季節が変わる前にチェックしておきたい季節ごとのスーツの違い
朝晩の気温が下がり始める秋、北風にコートの襟を立てたくなる冬、季節の移り変わりは思いのほか早いものです。日々の仕事に追われて、秋冬スーツの用意を忘れてはいませんか?
秋冬スーツの準備は、お盆を過ぎたら検討を始めましょう。まだまだ暑い日が続きますが、新作の秋冬生地が店頭に出始める8月末から秋分の日( 9月22日から23日 )ごろまでに注文を終わらせておくと安心です。
スーツは良い生地や人気の生地がシーズン途中で完売してしまうこともあるため、準備は早めがおすすめです。
スーツは3種類
- 春夏スーツ・・・シャリ感のある通気性の良い生地で仕立てた春夏スーツは、裏地が背中の上半分にあり、下半分は裏地がないことで見分けられます(背抜き)。着用期間は春分(3月20日か21日)ころから秋分( 9月22日か23日 )が目安で、地域によって若干前後します。
- 秋冬スーツ・・・滑らかで保温性がある生地の秋冬スーツは総裏地です。ジャケットの内側すべてに裏地があれば、秋冬と分かります。着用期間は秋分から春分を目安にします。
- オールシーズン(合服)・・・厳密には春と秋の着用が快適な背抜き仕様の合服スーツのことです。快適に着用できる期間は春と秋の各3ヵ月です。涼しいインナーや冬場のニットなどで調節を加えた場合、年間10カ月程度着用が可能なためオールシーズンと呼ばれます。
今回は、3種類あるスーツについて解説します。生地選びやカスタマイズにお役立てください。
寒さを乗り切る秋冬スーツではどんな生地が使われている?
秋冬スーツに使われる生地の特徴は、糸と織り、素材で分かれます。
糸は、
毛羽立ちのある紡毛糸と
毛羽立ちのない梳毛糸があります。
毛羽立ちがある紡毛糸はふっくらとした生地で冬用スーツに、毛羽立ちのない梳毛糸は標準的な生地で秋用スーツに使われます。
生地は平織と綾織に分かれます。
- 平織・・・経糸と緯糸を交互に組み合わせる単調な織り方です。糸の間に隙間ができるため通気性が良く、主に春夏生地として使用されます。さらっとした肌触りで格子状の織目が見えます。
- 綾織・・・経糸2に緯糸1と言うような割合で組み合わせる織り方で、平織よりも織目が複雑になり密度が上がるため保温性があります。秋冬生地がメインの織りです。比較的艶のある滑らかな肌触りで、斜めの織目が特徴です。
綾織の代表的な生地
綾織で織られた代表的な生地はいくつかありますが、スーツではフランネルが人気です。
- ギャバジン・・・経糸2、緯糸4で織られた生地で、通常の綾織よりも丈夫になります。
- ツイード・・・ざっくりとした粗目の織目で厚みがある生地です。
- フランネル・・・真冬用スーツの生地におすすめの起毛素材です。ネル、フラノなどとも呼ばれます。実は、フランネルは平織、綾織どちらも存在します。縮絨工程のあとに起毛させ冬生地らしい風合いと、実用的な保温性を高めています。そのため、薄くなりがちな平織でも十分秋冬生地として使用できます。
綾織で使われる素材
- ウール・・・スーツ生地のメイン素材です。ウール繊維の細さと糸番手(糸の太さ)で滑らかさ、しなやかさなどの肌触りが変わります。
- カシミア・・・カシミア山羊から採取する原毛から作られる素材です。高級感のある肌触り、軽さ、保温性に優れます。
- ポリエステル・・・デニールという繊維の太さで肌触りが変わります。ウールに強度やストレッチ性などを加えるために混紡されます。
- ポリウレタン・・・ポリエステルよりも強いストレッチ性があります。3%程度でも格段に生地のストレッチ性が改善します。
秋冬スーツに使われる素材はウールが中心となります。
ウールにカシミアを混紡することも多く、数%の混紡率でもカシミアを感じられるほど滑らかに風合いが変化します。
秋冬生地はウールをメイン素材として、風合いの改善にカシミアを、ストレッチなどの実用性の改善に合成繊維を混紡するケースが多いと言えます。
日常ビジネス向けでは、このような用途に合わせた混紡が好まれます。
逆に、冠婚葬祭用や、ビジネスでも会議用などの着用では、着心地やシルエットを重視した高級ウール100%が好まれる傾向にあります。
秋冬スーツの仕立て
スーツの仕立ては季節によって大きく3つに分かれます。
分かりやすい特徴は、ジャケットの裏地の取り付け方です。
ジャケットの背中部分にどのくらいの範囲で裏地が付けられているのかを見れば、大体のシーズンが分かります。
- 半裏・・・盛夏用ジャケットで、肩回りと脇の裏地を省いたものです。
- 背抜き・・・裏地が背中の上半分、肩甲骨が当たる部分のみに付けられたものです。春夏やオールシーズンに多い仕様です。
- 総裏・・・ジャケットの背面全体に裏地が付けられたものです。本来のスーツは総裏が基本ですが、湿度が高い日本では、夏服の裏地が省かれることが多く、冬物が総裏というイメージがあります。
ここでポイントになるのが、オールシーズン(合服)です。
オールシーズンとは合服(あいふく)のことで、厳密には夏と冬の間に着る服のことを指します。
本来は春や秋を着用目的としたスーツです。
合服で快適さとおしゃれの両立
気温差が激しい秋は、夏服では寒く、冬服では暑いという日があります。
四季のある日本でスマートな着こなしを考える場合、季節に合ったスーツはどうしても必要になります。
夏用と冬用の間に春秋用の合服スーツを一着持っていると、快適に過ごせます。また、コーディネートも季節感を感じられ非常に好印象です。
合服単体での着用期間は確かに短いと言えます。
しかし、インナーの合わせ方次第では、着用できる期間が長くなります。
接触冷感の肌着や、通気性の良いシャツと合わせて初夏まで、カーディガンや保温性の高い肌着などを合わせると冬場に着用できます。真夏以外の10カ月は着用できると考えて良いでしょう。
夏生地よりも厚く冬生地よりも薄い、春秋向きのスーツも検討してみてはいかがでしょうか。
日本ならではのスーツの楽しみ方です。
秋冬スーツにはどんな色が人気なのか
スーツのビジネスカラーはブラック、ネイビー、グレー、ブラウンの4色が基本です。
春夏は明るめのカラー、
秋冬は深みある濃色というのが暗黙の了解です。
ミディアムからダーク系で3着揃えておくと、秋冬の着こなしにメリハリがつきます。
マナー上は濃色が格式高く、生地色が明るくなるほどカジュアル寄りになります。
柄も、無地が格式高め、柄が派手になるほどカジュアルな印象です。
スーツは日常よりもビジネスや冠婚葬祭での着用がメインになるため、
マナーやTPOを無視して色柄を選べません。
近年は、オフィスカジュアルが浸透したため、以前よりも着用できるスーツの幅は広くなったといえますが、
着用場面に対する配慮は、コーディネートの根底にあると安心です。
秋冬スーツの色選び
- ブラック・・・ビジネスでは黒無地を避けます。黒無地を着用する習慣がない海外での着用も避けましょう。黒を着用する場合は柄物を選びます。
- ネイビー・・・明るいブルーを避けます。ミディアムカラーからダークカラーまで、比較的幅広い色合いが着用出来ます。秋のオススメは少し明るめネイビーです。梳毛糸で織られたハリのあるイギリス生地が良く合います。秋は上品な艶感を備えた暗めのネイビーがおすすめです。イタリアの起毛生地で、柔らかな風合いが冬の季節感にマッチします。
- グレー・・・シャツとネクタイが映えるミディアムグレーのスーツは秋に実力を発揮します。秋色のボルドーネクタイ、コーディネートを一新するダークグリーンのネクタイ、注目のブラウンネクタイもすっきりと合わせられます。冬はダークグレーで知的な雰囲気にするのもセンス良く見えます。もし、ライトグレーを着用する場合は、生地に起毛感が強い物を選び、冬の季節感を損なわないようにします。
- ブラウン・・・ビジネスではこれまで、あまり注目されることがなかったブラウンですが、近年オフィスカジュアルの浸透と共に、人気が急上昇しています。ブラウンはシャツネクタイの秋色コーデとも非常に相性が良く、赤系、青系どちらにも合います。秋はブラウン、冬は焦げ茶がおすすめです。金融系など社内規定が厳しい場合は避けましょう。
秋冬スーツでは何色がおすすめか
スーツスタイルのビジネスでは、気持ち明るめネイビーがおすすめです。
現在流行中のブラウンを取り入れる場合は、黒っぽく見えるダークブラウンを選び、シャツは白、ネクタイをブラウンにすると上品にまとまります。
オフィスカジュアルでは、セットアップ風に使えるブラウンがおすすめです。
真冬にはブラックのニットで旬な色合わせになります。
以前は、ブラウンのスーツにブラックの靴やベルトは合わせないという風潮がありましたが、近年は逆で、ブラックを合わせるのがお洒落になっています。
秋冬スーツに人気の柄はこれ!
スーツの柄は無地、織柄、ストライプ、チェックの4種類がメインです。
- 無地・・・シャツ、ネクタイのコーディネートがしやすく、場面を選ばず着用できる点がビジネスにはおすすめです。無地は素材感が出やすいため、ウール100%の高級感のある生地を選ぶのがコツです。
- 織柄・・・生地の織り方で柄を表現します。無地の次に格式が高めです。シャドーストライプ、シャドーチェック、ヘリンボーンなどがあり、光沢のある生地では華やかになります。
- ストライプ・・・薄いラインのピンストライプから、はっきりとしたチョークストライプまでバリエーションが豊富です。薄い2種類のラインを交互に入れたオルタネイトストライプはお洒落な雰囲気になります。
- チェック・・・遠目では無地見えするマイクロチェックから、窓枠のような大きなチェック(ウインドペーン)、派手にみえるグレンチェックとさまざまです。ビジネスではマイクロチェックが無難です。
- ハウンドトゥース・・・猟犬の歯のような模様で、和名は千鳥格子です。模様のサイズが小さい場合マイクロチェックのように無地見えするため着用しやすくなります。
秋冬スーツのおすすめ柄は?
開放的な春夏の雰囲気から、シックで引き締まった印象に変わる秋冬では、シャドーストライプやピンストライプがおすすめです。
スーツスタイルのビジネスでは、流行色をさりげなく取り入れたダークブラウンスーツが一着あると着こなしの幅が広がります。ダークブラウンであれば、手持ちのボルドー系ネクタイやネイビーストライプタイも合わせやすいため、コーディネートにも悩みません。
可能であれば、ブラウンネクタイを追加しておきましょう。
ブラウンのネクタイはブラウンスーツは勿論、ネイビーやグレースーツにも着回しが可能です。
オフィスカジュアルの場合は、明るめのブラウンで無地スーツがおすすめです。
着回し力もあり手軽にカジュアル感を演出できます。
スーツ以外の防寒対策!ジャケットの中に何を着る?
スーツスタイルでは、ジャケットの中に何を着るかで印象が変わります。
季節や気温に合わせて選びましょう。
- ベスト(ジレ)・・・秋冬に活躍するベストは、スーツと一緒にオーダーしておくと安心です。ただ、近年はオッドベストと呼ぶ、スーツと異なる生地で仕立てたベストも人気のため、追加でベストを仕立てる方法もあります。その際は、スーツと同系色の生地から選ぶか、無彩色であるブラックやグレーにすると、着回しやすくなります。
- ニットベスト・・・朝晩の寒さが厳しくなっても日中はそこまで寒くない時期は、ニットベストが程よい暖かさです。前ボタンタイプやプルオーバータイプがあります。
- Vネックセーター・・・真冬の寒さも安心のVネックセーターは、ブラックやネイビーが定番です。
- カーディガン・・・カーディガンはVゾーンが広く、シャツネクタイのコーディネートを隠しません。見た目と防寒のバランスが良いアイテムです。
オフィスカジュアルでは
オフィスカジュアルではスーツスタイルと異なり、ニットにジャケットを羽織るパターンが増えています。
- クルーネック・・・リラックス感が強いクルーネックは、ホワイト系ニットを合わせると暗くなりがちな冬場のコーディネートを明るくする効果があります。
- ハイネック・・・襟がそれほど高くないハイネックは、首が長く見える効果もあるため細身スーツと合わせるとバランスが良く見えます。
- タートルネック・・・ハイゲージのタートルネックは程よい上品さがあります。ジャケットと近い濃いカラーで色の差を付けないコーディネートもシックな雰囲気を演出できます。リモート会議などでは、表情がわかりやすい明るめのニットがおすすめです。
小物も季節感があるコーディネートに
冬らしい小物を合わせることで、スーツスタイルに統一感がでます。
- ウールネクタイ・・・ウールのネクタイは、起毛感とボリュームのある冬らしい素材です。シルクよりもカジュアルな印象です。
- スエードの靴・・・秋冬素材としてはスエードが代表的です。カジュアル寄りのコーディネートになります。
- 手袋・・・黒か茶の革製でビジネス感あるコーディネートです。ニットの手袋、ニットと革を組み合わせたデザインもあります。
- マフラー・・・コートに必須のアイテムです。マフラーは防寒効果が非常に高く、太い血管のある首回りを温めて体調管理にも優れた効果を発揮します。見た目もお洒落に見える上に、首の皮脂がコートの襟に付く事も防止します。マフラーには、防寒、汚れ防止、ファッションの3つの効果があるため活用しましょう。
冬本番に向けて準備しておきたいアウター
近年スーツに合わせるアウターはカジュアル化しています。
オンオフ兼用できる商品が人気ですが、やはり王道コーディネートも必要です。
スーツの雰囲気との相性もあるため、着用パターン別で持っておくと安心です。
- スタンドカラーコート・・・スタンドカラーは合成繊維素材のコートに多いデザインです。颯爽とした印象で、スリムタイプだとブリティッシュスタイルスーツに合います。
- ステンカラーコート・・・ステンカラーコートは、襟がシャツ襟のような形状のコートです。近年人気が高まっています。冠婚葬祭などにもふさわしく、着回し力のあるコートです。
- チェスターコート・・・コートの中ではもっともVゾーンが広く、上品な印象です。仕立てによって印象がかわり、スリム系ではブリティッシュスーツ風のカッチリとしたシルエットになり、余裕を持たせた仕立ての場合は、カジュアル寄りのコートになります。
- トレンチコート・・・ベーシックなものから、現代風にアレンジされたもの、細かなディティールを省略して簡素にしたものまでさまざまです。カジュアル使用を意識したシンプルでゆったりとしたデザインはスーツに合わせると失礼になる場合があるため注意しましょう。
ビジネス用としてのコートは、極端な流行を取り入れたものは失礼になるため避けたほうが無難です。
冠婚葬祭にも着用できるような、適正サイズでベーシックなデザインのコートを最低1着は用意しておきましょう。
カジュアル兼用アウター
オフィスカジュアルでは、ダウンやフード付きコートも人気です。
- ダウン・・・スーツのジャケットの裾が出ない長さのダウンが基本です。
- フード付きコート・・・自転車通勤にも便利で、オンオフ兼用できるシンプルな合成繊維コートが人気です。
流行を追い過ぎないお洒落
スーツスタイルのお洒落のコツは流行を追い過ぎないことです。
スーツスタイルの着こなしには、ファッションとしてのコーディネートと、ビジネスマナーとしてのコーディネートが存在します。
ファッションとしての着こなしや流行を、実際のビジネスシーンで取り入れると場違いな着こなしになってしまう場合もあるため注意しましょう。
流行している色を取り入れたり、ネクタイの幅や襟幅を意識したりする程度がおすすめです。
さりげないお洒落が好感度も高く、スマートに見えます。
衣替え後の春夏スーツはどう保管するのか
春夏スーツは、収納する前の水洗いクリーニングが基本です。
春夏スーツは水洗いクリーニングする
通常のクリーニングでは、油性の汚れは落ちますが水溶性の汚れは落ちません。
春夏の汗ばむ季節に着用したスーツには、汗と塩分が含まれています。
水溶性の汗汚れをそのまま落とさずに保管した場合、生地の変色や固くなるなどの風合い変化を起こしやすくなります。
衣替えで収納する前には、必ず水洗いクリーニングを選択しましょう。
クリーニング後はハンガーを替える
クリーニングから戻ってきたスーツはビニールを外し、クリーニング剤の臭いを抜きます。
長期保管でジャケットの肩が傷まないように厚手の木製ハンガーに掛け替えましょう。
この一手間でスーツのシルエットを崩さずに保管できます。
パンツはパンツハンガーにウエストを挟んで掛けておくと、来年着用する際に膝の折り目をプレスする手間が省けます。
防虫剤は正しく使う
防虫剤は正しく使わないと効果が薄れます。
防虫剤のガスは上から下へ流れるため、スーツよりも高い位置に置くことが理想です。
ガスはドライアイスの煙のような動きをすると考えましょう。
ガスが届かない場所は、虫食いになる可能性があります。
クローゼットに衣類が詰め込まれていると、スーツとスーツの間にガスが入りにくくなります。
クローゼットに隙間を開ける余裕がない場合は、スーツを包むタイプの防虫カバーが確実です。
防虫剤や防虫カバーは説明書通りに使用しましょう。
オーダースーツ専門店「オーダースーツSADA」とは?
新しいスーツを用意するには、ある程度の時間が必要です。
折角新品のスーツを作るのであれば、1ヶ月早めに準備を始めてみませんか?
オーダースーツSADAでは、採寸して型紙から作成する本格的フルオーダースーツが1ヵ月ほどで作れます。
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通常、このような型紙から作るフルオーダーは2ヵ月ほどかかりますが、オーダースーツSADAでは、徹底した効率化と、自動設計システムなどの導入で、納期の短縮を実現しました。
生地の肌触りを確かめながら色柄を選択、ボタンや裏地までじっくり選ぶフルオーダーで、世界に一着の自分専用スーツを作ることが可能です。
ぜひ、お気軽にご相談下さい。
まとめ
今回は、秋冬スーツについてご紹介しました。
秋冬はスーツのメインシーズンです。
仕事着として、動きやすさと快適さを条件にスーツをオーダーしたり、結婚式などカッコ良さを追求してシルエットにこだわったりと、スーツ作りにはそれぞれに楽しさがあります。
場面にあわせて、最適なスーツを作ってみませんか?
経験豊富な専門スタッフがご案内します。
オーダースーツSADAでは、楽しみながら作ったスーツを快適に着用して頂けるように、アフターサービスも充実しています。
楽しく、安心なスーツライフにお役立てください。