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【スーツ 生地一覧】オーダースーツの生地は用途・マナー・トレンドで選ぶ!おすすめブランド生地一覧

「オーダースーツを作ってみたいけど、生地の選び方がわからない…」「スーツの素材って色々あるけど何が違うの?」とお悩みではないでしょうか。スーツをオーダーする際、スーツのデザインを左右するもっとも重要な工程は「生地選び」です。生地は色柄による印象はもちろん、全体のシルエットや着心地、耐久性などスーツのあらゆる要素を決定する部分です。TPOに合ったスーツをオーダーするには、生地ごとの違いを押さえておくことが必要不可欠。どんな生地を使っているかで、どんなシーンで着用できるスーツかが変わってきます。動物・植物から取れる原料を使った「天然繊維」を使っているのか、科学的に合成される素材を使った「合成繊維」を使っているのかによって、機能性や質感も大きく変わりますよ。では生地はどんなポイントを押さえて選べばいいのでしょうか。生地を選ぶときのポイントは「光沢」「ハリ」「しなやかさ」「重量」「色柄」「強度」の6つです。これらのポイントを決定するのは、やはり素材や繊維の細さ、織り方などの要素。もうオーダースーツの生地選びで迷わないよう、今回は「オーダースーツSADA」のスタッフが生地選びのポイントを解説します。

生地にはどんな素材があるのか

オーダースーツの生地は、着用場面で失礼にならない色柄の範囲から選ぶことがポイントです。ドレスコードや格式に合わせて色柄を絞った後に、シルエット、着心地、耐久性、トレンドなどで生地を決めるのがおすすめです。フォーマルシーンやビジネスシーンなど、改まった場面で着用するスーツは、お洒落よりもマナーを優先することが必要になります。ドレスコードの本来の目的は、互いを尊重することによるスムーズなコミュニケーションです。着こなしの効果を最大限に活用するために、この記事では、生地の色柄の違いや特徴、実際のオーダーでの生地選びのコツをご紹介します。

スーツ生地の素材の種類

スーツの素材には「天然繊維」と「化学繊維」があります。天然繊維は主に植物や動物から取れる繊維です。化学繊維は石油などから科学的に合成された繊維です。繊維は細いものほど価値が高くなる傾向があります。上質で細い繊維を使用した糸であれば、なめらかな質感の生地を織ることが可能になります。衣服に使用される繊維は、特に肌触りが重要であるため、天然繊維は細い繊維を持つ品種がさらに改良されたり、合成繊維の場合は、より細い繊維を作り出すための開発が続けられています。

素材①:天然繊維

スーツに使用される天然繊維は、植物繊維と動物繊維に分かれます。

■植物繊維

植物の種子や茎、葉などの部位から取れる繊維が植物繊維です。植物のどの部分の繊維かで分類されています。スーツ生地に使用される代表的な植物繊維は綿と麻です。シワになりやすくカジュアル感のある素材です。

●綿(コットン)

綿は植物である綿花の繊維であるため、種子繊維に分類されます。綿花は、種子のまわりをワタ状の繊維が包んでいます。一般的な綿は、このワタから作られる素材です。綿花からワタ状繊維を採取した後には、種子の表面を覆う細かな繊維が残ります。わずか数ミリの種子を包む層は、コットンリンターと呼ばれ、通常の綿とは別に加工されます。コットンリンターは豊富にセルロースを含むため、再生繊維の原料になり、製造された繊維はスーツの裏地に使用されます。天然繊維の綿はスーツの表生地に利用され、柔らかで優しい肌触りが特徴です。綿はシワになりやすいため、独特のシワ感を楽しみながら着用します。綿を素材としたスーツは、リラックスしたシワ感やカジュアルな風合いを楽しむことが目的となるため、カジュアルスーツの分類になります。正式な場面では着用を避けます。ビジネスでは、オフィスカジュアルでの着こなしに該当し、クルーネックシャツが許されるようなカジュアル寄りの服装規定での使用に向いています。

超長綿

綿の中でも超長綿は、通常よりも繊維が長い高級素材です。繊維が細く、柔らかで美しい質感の生地になるため、スーツスタイルではシャツ生地に使用されます。綿とは思えない滑らかな肌触りを備えており、オーダーシャツにも人気の素材です。

麻(リネン)

植物である麻の茎から取れる繊維を原料としています。靭皮繊維に分類されます。麻は綿よりも歴史が長く種類が豊富です。ヘンプ(大麻)やジュート(黄麻)のような強度があり丈夫なものから、リネン(亜麻)やラミー(苧麻)のような高級感のある素材まで多彩です。スーツ生地やシャツ生地として使用されるリネンは、サラッとして柔らかな手触りが特徴です。通気性が良くハリがあるため、春夏の素材として使用されます。スーツやジャケットでは、肘など曲げる部分がシワになりやすく、カジュアル寄りの着こなしに向いています。
リネンは、ヨーロッパでは格式高い雰囲気を持つ素材でもあります。正礼装のポケットチーフは本来シルクよりもリネンが正式とされています。純白でハリのあるリネンのポケットチーフは、ポケットに挿した後に形が乱れにくいためビジネスにも使用できます。アナウンサーの定番であるTVフォールドでネイビーのスーツに合わせると、格式高く爽やかな印象になります。

アイリッシュリネン

リネンの中でスーツ生地として人気なのは、アイルランド産のアイリッシュリネンです。繊維が細く肌触りや質感が良いため、春夏シーズンの涼やかなスーツに使用されます。

動物繊維

動物繊維は、蚕から取れるシルクと動物から取れる獣毛に分かれます。高級感があり滑らかで柔らかな素材が多く、特に格式高いフォーマルシーンでは動物繊維の生地を使用することがマナーになります。植物繊維の生地はカジュアルな雰囲気ですが、動物繊維の生地には高級感があり、重厚な雰囲気を持つためです。また、機能性や快適さに優れているため、一般的なビジネスや冠婚葬祭にも広く使用されています。

シルク

蚕が作る繭を原料とする艶やかなシルクは、古代から貴重な素材として利用されてきました。スーツではウールと混紡される事が多い素材です。ウールの手触りにシルクの滑らかさがプラスされ、冠婚葬祭など特別なシーンにふさわしい質感になります。シルクが混紡された生地は静電気を防止する効果も期待できます。

獣毛繊維

シルク以外の動物繊維は動物の毛である獣毛繊維です。羊、山羊、ウサギ、ラクダなどの毛が持つ独特の肌触りや機能は生地に反映されます。

ウール(羊)

最も代表的なスーツの素材はウールです。さまざまな合成繊維が開発されている現代も、ウールの持つ機能性や特徴、高級感を超える繊維はありません。ウールは羊の毛であるため、厳しい環境から体を守る役割を持ちます。特に、雨や汚れから守る撥水性と外気温の温度差から守る断熱効果に優れた繊維です。汗を吸い取る吸湿性はポリエステルの約40倍ともいわれており、衣服内が快適に保たれます。ウールは冬の素材のイメージが強くありますが、年間を通して快適に過ごせる素材です。実際、夏のウール100%スーツはサラッとして非常に快適です。ウールで作られた生地は、繊維にクリンプと呼ばれる縮れがあるため、ストレッチ性が高くなります。繊維の持つ回復力はかなり高く、力をかけて引き延ばしても時間が経過したり、水分を加えたりすると回復します。ビジネスでの着用シーンで、膝が伸びたり肘にシワがついても、自宅でハンガーに掛けて一晩置くと、ある程度自然に回復します。また、撥水性がある繊維のため、一時的な汚れは繊維に染み込まず表面に留まります。帰宅後のブラッシングでホコリや汚れを払い落すことが可能になり、常に清潔な状態を保てます。

●特殊獣毛

ウール以外の獣毛は特殊獣毛として分類されます。

モヘア(アンゴラ山羊)

モヘアはアンゴラ山羊の毛です。アンゴラ山羊は、環境の厳しい高地に生息する山羊でしたが、豊かな毛を持っていたことからトルコで家畜化されました。現在はトルコだけでなく、アメリカや南アフリカも主要な産出国です。上品で美しい光沢が特徴の生地になります。ウールよりクリンプが控えめで、その分繊維に含まれる空気が減り、通気性が上がるため清涼感のある夏生地として人気の素材です。基本的にスーツにモヘアを使用する際には、ウールモヘアの混紡生地が定番です。スーツの夏用生地は基本的に艶がない平織が多いため、華やかな艶感があるモヘアは贅沢な装いの定番です。夏の結婚式やパーティーシーンに最適の生地といえます。

キッドモヘア(アンゴラ山羊)

アンゴラ山羊の毛は成長と共に太くなるため、生後一年未満の子山羊から取れたモヘアは、キッドモヘアとして分類されています。子山羊特有の繊細で柔らかな質感は、モヘアの中でも最上級でカシミヤに近い質感となります。

カシミヤ(カシミヤ山羊)

カシミヤはカシミヤ山羊の毛です。カシミヤ山羊は中国やアフガニスタンなどの山岳地帯に生息します。厳しい環境から身を守るため、通常の毛の間に、秋口から春先にかけて冬毛が生えます。5月頃に気温が上がると冬毛が抜け落ちるため、梳き櫛で冬毛を採取します。この冬毛がカシミヤで、繊維の宝石と呼ばれる美しい光沢を持ち、なめらかで軽く保温性が高い素材です。衣服内の湿度を保つ効果も持ち、しっとりとした高級感のある生地になります。カシミヤは保温性と保湿性が高い冬の素材です。なめらかな手触りをプラスするためにウール生地に少量混紡されることも多く、その割合は数%でも効果を発揮します。

ベビーカシミヤ(カシミヤ山羊)

ベビーカシミヤは、生後1年未満の子山羊から取れる素材です。子山羊の体を守るための毛は、成獣のカシミヤよりも軽く滑らかな風合いになるため、ベビーカシミヤとして区分されます。一頭から一度だけ、数十グラムしか採取できない最上級のカシミアです。

キャメル(ラクダ)

キャメルは、ふたこぶラクダから取れる繊維です。ふたこぶラクダは北アフリカ、中央アジアなど寒暖差が激しい地域に生息しています。夏は40度以上、冬はマイナス30度になる地域でも、身を守れる毛を備えています。吸放湿性や保温性が高い素材です。染色に向かない繊維のため、これまでキャメルは原毛そのままの色合いが生地になっていました。しかし、近年は染色技術の発展で染色も可能になっています。主にコートに使用される素材で、ビジネススーツにはあまり向きませんが、お洒落着スーツ用の生地としては、かなり存在感がある素材です。

ビキューナ(ビクーニャ)

ビキューナは、南米の高地に生息するビクーニャの毛です。ビクーニャはラクダ科の動物です。繊維はカシミアよりも細い希少な素材です。ビクーニャは非常に憶病な動物であるため羊のように飼育ができず、需要が増えた20世紀半ばには、毛を目的とした狩猟によって生息数が激減しました。現在は絶滅危惧種となっているため、アンデス山脈の生息地で、ペルー政府の保護管理下にあります。狩猟ではなく適切な剪毛によって得られるビキューナは一頭あたり200g程度です。あまりにも希少なため流通数も限られており、混紡率によって100万円単位で価格が変わります。ビキューナは、スーツ生地の最高級素材といえます。

アルパカ(アルパカ)

アルパカはラクダ科の動物です。アンデス山脈に生息し、高地の寒暖差に対応できる豊かな毛が特徴です。現在は、オーストラリアやヨーロッパでも家畜として飼育されています。繊維は中空構造で、中の空気が断熱材となるため、カシミヤよりも保温性が高いと言われています。

ベビーアルパカ(アルパカ)

生後2年までのアルパカから取れる繊維は、ベビーアルパカとして区分されます。モヘアやカシミヤよりも、柔らかな繊維の期間が長いのが特徴です。生後1年前後が質感のピークで、この時期の繊維は、ロイヤルベビーアルパカとして扱われます。

アンゴラ(ウサギ)

アンゴラウサギの毛はアンゴラ・ヤーンと呼ばれ、アンゴラ山羊のモヘアとは別の素材になります。軽く暖かな素材です。ウールとアンゴラの混紡素材は、上品な風合いが特徴です。

キヴィック(ウシ)

北極に近い寒冷地に生息する、長毛種のジャコウウシの毛です。冬の間に生える白い冬毛が、春の気温上昇とともに抜け落ちます。現地のエスキモーは、その毛を集めて利用していました。ジャコウウシ自体の生息数が少ない事、採取される原毛が少ないことから、非常に希少価値の高い繊維です。ウールやビキューナと混紡され、世界的にも類を見ない最高級生地になります。老舗マーチャント(服地卸商)のドーメル社が取り扱っています。

素材②:化学繊維

化学繊維には、「合成繊維」、「半合成繊維」、「再生繊維」があります。

■合成繊維

ポリエステル

ポリエステルは、石油から作られるテレフタル酸と天然ガスから作られるエチレングリコールを原料とする合成繊維です。高温で溶かしたポリステルの原液を、型から押し出し吸気中で冷却します。このような糸の製造工程を溶融紡糸と呼びます。ポリエステルには多種多様な機能や肌触りを備えた繊維がありますが、その違いは原液が空気中に押し出される際の型で決まります。
ポリエステルはスーツ生地に使用される合成繊維の主流素材です。ポリエステルはシワになりにくく、強度と耐久性に優れているため、実用性が重視されるビジネススーツに向いています。ウールと違い洗濯で縮むことはあまりなく乾きも早いため、洗えるスーツとして販売されているものは、ポリエステル100%や、ポリエステルの混紡率が50%前後のものが多くなります。また、他の合成繊維と比べ、クリーニングやアイロンの熱にも強いことが、スーツに使用される理由でもあります

ポリウレタン

生地に数パーセント混紡されるだけでもストレッチ性が高くなる、伸縮性の高い素材です。スーツの場合は、肩やパンツの腰回り、膝などのストレッチ性が上がります。しかし、合成繊維には経年劣化があるため長期的な着用を目的とするスーツには向きません。経年劣化とは、使用するしないに関わらず素材が劣化する現象で、紫外線や水分などの影響を受けます。特に水分を含むと加水分解という素材が脆くなる分解現象が発生するため、混紡率が高いものの着用目安は2、3年となります。そのためオフィスカジュアル用のジャケットやパンツなどに使用される傾向があります。

ナイロン

石油を原料とする合成繊維です。軽くシワになりにくい事に加え、乾燥が早く取り扱いやすい素材です。以前はスーツに使用されることは少ない素材でしたが、現在はオフィスカジュアルでのラフなスタイルにナイロン生地のスーツが注目されています。

■半合成繊維

半合成繊維とは、原料は天然繊維やタンパク質を利用し、合成物質である酢酸で科学的に処理する繊維です。

アセテート

木材パルプを原料としている半合成繊維です。木材パルプに含まれるセルロースを使用した糸の原液を型から押し出して糸を作ります。空気中に押し出された糸は空中で溶剤を蒸発させる工程があり、ポリエステルの製造方法である溶融紡糸に対して、乾式紡糸と呼ばれます。シルクのような柔らかい光沢がありますが、繊維の強度はなくデリケートな素材です。繊維のアセチル基の数でアセテート、ジアセテート、トリアセテートに変化します。主に婦人服やスーツの裏地、混紡素材として利用されます。

●プロミックス

牛乳に含まれるカゼイン(ミルクカゼイン)が原料となる繊維です。軽量で発色が良く、シルクに似た光沢と滑らかさを持ちます。

■再生繊維

キュプラ

綿花の種子の表面から採取される短い繊維(コットンリンター)を加工した素材です。綿が原料であるため吸湿性や放湿性に優れており、湿気がこもりにくく衣服内が快適に保たれます。シルクに近い滑らかさが、スーツの袖通りを良くするため、スーツの裏地に使用される高級素材として知られています。合成繊維と違い帯電しにくいため、スーツのまとわりつきを防止します。

レーヨン

木材パルプから作られます。シルクに似た特徴を持ち、滑らかな肌触りと吸湿性、上品な光沢を備えています。スーツの裏地やスーツ生地の手触りを滑らかにするために混紡されます。

【天然繊維と合成繊維の違い】短繊維と長繊維

天然繊維と合成繊維の違いとして、繊維の長さがあります。

天然繊維は1つの繊維の長さが数センチ程度で、長くても1mに満たない長さです。このような短繊維はステープルと呼ばれます。原料の段階では、その繊維が複雑に絡み合い塊となっているため、紡績工程で繊維を既定の本数で向きや細さを揃えながら撚りをかけ糸にします。繊維を長い糸へ加工するには複数の加工の工程を経る必要があり、天然繊維は価格も高価になります。

一方の合成繊維は、原料の範囲内で長い繊維を製造することが可能です。長繊維はフィラメントと呼ばれ、糸を揃えて撚りをかける工程も天然繊維よりも工程が少なく安価に製造されます。ポリエステルの活用範囲は広く、長繊維だけでなく、短繊維を製造することも可能なため、クッションなどの中綿にも使用されています。

代表的なスーツの混紡生地

・ウールシルク

ウールとシルクを混紡した生地です。ウールの質感に、上品なシルクの光沢とサラッとした肌触りがプラスされるため夏用スーツに使用されます。格式高いフォーマルシーンにも使いやすい上質な雰囲気を持つ生地になります。

・ウールモヘア

シルクよりも光沢の強いモヘアは、夏用スーツの定番素材です。モヘアのみで糸を作ることが困難なため、基本はウールと混紡されます。ウール生地にモヘアの贅沢な光沢が備わるため、夏の結婚式など、華やかな場面におすすめの生地になります。モヘアの通気性でウールのみよりも涼しく快適な着心地です。

・ウールポリエステル

スーツの基本素材であるウールとポリエステルは非常に相性が良く、混紡することで互いの長所が短所を補います。ウールは、肌触りが良く吸湿性に優れますが、シワになりやすく強度がない素材です。ポリエステルは吸湿性がありませんが、強度があり、シワになりにくいため、ウール生地を主体とした生地に混紡すると実用的な扱いやすさになります。そのためビジネススーツの生地として、ウールとポリエステルの混紡は人気があります。しかし、ポリエステルの割合が増すほど、素材の高級感は失われるため、ポリエステル100%のスーツなどは、フォーマルシーンやパーティーシーンには向きません。

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スーツを着る機会が多い方にとって憧れの高級スーツ。購入を検討している方のなかには高級スーツに使われる生地はどのようなものがあるのか、どのように選んだらいいのか迷う方も多いのではないでしょうか。そこで、この記事では、高級生地の選び方や一般生地との違いを解説していきます。

スーツの生地の原産国の定番は?

メリノウールとは

スーツの基本素材であるウールは、羊の種類によって質感が変わります。生地の質感はこの原毛を採取する羊に左右されるため、長い歴史の中で品種改良が繰り返されてきました。さまざまな品種のなかで、現在スーツ生地に最適とされる高品質なウールが採取されるのはメリノ羊です。
ウールの歴史は古く、メリノ羊は1000年ほど前から珍重されてきました。当初はスペインのみで飼育されており、当時の国王によってメリノ羊の輸出が禁止されていたほどです。その後、18世紀の終わりにメリノ羊はオーストラリアへ持ち込まれ、品種改良を重ねて現在のメリノウールへと発展しました。オーストラリア産メリノウールの生産現場は、世界的に見ても最先端の技術を保有しており、高級ウール生地の主要な生産地となっています。

【メリノウールの産地】

メリノウールの主な産地は、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、南アフリカです。それぞれの産地によって繊維の太さが異なり、特にスーツの生地に適しているのは、品種改良がすすんだオーストラリアやニュージーランドです。オーストラリアとニュージーランドは、毛織物の産地でスーツ発祥の国であるイギリスが植民地としていた歴史の影響もあり、牧羊が発展しました。

オーストラリア

オーストラリアのメリノウールは、繊維の白さを示す白度が高いことが知られています。メリノウールで作られた生地は高級感あふれる光沢を持ち、滑らかな肌触りで吸湿性、放湿性に優れています。また、一般的なウールよりも細いメリノウールは、さらに繊維の細さによって5種類のランクに分けられます。


・ウルトラファイン(14.6~16.5μm)
・スーパーファイン(16.6~18.5μm)
・ファイン(18.6~20.5μm)
・ミディアム(20.6~22.5μm)
・ストロング(22.6~24.5μm)


高級スーツ生地として使用されるのは、スーパーファインやウルトラファインです。しかし、ウルトラファインほど繊維が細い素材は、強度が落ちるため一般的なビジネススーツへの使用は避けます。上質感や高級感を楽しむ、フォーマルやパーティーシーン向きの生地に使用されます。

ニュージーランド

日本のように四季のあるニュージーランドは、羊の飼育に適した国土で、季節ごとに適した土地に移動しながら放牧されています。オーストラリアメリノと同様に白度が高く、繊維も均一なため価値が高いのが特徴です。繊維は主要な生産国の中で、もっとも細くしなやかです。国土が小さく、採取される量も相対して少ないことから希少性の高い素材となっています。

スーツ生地の産地

スーツ生地の産地として代表的な国は、イギリス、イタリア、日本です。この3つの国に世界三大毛織物産地があります。良い生地には大量の水が必要になるため、水が豊富な地域が生地の生産地として発展しました。

①イギリス(ハダースフィールド)

イギリス生地の産地としてはハダースフィールドが有名です。コルネ川とオルム川が流れるこの地域には、いくつもの世界的な生地メーカーの本拠地があります。

イギリス生地の特徴

ハダースフィールドで生産されるイギリス生地は重量があり厚く、耐久性にも優れています。イギリスには霧の町として有名なロンドンがあります。イギリスは年間の平均湿度が高く、晴天が少ない地域です。一般的なスーツ生地は湿度に弱く、湿気によって生地が波打ったり、シワになったりします。そのため、イギリス生地は湿気対策として生地を強化する方向に発展しました。糸は双糸で強度が高く、織りは打ち込みが強い厚い生地です。どっしりとした重厚感のあるイギリス生地は、湿度がある場合にもシワになりにくく、薄地である春夏スーツでも、驚くほどのハリがあります。スーツの袖を握っても、離せばパッと元に戻る復元力がイギリス生地の特徴です。艶のある冬生地は表面感が凛々しく、紳士服らしいかっちりとした雰囲気を持っています。
イギリス生地がハリやコシを追求した理由は、湿気対策だけではありません。ブリティッシュスタイルの美しい構築的なシルエットに、生地のハリが必要なためです。ブリティッシュスタイルのスーツは、堂々としてかっちりとした肩先、厚く立体的な胸、高い位置で絞られたウエストが特徴です。実際の体の上に、男性の理想的なスタイルを新たに構築するスーツであるため、ブリティッシュスタイルは「構築的なスーツ」と呼ばれます。つまり、体の表面に快適にフィットしつつ、生地のハリが立体的なカーブを描くのが、イギリス生地の最大の特徴です。ブリティッシュスタイルのスーツが構築する、男性の理想的なシルエットは、イギリスの多くの裁断士やテーラーの職人たちが試行錯誤を重ねて作り上げたものと言われています。そのシルエットを実現するハリがイギリス生地には必要だったために、ハリやコシに優れた生地が発展しました。
イギリス生地の色柄には、地域の気候や国民性も反映されています。落ち着いた色彩の町並み、思慮深く威厳のあるイギリス紳士を想起させるような、ダークカラーや伝統的な柄が多くなります。強めの柄であってもグレンチェックなどモノトーン系が多く、派手な色柄は少ない傾向です。伝統的な色柄の格式高い雰囲気は、ブリティッシュスタイルに良く合います。

イタリア(ビエラ)

イタリアは豊富な水資源を持つビエラで毛織物産業が発達しました。アルプス山脈を水源とするコルボ川やチェルヴォ川の軟水を利用して生産されています。

イタリア生地の特徴

REDA(レダ)やCANONICO(カノニコ)に代表されるイタリア生地は、主に単糸で織るため柔らかさと軽さが特徴の生地です。スーツ生地の肌触りの良さはイタリア生地が特に優れています。これはイギリス生地ほど強い打ち込みはしないためで、織りの密度が薄く、しなやかで柔らかい仕上りになります。表情豊かな光沢の生地が多く、仕立てたスーツには上品な高級感が漂います。イタリアンスタイルらしい柔らかなシルエットにはイタリア生地のしなやかさが欠かせません。
イタリアンスタイルには、軽く柔らかで滑らかな風合いの生地が必要です。そのためイタリア生地は柔らかさとしなやかさに特化しています。細い繊維を細い単糸に紡績し、打ち込み密度は低い織りのため、なめらかで軽い生地に仕上がります。丸みのあるシルエットは、実際の体型に吸い付くような自然な着心地になります。ウエストの絞りは比較的低めで、大人のリラックス感のあるスタイルです。イタリアンスタイルの生地には、生地を握っても手を離すとパッと元に戻る復元力があります。このしなやかな生地の持つ復元力やハリは、袖のラインの美しさや、胸元からウエストにかけてのシルエットを維持します。イタリアンスタイルの特徴として、肩幅や胸の厚さに、柔らかい生地がフィットするためサイズ感が特に重要になります。適正サイズよりもスーツサイズが大きいと、シルエットが乱れます。

日本(愛知県尾州一宮)

日本の毛織物産地としては愛知県の一宮が有名です。木曽三川の水を利用して多くの毛織物メーカーが誕生しました。日本の生地は品質管理が徹底されているため世界でも高い評価を得ています。日本の生地は海外からの輸送コストもかからず生地本体の価格に経費の上乗せが少ないため、コストパフォーマンスが良いという面もあります。

日本生地の特徴

日本の生地は、イギリス生地の影響を強く受けています。日本の夏はイギリス同様に湿度が高いためイギリス生地の特徴や機能性が適しており、その長所を取り入れた生地が開発されたためです。その結果日本生地は、日本の気候に対応できる厚みと耐久性を備えた、なめらかで光沢の美しい生地を生産できるようになりました。日本生地の安定した高品質は、世界的にその価値が認められています。

生地を選ぶ時の要素

スーツの生地選びは生地見本を見て、好みの色柄を選んでしまうことも多いのではないでしょうか?
生地を選ぶ際に、知っておくと便利なポイントを具体的にまとめました。

生地選びのポイント

・光沢

光沢にも種類があります。高級ウール生地の光沢は非常に上品で、わずかな角度によっても優雅に変化します。高級感のある結婚式用のスーツなどにおすすめです。ポリエステル生地の光沢は見る角度を変えても均一になります。この光沢を用いて織柄のストライプなどを表現するとシャープで若々しい印象になります。ハードなビジネスで光沢感のあるスーツを使う場合はポリエステルの混紡などが強度の面でもおすすめです。

・ハリ

生地の復元力の強さがハリです。イギリス生地のようなハリのある生地には双糸が使用されています。双糸は2本の糸を撚るため太くなりますが、単糸よりも糸の太さが安定するという特徴があり、生地感が美しくなります。構築的で立体感のあるブリティッシュスーツを仕立てるためには、生地のハリが必要なためイギリス生地を選びます。

・しなやかさ

細い単糸で織られた生地はイタリア生地が代表的です。しなやかで軽く、滑らかな肌触りで人気があります。抜群の肌触りのカシミアをウールに混紡した生地は、しっとりとした上質感がプラスされます。シルクが混紡された生地はサラサラとして滑らかです。イタリアンスタイルのスーツには、イタリア生地を使うことで、独特の丸みを帯びた柔らかなシルエットになります。

目付(重量)

幅150cmの生地1m分の重さです。生地の重さはシーズンの目安になります。重ければ厚く、軽ければ薄いためです。たとえば、春夏生地のアイリッシュリネンは、春物が345g、春夏兼用が300g、真夏用で240gとなります。薄さ、厚さの目安として目付を見ると分かりやすくなります。

・色柄

スーツは着用シーンに適した色柄があります。イギリス生地は格式高めな落ち着いた色柄が多く、イタリア生地は、おしゃれで鮮やかな色柄が多くなります。特に高級生地ブランドの色柄は絶妙です。派手な色でも気品があり、強い柄には威厳があります。特に無地は生地の高級感をダイレクトに楽しめるためおすすめです。

強度

一般的に、高級ウールは強度があまりなく、ポリエステルは強度があります。着心地と強度を両立したい場合は、ウールとポリエステルの混紡を選びましょう。通常Super140以上の表記があるスーツを日常ビジネスとして使用すると、シワになりやすく劣化も早くなります。着心地は良いですが、買い替えが頻繁になるためコスパが良いとは言えません。

スーツの色柄の格式

スーツはフォーマルシーンやビジネスシーンなど格式高い場面で着用されるため、お洒落よりもマナーが優先されます。場面に合ったドレスコードの範囲で、お洒落を楽しむことが基本です。スーツの色柄の格式をドレスコードと合わせて簡単に覚えておきましょう。

【ドレスコードとは】

ドレスコードとは、服装規定と訳されます。洋服の着用ルールです。会場に集まる人が同じドレスコードを守る事で、式典やイベントの雰囲気が統一されます。同じ格式の衣服を着用することで、参加者が平等な立場で快適にイベントを楽しむことが可能になります。そのためドレスコードを守ることは、大切なマナーでもあります。代表的なドレスコードを3つ知っておくだけで、スーツの格式の基本が分かります。ドレスコードは昼と夜で着用する衣服が変わります。時間によって着用する衣服が変わるのは、ヨーロッパの貴族が、時間で衣服を着替えていたなごりです。

正礼装

もっとも正式なドレスコードです。昼はモーニングコート、夜はテールコート(燕尾服)を着用します。

準礼装

正礼装を略式にした着こなしです。昼はディレクターズスーツ、夜はタキシードを着用します。礼服は、昼夜兼用で着用が可能です。

略礼装

略礼装はスーツを着用します。一般的にはダークスーツですが、正式な略礼装は昼がチャコールグレー(濃灰)の無地、夜がミッドナイトブルー(濃紺)の無地です。

格式の高い衣服である正礼装と準礼装は黒無地です。この場合の黒無地は、高級感のある朱子織かタキシードクロスを指します。タキシードクロスとは礼装用の綾織を指し、モーニングコート、テールコート(燕尾服)、タキシード、ブラックスーツ(礼服・喪服)のすべてに使用される式典用の生地です。

スーツの中で、もっとも格式が高く、略礼装として着用できる色柄が、チャコールグレーの無地とミッドナイトブルーの無地です。スーツは無地が格式高く、色はチャコールグレーやミッドナイトブルーのような、黒に近い濃色(ダークカラー)が正式とされます。

【ブラックスーツとは】

日本では式典用の礼服や喪服をブラックスーツと呼びます。黒無地のビジネススーツもブラックスーツと呼ぶことがあるため混同されますが、実際は別物です。冠婚葬祭でブラックスーツと呼ぶ場合は、礼服と喪服を指し、黒無地のビジネススーツは含まれません。現在は、光沢を抑えた礼服を慶弔両用のブラックスーツとして販売するケースが増えました。慶事と弔事どちらにも使用できるものを検討している場合は、慶弔両用できる生地なのかを確認してから購入すると安心です。

【葬儀と通夜の格式】

葬儀では喪服が正式です。黒無地のビジネススーツはダークスーツに分類されるため略喪服になります。葬儀では場面に対してスーツの格式が低くなるため失礼になります。
通夜では、予想外の出来事に駆けつけたという意味を込めて、正式な喪服ではないダークスーツを着用します。この場合は、濃紺や濃灰を着用します。突然の通夜に正式な喪服を着用すると、準備していたように見えるため避けるという親族に対しての配慮です。

しかし、現在は斎場での通夜と本葬が一般化したため、亡くなった当日でなければ、喪服で失礼にはなりません。亡くなった当日に訪問する場合のみダークスーツを着用します。

【結婚式の格式】

結婚式の平服にあたる略礼装ではダークスーツが基本です。正式な略礼装は、昼が光沢を抑えたチャコールグレーの無地、夜が光沢のあるミッドナイトブルーの無地になります。

現在は、昼夜の区分はなくなりつつあり、昼の結婚式でもミッドナイトブルーやネイビーを着用するケースが増えました。ブラウンはカジュアルな色とされるため避けます。ブラックはダークスーツに含まれるため着用できます。シャドーストライプやピンストライプなど、薄い柄がおすすめです。

黒無地のビジネススーツを着用する場合は、就活用として販売されている物が多いため注意が必要です。就活用の黒無地は面接用として光沢を抑えたスーツのため、お祝い事ではビジネス感が漂う地味な印象になりがちです。

結婚式用に黒無地スーツを購入する場合は、極力華やかな光沢のある上質なウール生地を選ぶと、お祝いらしい雰囲気になります。

【ビジネスの格式】

準礼装や略礼装などのドレスコードの影響もあり、ビジネススーツも、ネイビーの無地やグレーの無地が正式な場面では無難とされています。格式やマナーを重んじる日本では、スーツの色は濃いものほど格式高く、柄は派手な柄になるほどカジュアルな雰囲気とされる傾向があります。また、黒無地のスーツは喪服を連想させるため縁起が悪く、業種を問わず避けられてきました。

しかし、近年はビジネスのカジュアル化が急速に進みました。これまで避けられていた黒無地が、オフィスカジュアルと呼ばれるカジュアル寄りの着こなしでは定番化しつつあります。カジュアルな着こなしに合わせた素材も人気です。例えばジャージー素材やポリエステル100%の生地の場合は、黒無地でも喪服には見えないという利点があります。無彩色である黒はコーディネートもしやすく、これまでにない新鮮な色合わせとして受け入れられています。ブラウンも同様の理由から、オフィスカジュアルに取り入れられています。

柄の種類

ここからはスーツの柄の種類と格式イメージや着用シーンを具体的に解説します。

無地

最も格式高い無地は、ビジネスや冠婚葬祭、公的な式典など場面を選ばずに着用できる定番です。また、生地の質感が分かりやすいため、高級ウール生地の風合いや光沢などの魅力が前面に出るのが無地とも言えます。特別なビジネスでのイベントや、結婚式、パーティーシーンでは、生地の質感にこだわり無地でスーツを仕立てるのもおすすめです。

ストライプ

ビジネスの定番であるストライプ柄は、ストライプが薄いほど格式高い場面に向きます。ストライプが太く、ラインとラインの間隔が広くなるほど印象が派手になります。日本のビジネスシーンでは、華美な服装を避ける傾向があるため、スーツの地の色は濃色で、柄が薄い物が好まれます。しかし、業種によっては、スーツの色がライトグレーのものや、ラインが目立つものも問題ないケースもあるため、社風や着用シーンに合わせて調節することが可能です。冠婚葬祭や公的な式典などでは、格式高めに無地か薄い柄を選ぶ方が無難です。

・シャドーストライプ(格式高め)

生地の織り方で光沢の出る方向を調節し、角度によってストライプが見える柄です。柄の光沢が強い物は華やかになるため、お祝い事や結婚式に向きます。光沢が控えめなものは、格式高い場面からビジネスまで全般に使用できます。

・ピンストライプ(格式高め)

ハリの先でドットを書き連ねたようなラインがピンストライプです。ストライプの中では格式高めです。薄く目立たない柄のため、ビジネス全般、入学式や卒業式の本人、保護者、入社式、七五三などの家庭内のお祝いまで幅広く着用出来ます。一般的に入社一年目までは、無地、シャドーストライプ、ピンストライプまでが無難な柄となります。

・ヘアラインストライプ(標準)

髪のような細いラインが間隔を空けずに並ぶストライプで、遠目には無地に見える柄です。落ち着いた控えめな印象になるため、一般ビジネスで使いやすい柄です。

・オルタネートストライプ(標準)

パターンの違うラインが交互に入るストライプのため、変化に富んだストライプです。ライン自体の太さはピンストライプやヘアラインストライプ程度で薄めの柄のため、比較的ビジネスでも使いやすい柄です。

・ペンシルストライプ(標準)

オルタネートストライプよりも太いラインで、鉛筆で書いたようなラインに見えることからペンシルストライプと呼ばれます。ペンシルストライプは遠目にもストライプが目立つ柄になります。一般ビジネス向きの柄です。

・チョークストライプ(華やか)

文字通りチョークで書いたような太目のラインでフランネル生地に多く、起毛した生地によって柄の境目が曖昧になるのが特徴です。ミディアムグレーに白のラインの場合は柄が目立ちにくいですが、ネイビー系に白のラインではかなり存在感のあるストライプになります。シャツやネクタイに強めの柄を重ねてコーディネートするとバランスを取りやすくなりますが、着用場面を選ぶ柄です。

・バンカーズストライプ(華やか)

バンカーストライプはストライプの中で最も太いラインが特徴です。ストライプの間隔も広いため、派手な印象になります。ダブルブレステッドスーツと相性が良い柄です。

チェック

・シャドーチェック(格式高め)

シャドーチェックは、生地の織りでチェックを表現したものです。細かなマイクロチェック、通常のチェックや大柄のウィンドーペーンなど、さまざまな織柄のチェックをシャドーチェックと呼びます。角度によってチェックが見える落ち着いた柄のため、ビジネス全般で使用できます。光沢の強いものはストライプよりも柄の見える範囲が広く華やかになるため、マナーが気になる場面では避けた方が無難です。

・マイクロチェック(格式高め)

チェックの格子が非常に小さく、遠目には無地のように見えるチェックです。スーツの地の色と柄の色が近いものは見た目が無地に近く、落ち着いた印象のため、ビジネスからお祝い事全般に着用可能です。

・ウィンドーペーン(標準)

窓枠のような格子柄です。イギリスの伝統的な柄でブリティッシュ風のコーディネートに合うお洒落な柄です。格子が大きく細いラインのため、ラインの色が薄いものは、それほど目立ちません。ビジネスでも使いやすい柄です。

・グレンチェック(華やか)

千鳥格子にヘアラインを重ねたイギリスの伝統的な柄です。平織りの夏生地では洗練された印象になり、綾織の起毛素材では、重厚感のある雰囲気になります。全面に変化に富んだ柄が繰り返されるため、ビジネスでは服装の自由度が高い業種に向いています。

・オーバーチェック(華やか)

オーバーチェックとは、グレンチェックの上にウィンドーペーンを重ねた柄です。特にグレンチェックに淡いブルーのウィンドーペーンを重ねる、爽やかなオーバーチェックは、プリンス・オブ・ウェールズ・チェックとして現在も人気の柄です。プリンス・オブ・ウェールズとは、イギリスの王位継承者(法定推定相続人)に与えられる称号です。歴史上この称号を与えられたエドワード7世が好んで着用していたことに由来します。春夏向きの爽やかな柄で、ビジネスで明るい色柄が着用可能な場合におすすめです。

・ブロックチェック(華やか)

均等な太さのラインが交差するため、正方形のブロックを並べたようなチェックになります。日本では市松模様とも呼ばれます。スーツではダーク系の2色で柄を表現するケースが多く、それほど派手にはなりません。ビジネスで使用する場合は、濃淡の差が大きくない物がおすすめです。色の濃淡の差が強くブロックのサイズが大きい物は、派手な印象になるため着用シーンに注意が必要です。

スーツスタイルのチェックは全般的に華やかでお洒落な印象になります。オフィスカジュアルスタイルでは、チェックはジャケットやパンツに単品使いしやすく、無地アイテムとのコーディネートも簡単なため人気があります。

ヘリンボーン(格式高め)

ヘリンボーンはニシンの骨のように中心線から左右に細かく折り目が出る織柄です。日本では杉綾織りとも呼ばれます。織柄のため、通常のストライプ柄よりも落ち着いた印象で、無地よりも華やかさがあります。ビジネスやお祝いごとでも使いやすい柄です。

バーズアイ(格式高め)

バーズアイは鳥の目のような組織を連ねた柄です。生地色がダークカラーでドットが白の場合は、バーズアイの柄が目立ちますが、ドットが生地色と同系色の場合は、無地に近い印象になるため使いやすい柄です。ビジネスからお祝い事全般に着用できます。

ハウンドトゥース(標準)

柄を構成するパーツが、猟犬の牙に似ていることがハウンドトゥースの名前の由来です。日本では千鳥格子とも呼ばれます。基本的には白と黒のモノトーン柄ですが、グレーの濃淡やネイビーの濃淡で柄を表現するケースも見られます。柄のサイズも様々で、柄が小さいものは無地見えするため使いやすくなります。ビジネスでは濃淡の差が小さいものや、マイクロサイズの柄が使いやすくおすすめです。

シャークスキン(標準)

シャークスキンとは、文字通りサメの肌のようなザラつきのある生地です。2色の糸を使って織るため、左上から右下に向かって斜めに階段状の柄が出ます。マイクロチェック同様に柄が細かいため、遠目には無地に近い印象です。シャークスキンの特徴として、2色の内1色が白になることから、生地色は比較的明るめになります。

柄の選び方

冠婚葬祭ではドレスコードがある場合や、着用場面が格式高めに設定されているケースが多いため、スーツの柄は無地から薄い柄に限定されます。そのため冠婚葬祭で迷ったら、ダーク系の無地という決め方も失敗のリスクがなく無難です。

一方ビジネスの場合は許容範囲が広く、業種や社風でコーディネートにも傾向があるため、一概にこれが正解とはいえない面があります。
社風に合わせたアイテムでコーディネートを用意する場合に、一つの目安となるのが、柄合わせの基本ルールです。

基本ルール①:2無地1柄

スーツ、シャツ、ネクタイの3アイテムの内、2つを無地で合わせる、2無地1柄のコーディネートは、柄が強いスーツを用意してある場合、必然的にシャツとネクタイが無地になります。

ラインが強いチョークストライプやチェックのスーツなどを持っている場合は、2無地1柄が派手になりすぎず、スッキリとまとまるためおすすめです。

スーツが無地や織柄の場合は、ネクタイかシャツのどちらかを柄にします。ビジネスではネクタイを柄でシャツを無地にするケースが定番です。ネクタイを無地にする場合、光沢は抑えたものを合わせます。光沢が強いとパーティーコーディネートになってしまうためです。

基本ルール②:1無地2柄

スーツ、シャツ、ネクタイの3アイテムの内、2つを柄で合わせるパターンです。この場合は思い切ってシャツを、白とサックスブルー(グレーを混ぜた薄いブルー)の無地だけで、1週間コーディネートを完成させるパターンも考えられます。

シャツが無地の場合スーツとネクタイは好きな柄を選ぶことが可能で、どのような柄合わせでも無難にまとまります。今現在の手持ちのシャツやネクタイに柄が多い場合は、スーツを無地で用意するケースも考えられます。

スーツが無地のパターンは、シャツとネクタイの柄を重ねることになるため、コーディネートの柄合わせが苦手な方は迷いやすくなります。その場合コーディネートはスーツを新調する時に、トレンドに合わせたシャツとネクタイをセットで同時購入しておくことがおすすめです。手軽に、毎日のコーディネートにトレンドを取り入れられるため便利です。

また、買い替えサイクルとトレンドの移り変わりは、ほぼ同じで2、3年が目安になるため無駄がありません。

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スーツに合わせるネクタイの選び方とは?色・柄選びのポイントをご紹介【購入前にチェック】

ネクタイはさまざまな種類があるため、どれを選べば良いのか迷うことでしょう。スーツと違い、自分の好みでネクタイを選ぶ場合が多いかもしれませんね。実は、ネクタイは色柄によって相手に与える印象が変わる、重要なアイテムのひとつです。今回は、ネクタイの選び方についてご紹介します。

スタッフに事前に用途を伝える

着用場面に合わせた色柄を選ぶ際にはTPOを意識します。TPOは、Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場面)を指しています。

現在のメンズスーツでは、昼がチャコールグレー、夜がミッドナイトブルーという時間の区分はなくなりつつあります。
一般的なお祝い事で代表的な結婚式は、ネイビーの人気が高くなっています。格式にとらわれないカジュアルな結婚式では、比較的明るい色合いも見られるようになりました。場所については、式典が行われる会場の格式、ホテルやレストランなどに設定されているドレスコードなどを参考にします。ドレスコードはホームページなどに記載されている場合があります。

入学式や卒業式の場合は、主催者である校長がモーニングコート(正礼装)を着用するため、主催者側となる教員はブラックスーツ(準礼装)になります。式に招かれる側の保護者はダークスーツ(略礼装)を着用し、保護者の代表となるPTA会長はブラックスーツ(準礼装)となります。このように主催者と自分との関係性、当日のイベントでの立場や役割で、衣服の格式が変化します。

結婚式のドレスコードが平服の場合も、立場によって適切なスーツは変わります。
新郎新婦が友人であればそのまま平服にあたるダークスーツですが、友人代表として挨拶がある場合は、代表という立場でブラックスーツ(準礼装)が正式です。また、新郎新婦が兄や妹など親族の場合は、お迎えする側としてブラックスーツ(礼服)となります。

準礼装にあたるブラックスーツがふさわしい立場で、ビジネススーツの黒無地を代用することは避けます。黒無地のビジネススーツでは、結婚式のゲストと同格(略礼装)になってしまうためです。衣服の格式は、相手への敬意を示すために整えるものであるため、迎える側は格式を高く、招かれる側は格式を低くし、同じ立場の場合は同格に揃えます。

ドレスコードは、地位やお洒落を競うものではなく、参加者が互いに敬意を示し合い、イベントを楽しむためのマナーであることがポイントです。

ビジネスシーンでは、準礼装や略礼装のような固定された服装が無いため、立場や業務内容に応じた色柄でコーディネートします。失敗できない場面では、格式高めなダークカラーの無地に近いスーツが無難です。一般的なビジネスシーンであれば、社風や業界の着こなしの範囲内で選びます。

以前は公務員や金融系の着こなしはダークカラーの格式高めな着こなし、マスコミや商社などはライトグレーなども許容されるお洒落な着こなしなどの傾向がありました。しかし、現在はビジネス全般に着こなしのカジュアル化が進んでいます。ジャケットパンツスタイルに代表されるビジネスカジュアル、クルーネックシャツやタートルネックニットなども許容されるオフィスカジュアルなど、コーディネートも多彩になってきました。

このような着こなしの変化やTPOによって変わるふさわしい色柄について迷ったときは、経験豊富なスタッフのアドバイスを参考にするのがおすすめです。

例えば、スーツをオーダーする場合に用途をスタッフに伝えて、オススメ柄を聞いてから選ぶ方法もあります。可能な範囲でスタッフに用途を伝えましょう。情報が多いほどスタッフは場面に合った生地を提案できます。具体的な用途が伝えにくい場合は「失敗できない大切な場面で着用する」「親しい人と過ごすリラックスした予定」というようなざっくりとした言葉で構いません。格式高めのスーツか、おしゃれ着としてのスーツか、でボタン色などのオプションの選択肢も変わるため、方向性だけでも明確にしておくと安心です。

結婚式用などで、当日の雰囲気や参加者の様子が分からない場合は、格式高めな生地やコーディネートにしておくと安心です。格式高めであれば、当日周囲の人と多少雰囲気が違ったとしても、失礼にはならないためです。

生地を見極めるポイント「Super、番手、目付、織り方」

Super

スーツの品質を示す話題に必ず登場するSuper表記は、糸になる前のウール繊維の細さを示したものです。Super表記はウール以外の繊維には使用されません。なぜ他の繊維では使用しないSuper表記でウール繊維の細さを明示するのかというと、ウール繊維の細さが、ウール生地のしなやかさや肌触りを左右する重要な要素のためです。現在Super表記は、Super80’sからSuper250’sまでの18段階に分けられています。

Super表記の数値は大きくなるほど生地の強度が落ちます。営業での移動や運転、作業などが多いビジネスシーンには、ある程度の強度が必要なため通常ウールのほうがおすすめです。

デスクワークや会議など一般的な室内での着用であれば、Super100’sからSuper140’s程度が現実的な強度です。Super150’s以上は、通常パーティシーンのような耐久性を必要としない用途に向いています。

番手

番手とは糸の太さです。糸は原毛の繊維を、一定の本数で揃えるところから始まります。揃えた繊維に撚りをかけて糸にする工程が紡績です。繊維の長さは数cmから数十cm程度のため、紡績で長い糸へと加工します。この紡績での糸の撚りの強さや糸自体の太さは、生地の肌触りやハリを決める要素の一つとなります。

そのため生地の質感は、原毛の繊維の細さと、その原毛を使用してどの程度の太さの糸を作るのかで決まります。

番手は、重さ1キロの糸が何メートルかを示しています。1キロの糸が50メートルの場合は、50番手の糸となります。つまり、番手の数値が大きくなるほど、重さに対して糸は長く細くなります。イギリス生地よりもイタリア生地の方が、番手の数値は大きく糸は細くなる傾向です。

生地の肌触りは、糸番手と織りの密度にも左右されます。イギリス生地は縦糸と横糸の打ち込みが強く本数も多いため、密度が高くハリのある生地に仕上がります。イタリア生地は、縦糸と横糸の本数を少なく織り上げるため、密度が低くしなやかになります。

単糸と双糸

単糸とは、紡績したままの糸を指します。天然繊維は一つの繊維が数㎝程度と短いため、繊維を整えながら引き延ばし撚りをかけ、長い一本の糸に加工する必要があります。この撚りをかけながら長い糸に加工する工程を紡績と呼びます。この工程を経て作られた糸が単糸です。

双糸とは、紡績工程で作られた単糸を2本撚り合わせたものを指します。

高級生地に使用される糸は、ウールの中でも希少な細い繊維です。細い繊維で作られた単糸は、強度に欠けるため、単糸2本を1本の双糸に撚り合わせて強度を上げます。Super表記で示されるような希少なウールの双糸は、なめらかな肌触りを維持しつつ、生地に必要な強度も備えます。

糸の撚り方や種類は、生地の風合いに影響します。

繊維は強く撚ると固くなり、弱く撚ると柔らかくなります。夏用は撚りを強くした糸で、肌触りがサラサラとした風合いの生地を織り、秋冬は撚りを弱くして柔らかで滑らかな風合いの生地を織ります。

糸は、糸を撚る方向に対して戻ろうとする力が働きます。単糸は反時計回りに撚りをかけますが、その糸を双糸にする際には時計回りに撚りをかけることで、糸は安定します。一般的なウール糸はこのような組み合わせで双糸になっています。

イタリア生地は経糸(たていと)に双糸、緯糸(よこいと)に単糸を使用することで、なめらかで軽い生地を織ります。

一方、経糸と緯糸に双糸を使用するイギリス生地は厚みがあり、防寒性と耐久性に優れています。しかし、近年のスーツの着用シーンでは空調や移動手段の快適さが向上したため、時代とともに耐久性や防寒性はそれほど重要ではなくなりつつあります。

現代のウール生地には、なめらかな肌触りや高級感が求められるようになってきました。そのような需要から、各メーカーはイギリス生地にイタリア生地の特徴を備えた新作生地を次々と発表しています。イギリス生地とイタリア生地の長所を持った生地は非常に人気があり、スーツ生地の新しいスタイルとして受け入れられています。

梳毛と紡毛

梳毛糸(そもうし)とは、ウール繊維を整えるための梳く(すく)工程を経るため、短い繊維は取り除かれ均一な仕上がりになる糸です。起毛感のない、サラッとした春夏生地やオールシーズン生地に使用されます。

紡毛糸(ぼうもうし)とは、短い繊維を含んだまま紡績した糸です。仕上がる糸は均一にはなりませんが、秋冬向きの起毛感のある糸になります。

マナー上格式高い場面には、梳毛糸で作られた生地が正式となります。そのため準礼装のブラックスーツや略礼装のダークスーツには、カジュアルな印象になる紡毛糸の生地は避けます。紡毛糸の代表的な生地はフランネルやツイードです。格式高いフォーマルシーン、ビジネスでも重要な業務の場合は、冬でも起毛素材は避けた方が無難です。

目付

生地の重さを目付と呼びます。一般的な目付は幅1mの生地、長さ1m分の重さです。スーツ生地の目付は、幅150cmから155cmの生地1メートル当たりの重さを示しています。

目付の数値は大きいほど生地は厚くなります。目付の数値が小さい場合は薄くなるため、目付は着用シーズンの目安になります。

通常、ウールの春夏素材では、生地の目付は240gが目安です。3シーズンの着用を前提とするオールシーズンの目付は250g前後が適しており、真冬用のスーツは260g以上が理想的と言えます。春夏の素材として人気のアイリッシュリネンの目付は、春は345g夏が300gと若干ウールよりも重く、素材によって適した目付が変わるのも特徴です。

生地の織り

生地は、平織り(ひらおり)、綾織り(あやおり)、朱子織り(しゅすおり)の3種類のいずれかに分類されます。この3種類を三原組織と呼びます。生地を織るには、最初に経糸(たていと)をスーツ生地の幅150cm分用意する必要があります。その経糸に緯糸(よこいと)を往復させて生地を織ります。

・平織り

平織りは三原組織の中で、もっともシンプルな組織になります。経糸と緯糸が交互に組み合わせる単調な織り方で、通常は光沢のない生地に仕上がります。糸が重なり合う部分が少なく薄い生地に仕上がるため、通気性が良くサラッとした肌触りになります。春夏素材の生地に多い織りです。

・綾織り

綾織の生地は、平織よりも複雑な織り方となるため、生地に厚みがあります。平織りに比べ、隙間が少なくなるため保温性が高まり、秋冬生地として使用されます。綾織の生地は穏やかな艶があり、秋冬らしい質感になります。生地の表面に斜めの畝が見えるのが綾織の特徴です。

・朱子織り

朱子織りとは、高級感のある礼装用の織りです。朱子織りの生地は厚みがあり、上品な光沢が出ます。モーニングコートやタキシード、ブラックスーツ(礼服)に使用される黒無地は朱子織です。綾織の生地で朱子織りに近い風合いとなるものにタキシードクロスがあります。タキシードクロスは、タキシードだけでなく、モーニングコートや礼服の定番生地として広く使用されています。

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生地メーカーとは

スーツの生地を生産、販売する生地メーカーには2種類あります。生地メーカーは、生地の生産が主体となっている「ミル」と販売が主体の「マーチャント」に大きく分かれます。

ミルは生地を常に企画、開発しており独自ブランドも保有している織物工場です。

マーチャントは日本語では服地卸商と訳され、企画を立て、素材を仕入れてミルに持ち込み生産を依頼します。マーチャントはミルで生産された生地をストックし、卸商として各ブランドやテーラーと取引します。代表的なミルやマーチャントの特徴を知っておくと、生地選びが容易になります。

ここでは、代表的なミルやマーチャントについて解説します。

ミル

■Ermenegildo Zegna(エルメネジルド・ゼニア)

1910年に創業したイタリアの老舗生地メーカーです。オーストラリアの直営の牧羊場で原毛を生産しています。メーカーでありながらプレタブランドも展開し、スーツの流行にも大きな影響力を持った企業です。

ゼニアの生地は、一度触れれば忘れられない滑らかさとハリを備え、生地から溢れる高級感、存在感は随一です。希少性の高いハイグレードなウール繊維の生産、各加工の工程から製品化まで自社工場で行っており、その生地のクオリティは世界最高峰と言われています。現在ゼニアは服地業界を牽引する大きな存在となっています。

ゼニアの生地の大きな特徴として、Super表記がないことが挙げられます。一般的な高級服地は、Super表記によって使用されている繊維の太さ(繊度)が分かるようになっています。ゼニアは、なぜSuper表記しないのでしょうか?

実は、ゼニアの生地には複数の繊度の糸が使用されています。Super120’sやSuper150’sなどの表記では表せない高度な技術で織られた生地で、Super表記を越えた生地とも言えます。

このようなゼニアの生地は、繊維の太さが違うため表情豊かで深みのある光沢が特徴です。メリノ羊の原毛の中でも特に品質が良いとされる、肩と脇部分を贅沢に使用した生地は、繊維に含まれる油分で淡く輝くような光沢になります。素材の持つ光沢と繊度のブレンドで、ゼニアの生地は世界最高峰の名にふさわしい高級感を備えています。

TRAVELLER(トラベラー)

しなやかさが特徴のゼニアの生地は単糸が基本ですが、トラベラーは双糸で織られた秋冬生地です。シワになりにくいだけでなく、シワ回復力が強いためメンテナンスが容易で、出張の多いビジネスマンに好評です。生地の扱いやすさは、まさにトラベラー(旅行者)の味方と言えます。シルク混タイプもあり、程よい艶が華やかさを添えます。シルク混は結婚式など、お祝い事にもおすすめの生地です。

COOL EFFECT(クールエフェクト)

最先端技術を取り入れたゼニアの夏用生地です。ビジネスの基本色であるダークカラースーツは、直射日光が当たることで衣服内の温度が上昇しやすいというデメリットがありました。クールエフェクトは最新技術を用いた加工で、太陽光を反射し衣服内温度の上昇を抑えて、快適に保ちます。

ELECTA(エレクタ)

エレクタは、ゼニアの創業から19年後に発売された生地です。発売から100年近い時を経ている現代まで、異例のロングヒットを続ける生地です。シルエットの美しさで人気のエレクタは、耐久性としなやかさを両立させた生地です。風格を備えた上品な光沢は、スーツとして仕立てることで、着用者の動きに合わせて優雅に変化します。シワになりにくく、メンテナンスが必要な高級生地の中では、比較的扱いやすい生地であるため、オーダースーツ初心者にもおすすめの生地です。

TROFEO (トロフェオ)

イタリア語でトロフィーを意味するトロフェオは、最高級品らしいネーミングといえます。ゼニアは、羊毛産業の発展にも尽力しており、毎年羊毛の品評会を開催しています。その品評会で、最優秀賞を受賞した原毛を使用した生地がトロフェオです。最優秀賞を受賞した原毛から、さらに厳選し17.5ミクロンのウールのみを使用しています。厳選に厳選を重ねた素材で作られた生地は、経糸に双糸、緯糸に単糸を使用することで繊維の持つ滑らかさを最大限に活かしています。

・LOOP(ループ)

ループは資源の循環に配慮した生地です。高品質を追求するゼニアでは、これまで通常の生地であれば高品質に分類されるウールが、ゼニアの基準に満たないために廃棄されていました。ループはそのような高品質なウールを一部再利用し、ゼニアとしての循環への貢献を意識した生地です。品質の追求と環境への配慮が感じられる生地です。

・15milmil15(クインディッチ・ミルミル・クインディッチ)

通常15ミルミルと省略されます。非常にハイクオリティな生地で、トロフェオと同様に人気があります。ミルミルの名を冠する生地は、使用される糸の番手によって4種類に分かれます。しかし、現在は4種類のうち13ミルミルと12ミルミルが販売を終了しているため、14ミルミルと15ミルミルのみとなりました。15ミルミルは15ミクロンの繊維を使用しています。15ミクロンの繊維はSuper170’sの細さのため、スーツとしてはかなりデリケートな繊維ですが、経糸と緯糸に双糸を使用することで強度の問題をクリアしています。

・14milmil14(クワトロディッチ・ミルミル・クワトロディッチ)

15ミルミルよりも細い14ミクロンの繊維が使用されている生地です。14ミクロンはSuper190’sに当たる極細の繊維です。しかし、強度は15ミルミルの細さが限界のため、14ミルミルの生地に使用する糸は、15ミルミルよりも太く紡績されています。滑らかな細い繊維に強度を付加するため、撚る段階で一本の糸に使用する繊維の本数を増やしています。糸の番手(太さ)を大きくすることで、15ミルミルよりも厚い生地になります。そのため15ミルミルはスーツに、14ミルミルはジャケットに適した生地になります。

■Vitale Barberis Canonico(ヴィターレ・バルベリス・カノニコ)

ヴィターレ・バルベリス・カノニコ社は、イタリアのビエラを本拠地とする1663年創業の老舗織元メーカーです。非常に歴史のあるミルで、現在は年間800万mの服地を生産しています。

ゼニアの生地もカノニコの工場で生産されており、その高い技術力がうかがえます。豊富な水を用いて作られた生地は、世界的なアパレルブランドにも供給されています。

イタリア生地の特徴である軽さや滑らかさに優れており、美しい光沢と発色の良さも人気の理由です。高級ウール生地では比較的手頃な価格で、オーダー初心者にも人気があります。

Perenial(ペレニアル)

ペレニアルはカノニコの代表的な生地です。Super110’sの繊維を使用しており、高級生地の中では扱いやすい強度を備えています。ペレニアルの優れたシワ回復力は、ビジネス使用での毎日のメンテナンスを容易にします。高級感と実用性のバランスが良い生地のため、ビジネススーツから結婚式用のスーツまで幅広く使用できます。

Tropical(トロピカル)

夏生地の定番であるトロピカルは通気性が良い平織りの生地です。カノニコのトロピカルは、Super120’sの強撚糸を使用しています。強撚糸とは、糸の撚りを強くした糸です。強撚糸を使用すると通常の平織よりも通気性が向上し、生地にハリがでます。吸湿性やなめらかさにも優れ、シワにもなりにくく、通常ウールよりも柔らかく上品な風合いになります。

Saxony(サキソニー)

秋冬生地の定番であるサキソニーは、起毛感のある柔らかな風合いの生地です。カノニコのサキソニーはビジネスにも対応するSuper120’sを使用しています。冬用のフランネルよりも軽く薄い生地のため、しなやかで快適な着心地になります。

Flannel(フランネル)

紡毛糸の起毛感が心地良いカノニコのフランネルは、高級感のある冬生地の定番です。厚みのある粗い生地になりがちなフランネルですが、カノニコのフランネルは、なめらかで体を包み込むような柔らかなフィット感です。繊維が細いため、しっとりとして肌なじみが良い素材です。

Revenge Super150’s(リベンジSuper150’s)

カノニコのリベンジSuper150’sに使用されている16ミクロンの繊維は、カシミヤのような風合いとシルクのような光沢を持つ高級素材です。常に上質感と実用性のバランスに優れた生地を生産するカノニコは、繊細な原毛を双糸で使用することで生地の強度を上げています。贅沢な質感に、スリーシーズン対応の厚みで実用的な強度もあるため、着回し力も高い一着に仕立てることが可能です。

■ロロ・ピアーナ(Loro Piana)

ロロ・ピアーナは1936年にイタリアで創業しました。原料を厳選し最先端技術を使用して、最高品質の生地を生産しています。カシミアなど特殊獣毛の生地を得意とし、希少なビキューナの取り扱いをペルー政府から認められているミルでもあります。

現在は、スーツやジャケットなどのファッションアイテムの販売も行うプレタブランドでもあります。

・FOUR SEASONS(フォーシーズンズ)

フォーシーズンズは、ニュージーランド産Super130’sのメリノウールを使用した生地です。高級感あふれる光沢と軽さが特徴で、文字通りオールシーズン生地です。なめらかな肌触りでストレッチ性に優れた実用的な生地でもあります。欧州ではオールシーズンとして有名な生地ですが、日本の湿度が高い夏には対応していません。そのため秋口から冬、春までを目安としたスリーシーズン生地といえます。

・SUMMER TIME(サマータイム)

ウールにシルクと麻を混紡した夏用生地です。シルクの光沢と麻の通気性、ベースとなるウールが防シワ効果をもつため、実用性と快適さを追求した生地です。夏生地には光沢のある生地が少ないため、シルクの清涼感のある上質な光沢は、優雅な印象になります。

・TASMANIAN(タスマニアン)

タスマニア産Super150’sの繊維を使用したタスマニアンは、世界的大ヒットを記録した生地です。需要の大きいビジネスに適した機能を備えています。Super150’sの手触りや高級感に、耐久性と防シワ性の使いやすさ、吸湿性と放湿に優れた快適な着心地が人気の理由です。シルクを混紡した夏用のサマータスマニアンも軽い着心地と上品な光沢で人気があります。

・WISH(ウィッシュ)

ロロ・ピアーナの生地でも特に上質感がある生地がウィッシュです。Super170’sを使用した生地はカシミアに近い独特のぬめり感があります。ウィッシュには夏用のトロピカル、シルクを混紡したロイヤルウィッシュ、カシミアを数%混紡したカシミアウィッシュがあります。ウールとは思えない質感と、角度によって優雅に移り変わる、深みのある光沢が魅力的な生地です。

ZELANDER(ジランダー)

ニュージーランド産Super130’sの繊維を使用したジランダーは、通気性が良くシワの回復力にも優れています。高級生地の中では、比較的繊維が太いSuper130’sを使用しているため、耐久性があり光沢は控えめです。光沢が強くないため、華美な印象を避ける日本の一般ビジネスでも使いやすく、値段も手頃です。毎日のビジネス使用で上質な生地を選びたい場合に候補になる生地です。

・MOVING(ムービング)

ロロ・ピアーナが、化学繊維であるポリウレタンを初めて使用した生地です。ポリウレタンは、非常に優れたストレッチ性を持つ化学繊維で、わずか1%の混紡で現代的なストレッチ性を備えた生地になります。ムービングは、Super120’sのウールの風合いを損なわない範囲で化学繊維を混紡することで、快適なストレッチ性を備えました。現在主流のタック入りテーパードパンツなど、タイトなスタイルのスーツに向いている生地です。

・EREGANZA(エレガンツァ)

エレガンツァは「優雅」という意味を持つ言葉です。文字通り上品で優雅な光沢を持つエレガンツァは、特殊な方法で生地にシルクを使用しています。通常の生地でシルク繊維を使用する場合は、生地を織る際にシルクの糸を使用します。エレガンツァは糸を作る紡績段階で、ウール繊維とシルク繊維を混紡します。一本の糸にウールとシルクの光沢が細かく混ざり合うことで、生地は独特の美しい光沢を放ちます。

■REDA(レダ)

レダは1865年に創業しました。エルメネジルド・ゼニア、ロロ・ピアーナに次ぐ大手生地メーカーです。かつての産業革命時には、いち早く高速織機を導入しており、現在も最先端技術に力を入れています。

レダは生地生産だけでなく生産に関わる環境への配慮や、動物福祉の観点から飼育環境の改善などにも取り組んでいます。徹底した機械化と自社一貫体制により、コストパフォーマンスが良い生地を生産しています。また、トレンドにも敏感に対応しているため、スーツをオーダーする際にトレンドを取り入れたい場合におすすめです。

・ICESENSE(アイスセンス

レダの代表的な春夏生地です。生地に赤外線の吸収を抑える機能があり、熱の反射を促進します。メンズスーツの定番カラーはダークカラーであるため、長らく夏場の衣服内温度の上昇は大きなデメリットでした。レダのアイスセンスは、スーツ生地の表面温度が通常生地と比較して、約8度低く抑えることが可能と言われています。ダークカラーが特に好まれる日本のビジネスシーンでは、夏場におすすめの生地です。

・Silky Effect(シルキーエフェクト

秋冬に人気の生地で、文字通りシルクのような上品な光沢を放つ生地です。レダの持つ特殊技術であるドルフィン加工によって、ウール100%の生地に光沢を付加します。ウール100%であるためシワの回復力が強く、形態安定加工も施されているため扱いやすい生地です。上品で艶やかな生地は、お祝い事やパーティーシーンにおすすめです。

・ATTO(アット)

春夏の人気生地であるアットの特徴は糸にあります。強撚糸と呼ばれる、強い撚りがかけられた糸を使用しており、通気性が良くハリのある生地になります。機能性が重視される近年のビジネスシーンに対応する多機能素材です。防シワ性とストレッチに加え、撥水加工で汚れにくく、実用的な面に特化した生地といえます。夏場でも涼しく快適な着心地です。

・MAIOR150’s(マイヨール150’s)

レダの最高級ランクの生地です。Super150’sの繊維を使用し、低速織機で糸に負荷をかけないようにゆっくりと織り上げています。生地を織り上げるまでに長い時間を必要としますが、仕上がる生地は柔らかな高級感あふれる風合いになります。レダはコストパフォーマンスに優れており、生地のクオリティに対して価格が手頃なため人気があります。

■JOHN FOSTER(ジョン・フォスター)

イギリス、ウェストヨークシャー州で1819年に創業しました。創設者のジョン・フォスターは当時21才の青年で、当初は糸や生地の買取を主とした取引をしていました。その後、織物工場を保有すると高品質な生地が話題となり大きく発展し、現在は世界的な生地メーカーとなっています。

ジョン・フォスターの生地は、イギリス生地特有の落ち着いた色柄が中心です。ダーク系で伝統的な柄が多く、日本のビジネスシーンでも使いやすくおすすめです。

ジョン・フォスターの最大の魅力は、イギリス生地とイタリア生地の長所を合わせ持つ風合いです。イギリス生地よりも柔らかくしなやかで、イタリア生地よりもハリとコシがあります。非常に現代的な需要にマッチしており人気があります。

イタリア生地よりもハリがあることで、スーツのスタイルはシャープになります。イギリス生地よりも柔らかくしなやかなためフィット感が軽く、スタイルの美しさと快適さに優れています。

また、コストパフォーマンスが高く、イギリス生地の中では比較的手頃な価格帯です。

・ウーステッドウール(梳毛生地)

ジョン・フォスターの代表的な生地は、なめらかで起毛感のない梳毛生地です。生地にイギリス生地とイタリア生地の両方の特徴を持つため、ブリティッシュスタイルとイタリアンスタイルのどちらのスーツスタイルにも仕立てられます。

・Escorial(エスコリアル)

エスコリアルは、希少なミニチュアシープから取れる原毛を使用しています。エスコリアルは一時ナポレオン戦争で絶滅したと思われていましたが、タスマニアとニュージーランドで生き残っていることが分かり、現在はジョン・フォースターを含む6社のみが取り扱っています。カシミアに近い、ぬめり感のある風合いが特徴です。

■CERRUTI(チェルッティ1881)

イタリアのビエラで1881年に設立しました。現在は、生地部門と既製服部門で所有企業が異なるため、生地部門はチェルッティ、フランス企業が所有する既製服部門はセルッティとして区分されています。

イタリアらしい明るい雰囲気を持つ生地も豊富に取り扱っています。

・WINTERISSIMO(ウィンテリッシモ)

ベーシックな定番柄も豊富なウィンテリッシモは、スーパー110’sの繊維で程よい高級感と、快適な着用感でビジネスにも使いやすい生地です。シワになりにくいため扱いやすく、高級ウールのメンテナンスになれない人にも安心な生地です。

・i PARTY(アイ・パーティー)

パーティーシーンにふさわしい華やかな生地です。織り上げた生地に特殊な加工を施すことで、華やかな光沢を放つ生地になります。光沢の加工はチェルッティが得意とする分野です。ビジネススーツの光沢とは異なる艶やかな雰囲気を楽しみたい場合に向いています。

・i TRAVERL(アイ・トラベル)

文字通りトラベル(旅行)に強い生地です。生地は撚りの強い強撚糸を使用しているため、シワになりにくくハリがあります。強撚糸は通気性も良く、快適な着心地です。ウールの持つ天然のストレッチ性もあり、出張などにも便利な、実用的な機能を備えています。

・COOL ELEGANCE(クールエレガンス)

機能的な接触冷感で涼しく、優雅な高級ウールの風合いを持つ生地です。夏の直射日光による紫外線を遮る機能を持ち、衣服内の温度が上昇することを防止します。生地にはSuper100’sを使用しているため、柔らかな肌触りと実用的な強度が両立されています。春夏のビジネスシーンを快適に過ごせる生地です。

・PRESTIGE(プレステージ)

ビジネスでも使いやすいSuper130’sの生地です。程よいハリと強度を持ちながら上質な風合いで、ビジネスシーンでも合わせやすい高級感を楽しめる生地といえます。海外生地の中では、比較的に日本の湿度にも対応できる生地のため、真夏を除くスリーシーズンに着用が可能です。

・NOBILITY150(ノビリティ150)

ノビリティ150は、チェルッティならではの光沢が美しい生地です。繊細なSuper150’sのウールを使用したオールシーズンでストレッチ性にも優れています。

Silklight(シルクライト)

チェルッティの中でも特に贅沢な光沢を持つシルクライトは、スーパー150’sの高級ウールにシルクを20%混紡しています。チェルッティ独自の技術で、シルクを経糸に使用して生地を織ります。独特の華やかな光沢で、結婚式などお祝いごとに向いている生地です。

・TURBO180 (ターボ180)

ターボ180は、スーパー160’sの繊維を使用していますが、厳選された特に品質の高いものであるため、その質感はSuper180’sと同等に近く、名前の由来となっています。ウールとは思えない上質な柔らかさとなめらかさの生地です。

・CASHMERE LIGHT(カシミヤライト)

カシミヤライトは上質なSuper150’sのウール生地に、カシミヤを数%混紡した起毛生地です。秋冬向きの起毛感のあるなめらかな肌触りになります。通常起毛感のある生地は、光沢が少ない物が多い傾向ですが、カシミアライトには美しい光沢があります。

■テイラー&ロッヂ(Taylor&Lodge)

イギリスのハダースフィールドで1883年に創業しました。イギリスを代表する世界的なミルです。コーン川の豊富な軟水を生地生産に利用し発展しました。低速織機による高品質な生地を重要視しており、高速織機を低速織機に近い速度にすることで、同様の効果を出すことに成功しています。

ブリティッシュスタイルに必要な生地のハリやコシ、弾力性を持っている生地は、世界的なブランドにも多く使用されています。ミルは本来、織りが本業です。テイラー・ロッヂは、現在ハダースフィールドでも老舗のミルであるBULMER&LUM(バルマー&ラム)の傘下となり、織りに分野に専念し、以前よりも高品質な生地の生産に成功しています。

・ラムズゴールデンベール

ラムズゴールデンベールとは、バルマー&ラムのグループ企業である、ジョセフ・ラム社が生産する糸です。メリノ羊のウール繊維の中でも特に細い梳毛を使用した特別な糸を、テイラー&ロッヂが生地に織り上げます。ラムズゴールデンベールに使用される極細のウール繊維は、生産した牧羊業者が表彰されるほど希少な高級素材として知られています。ラムズゴールデンベールは、ウール繊維の特質を持ちながら、カシミヤのようなぬめり感と、美しい光沢、繊維由来のストレッチ性で、優れた着用感を実現します。

■御幸毛織(みゆきけおり)

世界三大毛織物産地である日本の愛知県で、明治38年(1905年)に創業しました。オーストラリアに直営の牧場を所有し、原毛から服地までを一貫生産し、高品質で安定した生地を生産しています。モーニングやタキシード、ブラックスーツに適した、深みのある染色の生地を豊富に揃えています。

・ナポレナ フォーマルドスキン

ドスキンとは、フォーマル用の起毛感のない梳毛糸を使用した生地です。艶やかで高級感のある五枚朱子や八枚朱子と呼ばれる織り方で、格式高い場面にふさわしい生地へと加工します。ドスキンには一般的なウール生地とは異なる、カット後の微起毛が残っており、程よい厚みのある生地で優雅な光沢を持ちます。フォーマルシーンの装いを格式高く演出します。

・10マンスツイル M5750

10マンスとは、真夏と真冬の各1カ月を除く、10カ月間の着用を目安とする生地です。生地にはフォーマル専用の濃色加工が施され、通常の黒無地スーツよりもはるかに黒く深みのある色合いが特徴です。

・ストレッチモヘア&コールズボン

正礼装のベストにふさわしいシルバーグレーやホワイト系のストレッチモヘアと、コールズボン専用のストライプ生地です。日本の湿度に合った日本製生地のハリとしなやかさは、格式高い特別な日にふさわしい質感を備えています。

■日本毛織(にっぽんけおり)

日本毛織は明治29年(1896年)に創業のメーカーです。日本の最先端技術で、機能性の高い生地を生産しています。現在は、毛織物以外に衣料、サービス、流通など幅広く事業を展開しており、通称社名としてニッケ(NIKKE)の採用を決めました。

・ゴールデンマフ

ゴールデンマフには、ニュージーランド産Super160’sの極細繊維が使用されています。Super160’sはカシミヤよりも細い繊維のため、肌触りはカシミヤに近いぬめり感になります。起毛感のある生地は光沢が出にくい傾向がありますが、ゴールデンマフは上品な艶が特徴です。

■長大(ちょうだい)

愛知県一宮市で昭和21年(1946年)に創業しました。天然素材である原材料の厳選、自社内の染色工場での染色など、安定した生産体制を構築し、常にハイクオリティな生地を生産しています。技術革新と生地の品質向上にも取り組んでおり、最新の織機や新システムの導入にも積極的です。

・C.D.K.SUPER TEXスーパーテックス

国内生産で有名な長大のスーパーテックスは、フォーマル専用の濃色加工を施した生地です。しなやかさと柔らかさを合わせ持つ上質な生地は機能面にも優れています。生地の持つ撥水や静電気を抑える機能は、生地を汚れから守り着用時の快適さを上げます。

マーチャント

■ドーメル

最も歴史のある老舗マーチャントで、設立は1842年です。設立者であるジュールズ・ドーメルは当初、イギリスの服地をフランスに輸入するビジネスをしていました。主に生地はハダースフィールドにあるミルに依頼して生産しています。現在は販路を世界中に広げており、多くのハイブランドにも生地を供給しています。

・Amadeus(アマデウス)

経糸と緯糸に双糸を使用することで、ハリの強いイギリス生地に仕上がっています。色柄や光沢は、フランスらしい優雅な雰囲気です。これまでイギリス生地は比較的落ちついたダークカラーで、伝統的な色柄がメインだったため、華やかなイギリス生地という特徴が大ヒットしました。

主力生地となったアマデウスは種類も豊富で、近代的なストレッチ性を備えたアマデウスアクション、シワに強い春夏用のトロピカルアマデウス、シルクを混紡した艶やかな夏生地のサマーアマデウスなどがあります。

中でも、世界的に販売数が多いアマデウス365は、年間を通して着用できるため日本でも人気があります。高温多湿な日本では真夏の着用は難しいですが、スリーシーズン対応で快適に着用できるため、ビジネス向きの生地です。

・ROYAL11(ロイヤル11)

イギリス生地特有のずっしりとした重さのある生地を、軽量化することで汎用性の高い生地へと改良しました。目付(生地の重さ)が11オンスであることが名前の由来です。近年このようなスーツ生地の軽量化が目立っています。

・Mystic(ミスティック)

ミスティックはモヘアの魅力があふれる生地です。ラグジュアリーな光沢と扱いやすいシワ回復力、春夏向きの清涼感が特徴です。日本の高温多湿な夏に、モヘアのサラッとした着用感は人気があります。

■スキャバル

世界的な大手マーチャントで生地の販売数も膨大です。ベルギーで1938年に設立されました。現在は、ファッションブランド展開にも力を入れています。伝統的な生地から最先端のトレンド生地まで幅広く取り扱っています。

特にトレンドに敏感なブランドで、毎年トレンドに対応した新作生地を発表しています。徹底した品質管理のために、コストを惜しまない事を明言しており、その生地のクオリティは世界でもトップレベルです。

・THE ROYAL(ザ・ロイヤル)

王室の意味を持つ、美しい光沢の生地です。Super100’sの生地を生産することに、世界で初めて成功したメーカーがスキャバルでした。そのスキャバルが自信作として送り出した生地がザ・ロイヤルです。

当初は、一部の顧客にだけ販売されていたことからも、その自信のほどがうかがえます。色柄は伝統的な落ち着いた雰囲気の物が多く、コーディネートしやすい生地です。

・ETON(イートン)

イートンは、イギリスの名門校であるイートンカレッジに由来しています。イギリスの伝統的な色柄が特徴です。Super130’sのしなやかな繊維を、イギリス生地特有の打ち込みの強い織り方で仕上げています。イタリア生地のしなやかさと光沢を持ちながら、イギリス生地のようなハリがある美しい生地です。

■ドラッパーズ

ドラッパーズは1956年にイタリアのボローニャで設立されました。イタリアの気候を反映した、発色の良いカラフルな色柄の生地が豊富です。ドラッパーズの生地は、カノニコで織られているためその品質の高さには定評があります。

価格帯は少し高めですが、ファッション性が高く、他にはない魅力的な色柄があります。

・ARRIVLA(アライバル)

ドラッパーズの代表的な生地です。艶やかな光沢が特徴のオールシーズン生地です。高級ウールの中では比較的扱いやすいSuper110’sの繊維を使用しています。ビジネス向きな色柄から、カジュアルなパーティーシーン向きの華やかな色柄まで豊富です。

・SUMMER DAYS(サマーディス)

文字通り、夏の日を快適に過ごすためのスーツ生地です。しなやかなSuper120’sの繊維に強く撚りをかけた糸で織られたトロピカルは通気性が良くハリがあります。光沢がありサラッとした着心地は日本での着用にも適しています。

・BRAZON 150’s(ブラゾン150’s)

ドラッパーズ創業時からの定番として長い人気を誇るブラゾンは、現在Super150’sの繊維を使用したハイグレードモデルとして展開されています。高品質なタスマニアンウールの持つ、なめらかな風合いと光沢が美しいブラゾンは、豊富な色柄で場面に合わせたスーツが仕立てられます。

・ROYAL CASHMERE(ロイヤルカシミヤ)

高級素材であるカシミアを贅沢に使用しながら、トレンドによって移り変わる色柄を、積極的に取り入れています。トレンドの色柄を贅沢な生地で仕立てることで、価値のある一着となります。

HOLLAND&SHERRY(ホーランド&シェリー)

ロンドンで1836年に創業したイギリスのマーチャントです。現在は本社をスコットランドに移し、世界的な服地ブランドとして販路を広げています。ウールや特殊獣毛であるビキューナ、カシミヤなども手掛け、年間で3,000パターンともいわれる豊富な色柄を揃えています。

Target(ターゲット)

ホーランド&シェリーの定番生地でもあるターゲットは、Super120’sのウールが持つ高いシワ回復力と、耐久性がある点が特徴です。ベーシックな無地や伝統的な色柄で使いやすく、機能面でもビジネススーツに向いています。

・Cool Breeze(クールブリーズ)

サラッとした肌触りの生地です。糸の撚りを強くした通気性の良い生地は、着心地も軽く夏の不快感を和らげます。上質なウールの持つ夏用生地の肌触りや吸湿性には抜群の快適さがあり、化学繊維にはない特徴です。

Perennial Classics(ペレニアルクラシックス)

上質なメリノウールを光沢のあるツイルで織り上げた美しい質感が特徴です。イギリスらしい洗練された伝統柄と光沢のバランスが絶妙な生地です。吸湿性と放湿性に優れたウールの快適な着心地を活かしたスリーシーズン対応になります。

・City of London(シティオブロンドン)

ロンドンの名を冠する、イギリスの伝統的な色柄が特徴の生地です。クラシックな雰囲気を楽しめる秋冬生地のコレクションです。

・GOSTWYCK(ゴーストウィック)

オールシーズン対応の生地で、Super170’sを使用しています。ゴーストウィックはオーストラリアのシドニー北西の地名に由来しています。この地域で飼育される羊から採取される原毛を使用していますが、その基準を満たすウルトラファインに分類されるSuper170’sは、全体の僅か10%程度と非常に希少なウールです。Super170’sのウール繊維の細さは15.0マイクロンで、ほぼカシミヤと同等のなめらかさを持ちます。

・CHEQUERS(チェッカーズ)

現代的なチェック柄やストライプが印象的な、優しい肌触りの起毛感が特徴の生地です。Super130’sとSuper140’sの2種で、高い技術力による質感と軽やかな色合いのコレクションです。

■Harrisons of Edinburgh(ハリソンズ・オブ・エジンバラ)

伝統的なイギリスの生地ブランドです。

・REGENCY(リージェンシー)

程よい生地の厚さでスリーシーズンに対応します。現代的に再解釈されたブリティッシュスタイルにふさわしい生地であり、しなやかさとハリを持つモダンなスーツに仕上がります。

FRONTIER(フロンティア)

平織のオールシーズン生地です。通常の平織よりも厚みがあり、耐久性に優れています。生地にハリがあり、シワ回復力にも優れているためビジネス使用にも安心感がある生地です。オールシーズン生地ですが、真夏は厚みがあるため、日本では少し暑いため、スリーシーズン生地としての着用になります。

・PREMIER CRU(プルミエクリュ)

強い打ち込みが特徴のイギリス生地でありながら、イタリア生地のような柔らかな風合いを持つため、人気の生地です。扱いやすいSuper100’sを使用し、幅広い場面での着用を可能にしています。上質な肌触り、快適な着心地でバランスの良い生地です。

・CRU CLASSE(クリュクラッセ)

人気のプルミエクリュをグレードアップした生地で、イギリスらしいシャープで気品あふれる仕上がりを実現するハリとしなやかさを持ちます。Super120’sを使用した生地の質感と吸湿性、天然のストレッチ性は、毎日の着用を快適にサポートします。

・MULTI MILLIONAIRE(マルチミリオネア)

カシミヤの中でも特に希少なホワイトカシミヤと、生産量が限られるビキューナを贅沢にブレンドした生地です。唯一無二の質感と優しく柔らかな風合い、驚くほどの軽さは、まさに究極の一着にふさわしい生地です。

■Lanificio Luigi Colombo(ラニフィーチェ・ルイージ・コロンボ)

ルイージ・コロンボはイタリアのビエラで創業しました。高級ウールだけでなく、キャメルやカシミヤなど特殊獣毛の取り扱いに優れています。

原毛から完成した生地の最終チェックまで、自社内で完結させることで、品質を証明しコストパフォーマンスに優れた生地を生産します。主に希少価値の高いホワイトカシミヤや、最高級ウール、アルパカ、キャメル、モヘアなどを一流ブランドへと供給しています。

価格が安いのは?

スーツ生地のコストパフォーマンスを重視するなら、「ミル」から選ぶのがおすすめです。

ミルは、原毛の調達から生地の完成まで自社内で一貫して行っているため、中間マージンがかかりません。生地価格がマーチャントに比べると安く設定されています。マーチャントの生地は完成までに、複数の企業を経由するため、その間の中間マージンが生地価格に上乗せされます。

そのため生地の質と価格のバランスが良いのはミルの生地といえます。毎日使うビジネススーツには、定番柄も豊富なミルがおすすめです。

トレンドの生地は?

毎年変わる流行色や、トレンド傾向に敏感なのは「マーチャント」です。

大手マーチャントが流行を作る場合もあり、お洒落な生地やトレンドを取り入れたい場合はマーチャントの生地がおすすめです。特別な日のスーツや、お洒落着としてのスーツであればマーチャントの生地から選ぶことで、満足度の高いスーツを仕立てることが可能になります。

ウール生地が人気の理由

高級ウール生地は、原毛を採取する羊の飼育から始まり、糸から生地へと加工に時間がかかるため、化学繊維の生地よりも高価になります。

しかし、様々な化学繊維が開発されてもウールの毛織物が衰退しないのはなぜでしょうか?

ウールが選ばれる理由は、その快適さと高級感です。高級生地は実際に着用すると、多くの方がその快適さと価格に納得されます。指先から伝わるしっとりとした風合い、なめらかで高級感あふれる光沢、スーツスタイルを維持するハリとコシはウール独特のものです。

現在の科学技術でも、このウールの持つ特質を超える繊維は作れません。また、このウール生地の長所を引き出すオーダーは、体を採寸して型紙からつくるフルオーダーです。

スーツはどれほど生地が上質であっても、体に合った縫製ラインでなければ、着用感が快適とはいえません。適切な肩幅の余裕や、アームホールの大きさ、腰回りやヒップの余裕も大切なポイントです。さらに、シルエットを左右する、胸回りやウエストラインは、体に添うようなカーブが、型紙の段階から必要になります。型紙から作成するフルオーダーはスーツが無理なく体にフィットするため、高級生地の持つナチュラルなストレッチ性が体感できます。

良いスーツを仕立てるには、良い生地を選ぶだけではなく、その生地の長所を活かすフルオーダーで個人の型紙を作ることがポイントになります。

生地選びのコツ

実際に生地を選びときには、大きな生地を肌に合わせながら選ぶと安心です。第一印象は、生地と肌色の相性にも左右されます。サンプル生地を肩に掛けて合わせたときに、顔色が明るく見える色を選ぶと、スーツスタイルが引き立ちます。

合わせた時に、顔色が明るく元気そうに見える色をパーソナルカラーと呼びます。パーソナルカラーは人によって変わります。同じネイビーでも合う色、合わない色があるため、サンプル生地は大きな生地を用意しているお店を選ぶと安心です。

オーダースーツ専門店「オーダースーツSADA」とは?

オーダースーツSADAでは、専門スタッフがご要望に合わせて丁寧に採寸します。

体を動かした時の筋肉の張り、肩幅、腕の長さ、胸周りとウエストの落差、猫背、反り身、肩の傾斜などをチェックしつつ体にフィットする型紙を作ります。仕立て服であるスーツは、この工程が非常に重要です。型紙を作らないイージーオーダーやパターンオーダーではカバーできない部分も、フルオーダーであれば対応できます。しっかりと型紙を作り、次に最高の生地を選びましょう。色柄は着用場面に合わせたマナーで選び、生地の耐久性は、着用頻度を考慮すると安心です。日常使いであれば、シワやメンテナンスの手間は極力省ける生地を選んでおくと、使いやすさがかなりアップします。

トレンド傾向も取り入れて、カッコ良く着こなす方法もお任せください。ネクタイに流行色を選ぶのもオススメです。オーダースーツSADAでは、スタッフがそのような条件を総合しておすすめの生地をご提案します。快適なビジネス用生地、触れたらハッするような高級生地など、店舗で生地選びを楽しんでみませんか?特にイタリア生地の滑らかさ、イギリス生地の美しいハリは、言葉ではお伝えできません。ぜひ、店舗でお試しください。

お気に入りの一着は生地からこだわる!

オーダースーツSADAでは、今回ご紹介した海外生地から、実用的な生地まで取り揃えています。
高級ブランド生地の特性として、柔らかさ由来のシワがあげられます。高級生地で作った上質なスーツには、しっかりとメンテナンスして着用する、スーツ本来の着こなしが必要になります。毎日のビジネス使用で手間のかからない生地が良いという方には、防シワ加工生地やポリエステルを混紡し強度を上げた生地も選択肢になります。

予約がおすすめ

オーダースーツを失敗しないコツは、用途や着用頻度を想定した生地選びです。トレンドやおすすめ生地など、スタッフとの会話も楽しんでください。スムーズにオーダーするためには予約がおすすめです。待ち時間なしで採寸、生地選びとストレスなくオーダーできます。特に季節の変わり目は、新作生地もあり混み合います。ベストな生地選びのためにも、ぜひ事前にご予約ください。

生地を選ぶときのポイントは「光沢」「ハリ」「しなやかさ」「重量」「色柄」「強度」の6つ。それらを決定づけるのは「Super(ウール繊維の細さ)」「番手(糸の太さ)」「目付(生地の重さ)」「織り方」の4つの要素です。Superは80から250まであり、数字が大きいほど生地の強度が落ちる代わりに光沢感やなめらかさが増します。ビジネスでは100~140を、パーティーシーンなど用の頻繁に着ないスーツでは150~を選ぶと良いでしょう。番手は数字が大きいほど糸が細くなり密度が上がるため、ハリのある生地になります。生地に柔らかさを求める場合は、逆に番手の低いものを選ぶと良いです。生地の重さを表した目付は、大きいほど厚く、小さいほど薄くなります。大きいものは秋冬に、小さいものは春夏にと選び分けるのがおすすめです。織り方は「平織」と「綾織」の2種類で、平織はさらっとした生地感で春夏におすすめ。綾織は厚みが出るので秋冬におすすめです。当店でも扱う高級生地なら、シーズンに合わせた最適な生地選びができます。高価ではあるものの、快適に着こなせるうえ長持ちするので人気です。あえて、いきなり高級生地でスーツを作ってみるのも良いですよ。

三好 星良