの違いを知りたい方に向けて、本記事では礼服の特徴から、ビジネススーツとの違い、選ぶ際のポイントまで詳しく解説します!
喪服とは?喪服の種類や違い
上述したように、喪服とは弔事のシーンのみで着用する礼服です。
喪服は礼服と同じように、下記3つの格式に区別されており、場面や立場に応じて適切な服装が異なります。一方で、喪服とは葬儀や法事の際、喪主、遺族、参列者、弔問客が着用するものです。つまり、喪服とは数ある礼服の中の一種ということになります。
- 正喪服
- 準喪服
- 略喪服
【正喪服】
「正喪服」は、葬儀や告別式を主催する側の喪主や三親等以内の親族が着用する、最も格式の高い喪服です。正喪服は洋装よりも和装の方が格上と考えられており、男性の正喪服で最も格式が高いのは「五つ紋の黒紋付」です。
洋装の場合、男性は黒色の「モーニングコート」を着用します。パンツは黒とグレーの縞模様、ワイシャツは白色のものを選びましょう。ベルトや靴下などの小物類も、全て黒で統一する必要があります。
女性の場合は、ワンピースやアンサンブル、スーツなどのブラックフォーマルを着用するのが一般的です。男性と同様、身につけるものは黒で統一し、ストッキングも黒色のものを着用するようにしましょう。
【準喪服】
「準喪服」は、お通夜や法事など、あらゆる弔事で通用する正喪服に次ぐ格式の喪服です。
従来、準喪服は「三親等以降の遺族や参列者のみが着用する喪服」と定義づけられていましたが、時代とともに厳格なルールは緩和化されつつあり、近年では喪主や親族が準喪服を着るケースも増えています。
男性が準喪服を着用する場合は「ブラックスーツ」を選ぶのが一般的です。
記事の冒頭では「ブラックスーツは礼服のなかで最も格式の低い略礼服にあたる」と説明しましたが、喪服の場合に限っては、ブラックスーツは上から2番目の格式である準喪服に該当します。
上述した通り、準喪服で着るブラックスーツは一般的な黒のビジネススーツとは仕様や素材が異なるため、告別式の場などでビジネススーツを着用しないよう気をつけましょう。
女性の準喪服は正喪服との違いがほとんどなく、ブラックフォーマルを装えば特に問題はありません。
【略喪服】
「略喪服」は、急なお通夜に駆けつけた場合や、三回忌以降の法事で着用する喪服です。
メンズは黒、紺、グレーなど、暗い色合いの「ダークスーツ」を着用します。ダークスーツの場合も、光沢のある色合いは避ける必要があるので注意しましょう。ネクタイや靴、靴下などの小物類は黒色で統一し、ワイシャツは白色のものを合わせれば問題ありません。
女性の場合は、黒、紺、グレーなどの地味な色味のスーツ・ワンピースを着用します。パンプスも同様に黒がベストですが、紺、グレーでもマナー違反にはなりません。略喪服であっても、ストッキングは必ず黒のものを着用してください。
喪服とスーツの違いとは?シーンごとの着用方法や喪服がない時の対処法を紹介
この記事は、喪服とスーツの違いや、シーンごとの礼服の選び方、急な葬儀で喪服が用意できない時の対処法まで、分かりやすく解説しています。
礼服と喪服の兼用は可能?
時間や費用面などのコストを考えて、「全ての冠婚葬祭で使い回せる礼服が欲しい」と考える方もいるのではないでしょうか。
そこでこちらでは、慶事と弔事で兼用できる礼服はあるのか、同じスーツを着回す際に気をつけるべきポイントはあるのかなどについて、詳しく解説します。
礼服は結婚式と葬式で兼用可能?
結婚式と葬式で兼用可能な礼服の有無については、「ダークスーツであれば兼用可能なものがある」というのが答えです。
男性の場合、黒い色合いのダークスーツであれば、慶事と弔事の双方で兼用できる可能性があります。
結婚式や葬式などの各種冠婚葬祭に出席する場合、ネクタイなどの小物やスーツの素材選びを間違えなければ、いずれの行事でも違和感なくダークスーツを着用できるでしょう。
ただし、弔事にダークスーツを選ぶ際は、着用シーンに気をつけましょう。上述したように、急な通夜などに参列する場合はダークスーツでも問題ありませんが、葬儀や告別式にダークスーツを着ていくと、マナー違反と捉えられることがあります。
[女性]喪服で結婚式はNG?
女性の喪服は弔事用にデザインされているため、結婚式に喪服を着用するのは基本的にはマナー違反にあたります。
ただし喪服用ではなく、幅広い行事で使用できる華やかなブラックフォーマルの礼服であれば、慶事と弔事のいずれにおいても着用できる可能性があります。
その場合、アクセサリーやショールなどの小物類を工夫して、各行事にふさわしい装いになるよう調整することが大切です。
[男性]ネクタイとポケットチーフに注意
慶事と弔事の双方でダークスーツの着用を検討している場合、ネクタイやポケットチーフなど、小物類の色の選び方に注意する必要があります。
具体的には、下記を参考にしてください。
【結婚式などの慶事に合わせる小物類の色】
- ネクタイ…白またはシルバーグレー
- チーフ…祝いの席にふさわしい華やかな色合いのもの
【通夜などの弔事に合わせる小物類の色】
- ネクタイ…黒一択
- チーフ…使用しない
また、慶事にダークスーツを着用する場合は、ジャケットの下にシルバーのベストなどを合わせると、より華やかな雰囲気を演出できます。
フォーマルスーツは葬式で着用できるのか?礼服と喪服の関係も含め詳しく解説します
フォーマルスーツは冠婚葬祭で幅広く着用されていますが、葬式で着るのが適切なのか改めて疑問に思う人がいるかもしれません。今回は葬式でフォーマルスーツを着用することがマナー違反にならないのかを、詳しく解説します。
[メンズ]フォーマルとしてのブラックスーツの選び方
次は、フォーマルな場で着用するブラックスーツの選び方について詳しく見ていきましょう。ブラックスーツの特徴や相場感についても触れているので、ぜひ参考にしてください。
ブラックスーツの特徴
ビジネス用の黒スーツと、礼服のブラックスーツは、使用している材質や衣類としての定義が異なります。
ビジネス用の黒スーツには、ポリエステルなどの光沢がある素材が混紡されているため、光を反射する特性があります。一方、礼服のブラックスーツは光を一切反射しない素材で作られているため、昼夜問わず重厚感のある雰囲気をまといます。
そのため、他の方々が喪服を着ているなか、一人だけ黒のビジネススーツを着用してしまうと、生地の素材などの違いからどうしても浮いた印象になってしまうでしょう。
そもそも礼服のブラックスーツは喪に服す場にふさわしい仕様で作られているため、動きやすさや見た目の良さを重視して作られたビジネススーツとは、持って非なるものなのです。
ブラックスーツの選び方
礼服のブラックスーツを選ぶ際は、注意した方が良いポイントがいくつかあります。具体的には、下記を参考にしてください。
- スーツの色味…漆黒のものを選ぶ
- パンツの裾口…シングルにする
上でも軽く触れたように、明るい色合いの黒は葬儀の場で悪目立ちしてしまう可能性があるため、礼服用のブラックスーツでは必ず漆黒のものを選びましょう。
また、裾口のデザインは足元の印象を大きく左右するので、厳粛な場ではシングルにするのが基本です。
ブラックスーツを選ぶ際は、こうした基本マナーを最低限守ることが何よりも重要です。
ブラックスーツの相場
ブラックスーツの価格帯はさまざまであり、具体的な相場感を提示するのが難しい傾向にあります。
2〜3万円代という手ごろなものから、8万円以上するものまで、ブラックスーツの価格帯は非常に幅が広いです。
礼服のブラックスーツは高額になるほど黒の色合いが濃く、重厚感が増すという特徴があります。室内ではあまりわかりませんが、太陽光が当たる屋外に出ると、黒の色味の濃さは一目瞭然です。
人によってはその色合いからスーツの良し悪しを判断できてしまうため、ある程度社会人経験を積んだ大人の男性であれば、あまりに安価なブラックスーツを購入するのは避けた方が無難でしょう。
ブラックスーツの素材
礼服のブラックスーツは上質なウールを素材として使用していることが多いため、夏場の冠婚葬祭では上着を着ていられないほどの暑さを感じてしまうことがあります。
そのため、なかには夏用・冬用のブラックスーツをそれぞれ用意している方なども見受けられます。ただし、季節に応じた礼服を購入すると、それなりの費用がかかってしまうのが難点です。
最近ではオールシーズン対応可能な特殊素材を用いたブラックスーツなども販売されているため、「まだブラックスーツを1着も持っていない」という方は、そのような材質のスーツを選ぶのもおすすめです。
スーツと喪服の違いや特徴を解説!葬儀にはブラックスーツで行くべき
この記事では、スーツと喪服の違いやそれぞれの特徴、葬儀にはブラックスーツで行くべき理由などを紹介します。礼服と喪服の違いや、喪服の着こなし方法なども解説しています。スーツと喪服の違いがわからない人は、本記事をチェックしてみてください。
[結婚式]礼服(ブラックフォーマル)の着こなし方とマナー
次は、結婚式などの慶事の場で礼服(ブラックフォーマル)を着用する場合の、着こなしのポイントやマナーについて詳しく解説します。
親族・ゲストなど立場の違いも意識
結婚式の場で礼服(ブラックフォーマル)を着る場合は、自身がどの立ち位置で参加するかによってふさわしい服装が大きく異なります。具体的には、下記の通りです。
- 新郎新婦の両親…正礼装
- 兄弟、親族(叔父叔母・従妹など)、主賓…準礼装
- 招待客…ダークスーツ
一般的には、自身の立場に応じた服装を選べば問題ありません。ただし、式場の格式が非常に高い場合は、招待客であってもよりフォーマルな服装を選んだ方が良いこともあります。
逆に、二次会から参加する場合はカジュアルな装いでも問題ないことがあるため、いずれの場合もTPOに合わせた服装を意識しましょう。
持ち物の違いや注意点
華やかな場での礼服(ブラックフォーマル)は、細かな持ち物について気を配ることも大切です。スーツやドレスに合わせて全身を黒で統一してしまうと、弔事の場との違いがわからなくなってしまうため注意しましょう。
男性の場合は華やかなネクタイやチーフを身につける、女性の場合はコサージュやジュエリーを工夫するなどして、お祝いの場にふさわしい装いになるよう、十分注意することが大切です。
コーディネートのアクセントになる小物類をプラスするだけで、全体の雰囲気が一気に華やかな印象になるでしょう。
[葬儀]礼服(ブラックフォーマル)の着こなし方とマナー
次は、葬儀などの弔事の場で礼服(ブラックフォーマル)を着用する場合の、着こなしのポイントやマナーについて詳しく解説します。
喪主・遺族など立場の違いで異なる
葬儀の場で礼服(ブラックフォーマル)を着用する場合、喪主や遺族、弔問客など、どの立場で参列するかによって適切な服装は異なります。
これまでにも解説してきましたが、それぞれの立場ごとにふさわしい礼服について、あらためて下記にまとめました。
- 喪主…正喪服(モーニングスーツや和装)
- 三親等以内の親族や参列者…準喪服(ブラックスーツ)
正喪服は主に、葬儀を主催する側の喪主が着用します。また、故人に近しい親族が準喪服を着用する場合、参列者よりも一段格上の喪服を着用するのが望ましいとされています。
ただし、近年では「一日葬」「家族葬」など、簡略化されたスタイルの葬儀も増えており、そのような場では喪主や親族も参列者と同様に、一般的なブラックスーツを着用する場合が多いようです。
通夜、葬式、四十九日や一周忌で異なる
礼服(ブラックフォーマル)のマナーは、通夜、葬式、四十九日や一周忌などの法事(法要)によっても異なります。具体的には、下記を参考にしてください。
【通夜・葬式】
- 喪主…正喪服
- 参列者…準喪服
【四十九日】
- 喪主…正喪服または準喪服
- 参列者…準喪服
【一周忌】
- 喪主…準喪服
- 参列者…準喪服
上記を見て分かる通り、通夜から一周忌にかけては、主催者側も参列者側も服装に大きな変化はありません。しかし、一周忌以降に行われる三回忌や七回忌では、参列者はダークスーツなどの略喪服を着ても良いとされています。
持ち物の違いや注意点
弔事で礼服(ブラックフォーマル)を着用する場合は、細かな持ち物にも注意しましょう。
基本的には持ち物は黒で統一すれば問題ありませんが、男性の場合はシャツは白色のものを選ぶなど、最低限のマナーに気をつけましょう。女性の場合、華美なアクセサリーは厳禁です。
また、数珠や帛紗など、葬儀ならではの持ち物も忘れないよう気をつけてください。
参列する際のマナー
葬式に参列する時は、遺族の方に失礼がないよう、マナーに準じた服装で参列することが非常に重要です。「葬式」とは通夜、葬儀、告別式の総称ですが、実は「通夜」、「葬儀・告別式」では、それぞれ異なったマナーが存在します。
詳細については、下記を参考にしてください。
【通夜】
- 男性…ブラックスーツまたはダークスーツを着用。ネクタイや靴下も黒が望ましい。
- 女性…黒や紺、グレーなどの地味な色味のワンピースやスーツを着用。ストッキングは必ず黒のものを選ぶ。
【葬儀・告別式】
- 男性…セットアップのブラックスーツを着用。ネクタイや靴下は無地の黒で統一し、革製品は身に着けない。アクセサリーは結婚指輪のみ着用可。
- 女性…黒のワンピースやアンサンブル、スーツを着用。夏場でも5分袖まである服装が望ましい。
ネクタイはどうすればいいの?葬儀におけるマナーと一緒に学んで頼られる存在に!
葬儀のマナーは色々あって難しそう。でも社会人として一つの経験になりますね。そんなとき焦らずに対応できればスマートです。ネクタイだけでなく他のマナーも一緒に学びましょう!
礼服で着用するシャツや小物の選び方とポイント
次は、慶事と弔事いずれにも共通する、男性の礼服に合わせるシャツや小物類の選び方やポイントについて紹介します。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
シャツの選び方と着こなし
礼服に合わせるシャツは、下記のポイントを押さえたものを選びましょう。
- 色…ホワイト
- 素材…ブロード
- 襟の形…レギュラーまたはワイド
この他、ビジネスシーンでよく見かけるボタンダウンシャツはカジュアルな印象が強いため、冠婚葬祭での着用は避けましょう。また、リネンや折り柄が入ったような特殊なものも避けた方が無難です。
シワや汚れがついているもの冠婚葬祭の場では失礼にあたるため、清潔感があるシャツを着用してください。
靴・靴下の選び方
礼服に合わせる靴は、黒の革靴で、内羽根式のストレートチップのものを選ぶのがおすすめです。光沢のあるエナメル素材のもの、派手な金具がついているものなどは、冠婚葬祭の場にはふさわしくありません。
また、靴下については慶事か弔事かで選ぶべき色合いの違いはありますが、いずれの行事においても、必ず清潔感のあるものを用意しましょう。
繰り返し履いて毛羽立っているものや、指先に穴が空いているものなどを着用した場合、相手にとって失礼にあたるだけでなく、自分自身が恥ずかしい思いをすることになるでしょう。
鞄・ベルトの選び方
慶事の場でもブラックフォーマルの礼服を着用する場合、合わせる鞄は葬儀の際にも使用できる、シンプルで光沢のない黒い鞄を選びましょう。
たとえビジネスシーンで利用していたとしても、リュックタイプや色柄が入っているデザインの鞄はカジュアル過ぎるため、冠婚葬祭での使用は避けた方が無難です。
また、ヘビ革やワニ革などの動物の皮を使用している鞄は、殺生を連想させるため冠婚葬祭の場では厳禁です。ただし、ベルトと靴に関しては、無地のものであれば革を使用していてもマナー違反には当たりません。
ブラックフォーマルに合わせるベルトは、光沢のない黒色のものを選ぶと良いでしょう。ビジネスシーンとは別に、礼服用に一本持っておくと便利です。
礼服を着たときはどのようなネクタイを締めるの?礼服×ネクタイのポイントをご紹介
この記事では礼服用のネクタイを紹介しています。礼服着用時にどのようなネクタイをすれば良いか悩んでいる人は、ぜひ最後まで読んでみてください。
礼服のお手入れ・保管方法
次は、礼服の正しいお手入れ方法や保管方法について解説します。正しいお手入れ方法について知識を深め、礼服を長く大切に着られるようにしましょう。
1度着たらクリーニングへ
礼服は、1度着用したら都度クリーニングに出すのがベストです。
着用頻度が少なく、一度に数時間程度しか着ない礼服ですが、実は予想外に汚れているものなのです。汗や皮脂汚れ、知らずにつけた食べこぼしや飲みこぼしなど、1度袖を通した礼服には、目に見えないさまざまな汚れが付着しています。
クリーニングに出さずにそのまま保管すると、場合によっては汚れによりカビが発生してしまうかもしれません。そのような事態を防ぐためにも、礼服は1度着用したら、その度にクリーニングに出して、きれいに汚れを落とすようにしましょう。
礼服の保管方法の注意点
クリーニングから戻ってきた礼服を保管する際は、ビニールカバーは必ず外すようにしましょう。クリーニング後の衣類に付いているビニールカバーは湿気を含んでいることがあり、そのままの状態で保管するとカビやシミの原因になります。
また、一度汚れを落とした礼服は、保管前に陰干しして、しっかり湿気を飛ばしましょう。その後たんすやクローゼットに収納する際は、除湿剤や防虫剤を礼服の側に置いておくと安心です。
正しい保管方法を知っておくことで、一度購入した礼服を劣化させずに大切に着続けることができるはずです。
スーツをクリーニングに出す際の注意点とは?頻度や出し方を徹底紹介!
スーツをクリーニングに出す適切な頻度はどのくらいなのでしょうか。また、出し方で気を付けるポイントはあるのか気になるという方も多いはずです。この記事では、クリーニングに出す際の注意点やスーツや革靴のお手入れ方法を紹介します。
まとめ:オーダースーツで礼服を
今回ご紹介したように、礼服は冠婚葬祭全般で着用する衣服の総称であり、喪服は弔事のみで着用する衣服です。一口に礼服といっても、ブラックフォーマルの礼服は着用シーンや着る人の立場によってさまざまな格式やルールがあり、マナーに沿った着こなしをすることが重要です。
慶事の場でも弔事の場でも着用できるブラックフォーマルの礼服を1着持っておけば、冠婚葬祭の行事に急遽駆けつけることになった場合も、慌てることなく準備できるでしょう。
礼服の購入にあたって「品質も形も納得のいく1着が欲しい」という方は、ぜひオーダースーツSADAにご相談ください。オーダースーツSADAでは、機能性の高い生地を複数取り揃えているほか、知識と経験のあるプロが、お客様の体型や年齢、雰囲気に見合った最適な喪服をご提案することが可能です。自信を持って着られる納得のいく1着をご用意させていただきますので、礼服選びに悩まれている方は、いつでもお気軽にお問い合わせください。