
昔のスーツの流行り(トレンド)は?年代別の文化や特徴について解説-オーダースーツSADA
スーツのトレンドは時代やファッションの流行の移り変わりと共にさまざまな変化を遂げてきました。レトロファッションやヴィンテージスーツの需要が高まっている昨今、スーツの歴史や文化について興味を持つ方も多いのではないでしょうか。本記事では、過去から現在に至るまでのスーツの流行や、今と昔のスーツ文化の違いなどについて詳しく解説します。スーツへの知識を深めてスーツスタイルの幅を広げたい方は、ぜひ参考にしてください。
昔のスーツはどう呼ばれていた?スーツの「呼び方・言い方」の変化

現代ではビジネスや社交の場で当たり前のように着用されるスーツですが、実は昔のスーツは今のような位置付けではありませんでした。
まずはスーツの起源や、スーツの呼び方・言い方の移り変わりについて詳しく見ていきましょう。
スーツのルーツと始まり
現在のスーツの起源は、1800年代前半にイギリスで確立された「フロックコート(frock coat)」だといわれています。「フロックコート」とは、元々はイギリス農民が農作業着として着用していた「フロック」が徐々に変化を遂げて誕生したもので、当時のイギリスでは男性が愛用する昼の正装として親しまれていました。
現代のスーツスタイルと同じ「シャツ・ネクタイ・ベスト・スラックス」の着こなしは、このフロックコートの広まりと共に確立されていったとされています。
しかし、フロックコートは室内で過ごすには窮屈すぎることや、長すぎる裾が乗馬の際に邪魔になってしまうことなどから、徐々に着丈を短く改良した「ラウンジジャケット」を着用する人々が増えていきました。
その後1800年代後半には「ジャケット・ベスト・スラックス」がすべて同一の生地で仕立てられた「ラウンジスーツ」が普及し、現在のスーツスタイルにかなり近づいたといわれています。
1920年代になると各国で本格的にスーツが定着し始めましたが、当時のスーツのシルエットは直線的なラインを型取ったものが多く、全体的にメリハリのないデザインが主流でした。現在のように見た目上の美しさにこだわって作られたスーツが流行り出したのは、1930年代前半になってからという説が有力です。

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スーツ 昔の言い方/呼び方を解説
「スーツ」という呼び名は今でこそ一般的な名称ですが、昔の言葉ではスーツは「背広(せびろ)」や単に「洋服(ようふく)」などと呼ばれていました。
「背広」は日本でスーツが普及し始めた明治時代に定着した言葉で、イギリスの「サヴィル・ロウ(Savile Row)」が語源といわれています。その後、昭和中期ごろまでは「背広」という呼び方が主流でしたが、1970年代以降になると、若者を中心に「スーツ」という呼び名が一般化していったとようです。
時代ごとのスーツの呼び方の違いには、当時の時代背景や文化的な価値観の変化が反映されています。その点を深堀しながら呼び名の違いについて考えてみると、スーツの歴史をより深く知ることができるかもしれません。
日本におけるスーツの広がり(明治〜昭和)

日本で初めてスーツが着用されるようになったのは、幕末から明治初期の頃といわれています。当時の日本は開国したものの、欧米諸国との文化の差を目の当たりにすることになり、政府は欧米文化に追いつくために急いで洋装の普及に励んだとされています。
しかし、当時スーツを着用していたのは一部の政府関係者や富裕層のみで、一般国民にはなかなか洋装が浸透しませんでした。
その後大正時代に入ると、欧米文化の更なる流入に合わせて、スーツを着用する一般市民が徐々に増加していきます。
戦後は専用機械の導入により洋服の大量生産が実現し、スーツ文化が一気に国民へ普及しました。高度経済成長期の影響も受け、昭和以降はスーツは現代のようにビジネスや冠婚葬祭の場で欠かせない衣類として定着していきました。
以下の記事では、日本のスーツの歴史について焦点を当てた情報を紹介しています。興味がある方は、ぜひご一読ください。

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1940〜1950年代のスーツの特徴とトレンド

ここからは、1940〜1950年代におけるスーツの歴史や文化について、スーツ発祥の地であるイギリスに焦点を当てながら解説していきます。
1940年代|戦争の影響を大きく受けスーツの簡素化が進む
1940年代初期は、第二次世界大戦の真っただ中で多くの人がファッションを楽しむ余裕がなく、1930年代のスーツから大きな変化はありませんでした。また、戦争の長期化による皺寄せはスーツにも影響し、生地やデザインの簡素化が進みました。
具体的には、背地の素材が「コットン」から安価な「レーヨン」になり、「3ピース」から生地を節約できる「2ピース」が普及したといわれています。
現代の「ブリティッシュスーツ」に最も近いスーツが登場
この時期に流行ったスーツは「イングリッシュドレープ」と呼ばれるもので、それ以前のスーツにある上品さとは真逆に「男性らしさ」を全面に強調するシルエットが特徴的です。
ジャケットは全体的に落ち着きのあるデザインで、厚めの肩パッドで肩幅を広くとり、ラペルは太め。ウエストラインは高く、身体の曲線に沿うようにウエストシェイプが絞られていました。
一方で、スラックスのデザインは前身頃にも後身頃にもゆとりを持たせ、ドレープ感のあるゆったりとしたスタイルが採用されていました。
「イングリッシュドレープ」におけるメリハリのあるスーツスタイルは、現代の「ブリティッシュスーツ」に共通するデザインといえます。当時このような力強さをアピールできるスーツスタイルが流行した背景を考察すると、1940年代のスーツスタイルは、戦争の影響を大きく受けたことが分かります。
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1950年代|時代背景を反映した中立的なスーツへ
1950年代には第二次世界大戦も終戦し、スーツスタイルも心理的な落ち着きや優しさが感じられるものへと変化していきます。
例えば、1950年代のジャケットは、分厚い肩パッドから「ナチュラルショルダー」へと代わり、ウエストの絞りやドレープも少し緩いデザインが特徴的です。1950年代のスーツは着る人のラインに程よく沿ったスリムなスタイルが主流となっていきました。
科学技術の発展と共にスーツスタイルの近代化が進む
スーツ文化の大きな変化として、伝統的な「3ピース」から「2ピース」が基本のスーツスタイルとして普及したことが挙げられます。
また、1940年頃からポリエステルやポリウレタンなどのさまざまな化合成繊維に関する技術が向上し、合成繊維を用いたスーツが本格的に実用化されていきました。このようなスーツスタイルやデザインの変化から、1950年代は「ブリティッシュスタイルの転換期」といえます。
1960〜1970年代のスーツトレンド

1950〜1960年代初期のイギリスは「スウィンギング・ロンドン」と呼ばれていたように、若者の男性ファッションにターニングポイントが訪れました。そのような背景を踏まえて、次はイギリスを中心とした1960〜1970年代におけるスーツの歴史や文化について見ていきましょう。
1960年代|革命的精神がスーツにも大きな変化を与える
イギリスにおいて初の水爆実験に成功したのを皮切りに、1950年代後半から1960年代にかけて、核兵器の保持に関するデモや運動が盛んに行われていきます。このような既成の社会に反発する動きは、前時代の男性的なスーツスタイルに大きな変化をもたらしました。
例えば、ジャケットは細いラペルや狭いVゾーン、エレガントな「サイドベンツ」が主流のデザインとなり、また「トラウザーズ」は「ノータック」が採用されます。また、前時代までのスーツの色味はネイビーなどの地味なものが大半でしたが、この時代からチェック柄や、ストライプ柄など派手な色柄のものも登場しています。
革命的な時代であった1960年代を象徴するかのように、スーツスタイルにおいても前時代と相反するデザインとなりました。
細身シルエット&モッズスタイルの時代
1950年代までイギリスで主流だった「ブリティッシュトラッドスタイル」に対し、1960年代はアメリカ発祥の「アイビースタイル」や、イギリス発祥の「モッズスタイル」などが流行り始めました。
全体的にタイトなシルエットのスーツスタイルが好まれるようになり、ジャケットの丈は短く、ラペル(襟)は細め、パンツもテーパードが定着化していきます。1960年代のスーツは現代にも通じるスマートさやスタイリッシュさがあり、近年では当時のスーツスタイルが再度若者たちの間で注目を集めつつあります。
1970年代|ダブルスーツ&フレアパンツの黄金期
1970年代に入ると、派手で個性的なファッションが流行り出します。この頃のスーツスタイルは、ワイドラペル(大きな襟)やフレアパンツが主流で、ダブルスーツが圧倒的な人気を誇っていました。
特に光沢感のある生地を使ったスーツや柄物のスーツは、個性を表現できるアイテムとして多くの男性から支持されたといわれています。
「昔のダブルスーツ」と聞くと、1970年代の大胆で華美なデザインのスーツスタイルを連想する方も多いのではないでしょうか。
ヒッピーとフェミニズムが融合されたスーツスタイル
1970年代は泥沼状態にあった「ベトナム戦争」や、先進国を中心とした世界経済の景気停滞といった背景があり、各国で多くの人々が強い失望感を抱いていました。特にアメリカ国民の政治への不信感は強く、戦争に反発する精神から若者を中心に「愛と自由」を求める思想やカルチャーが流行し、それに伴い個性的なファッションが特徴的な「ヒッピー」が登場します。
また、反社会的活動が活発化する中で、アメリカ国内にて「第二波フェミニズム」が最盛期を迎え、男性社会に対する不満を抱えた女性たちによる社会運動が活発化していきます。
その中で「個人的なことは政治的なこと」というスローガンが生まれ、女性たちは「日常的な領域こそ性差別がある」ことを訴えました。このような訴えをきっかけに、これまでは「男性のもの」と認識されていたスーツに、初めてレディースデザインの要素が加わるようになったのです。
これらの影響を受け、この時代のスーツはヒッピーやウーマンリブ運動などの「カウンターカルチャー」を反映したスタイルのものが多くあります。
例えば、大きなラペルや2つボタン、肩線が上方に反り返える「コンケーブショルダー」は、高い位置でくびれ、胴回りから裾へと末広がりになるシルエットが特徴的です。ジャケットに合わせるパンツは、膝から裾にかけて巾広となるベルボトム型の「フレアードパンツ」が主流でした。
また、ヒッピーカルチャーでお馴染みの「サイケデリックカラー」を模するように、スーツにおいても当時は色柄などの派手なデザインが好まれました。このように、スーツを着用する人々のカルチャーや意識の変化に合わせて、スーツは新たなスタイルを切り開いていったのです。
1980〜1990年代のスーツトレンド

1980年代は「イタリアの奇跡」という言葉が生まれたように、イタリアの経済やファッションが全盛期を迎えました。そのような背景を踏まえて、次は1980〜1990年代のスーツの歴史や文化について解説していきます。
1980年代|バブル期のパワースーツ文化
1980年代はミラノスタイルが流行し、「パワースーツ」と呼ばれる威圧感のあるスーツスタイルが好まれました。当時のスーツスタイルは、肩パッド入りのジャケットにワイドなパンツが主流で、バブル経済を象徴するような、自信と存在感を主張できるデザインが人気を博していました。
また、ブランド志向を強く持つ人々が多かったのも特徴的です。現在ではクラシック回帰の一環として、当時のエッセンスを取り入れたスーツスタイルが再度人気を集めつつあります。
イタリア発の「ソフトスーツ」が登場
世界的なインフレが進み、イギリスの「サッチャリズム」やアメリカの「レーガノミクス」に代表されるように、各国で保守的な流れが続きます。
一方で、イタリアは農業中心の経済からグローバルな工業経済へと変革に成功し、目覚ましい成長を遂げます。例えば、イタリアの高級ブランド「アルマーニ」が、堅苦しいジャケットを再構築した「テイラードスーツ」を提案し、世界的に成功を収めました。
イタリアのスーツが流行った理由として、「人と異なる価値観が良し」とされる時代背景と、既存の構築性や保守的な方向性に対する懐疑心が表現されたスタイルに共通点があったことが大きく影響していたと予測できます。
そのような時代背景が関係し、1980年代にはこれまでの構築的なスーツスタイルから、カジュアルでリラックスしたシルエットの「ソフトスーツ」にも徐々に人気が出始めます。いわゆる「イタリアンスタイル」とも呼ばれるソフトスーツには、柔らかな生地や肩パッドが用いられ、全体的に丸みを強調した大きいシルエットが採用されました。
具体的な特徴として、極端に位置が低い「ゴージライン」や、分厚く広い肩周り、レディースのようにソフトな生地や色合いなどが挙げられるでしょう。トラウザーズもプリーツを多く入れ、ゆったりとした腰回りから裾へと次第に絞り込まれる「ペッグトップパンツ」が主流化していきました。
1990年代|ブランド至上主義への反発で「クラシコイタリア」が注目
1980年代において数多くの世界的高級ブランドがスーツ業界へと進出し、とにかく値段の高いものを身につければ良いという「ブランド至上主義」が日本においてもはびこっていました。
1990年代に入ると、バブル崩壊の影響から高級ファッションブランドが廃れ、シンプルさを求める「ミニマルファッション」が脚光を浴び始めます。
また、1992年に開催された「地球サミット」をきっかけに、「エコロジーファッション」が国内でも広く意識されるようになりました。
このような背景から、高い技術を持つ職人がハンドメイドで仕立てる「クラシコイタリア」に注目が集まることとなります。クラシコイタリアは、高めのゴージラインと幅の広いラペル、高めのウエストラインで緩やかにシェイプされ、裾にかけて緩やかな「フレアードライン」が特徴的です。2000年代の今もなお、クラシコイタリアは形を変えながら多くの日本人に愛され続けています。

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2000年代から現代のスーツトレンド

次は、2000年代から現代にかけてのスーツトレンドについて見ていきましょう。
2000年代|タイトシルエットのスーツが流行
2000年代には、タイトなシルエットのスリムスーツが人気を博します。
この頃には、二つボタンの着丈が短いジャケットと、ウエストまわりがタイトなノータックパンツが定着化していきます。
特に、フランス出身のファッションデザイナーであるエディ・スリマンが手がけた、タイトなラインが特徴的な「ディオールオム」や、体のラインを強調するセクシーな「トムフォード」など、上品で紳士的なトラッドスタイルのスーツに高い注目が集まるようになりました。
2010年代|クラシックスタイルのスーツに注目
2010年代には、高級感のある「クラシックスタイル」のスーツが流行り始めます。
ジャケットの裾は極端に短くなり、一時はヒップラインが見えるほど裾が短いジャケットが人気を集めていた時期もありました。
その後2020年代に入ると、機能性を重視したリラクシーなスーツスタイルや、ビジネスからカジュアルまで幅広く着用できる「コンフォートスーツ」などが注目されるようになっていきます。
昔のスーツ文化と今の違い|生地・デザイン・着こなしの進化

比較する時代によっても異なりますが、昔のスーツは全体的に重厚感のあるデザインのものが多く、生地も厚手でしっかりしたものが採用されていました。
一方で、現代のスーツは着心地を重視したものが多く、軽量でストレッチの効いた生地で作られているものが主流です。また、シワになりにくい、水や汚れを弾きやすいなど、日常使いに適した高い機能性を兼ね備えたスーツが注目される傾向にあります。
この他、効率的に大量生産をしていた時代とは違い、現代のスーツは体へのフィット感に意識を向け、職人の手縫いによって繊細な縫製がされているものも多く出回っています。
昔のスーツが今、再注目されている理由とは?

最近では「モッズスーツ」や「ダブルブレスト」など、昔流行ったレトロなデザインのスーツスタイルに再び注目が集まっています。
この背景には、現代の若者たちの間で、個性的かつ印象的なファッションが流行っていることが影響していると予測されます。
中には自身の個性や写真映えを意識して、結婚式やパーティーなどの冠婚葬祭の場で、あえてレトロスーツを選ぶ若者も増えてきているようです。
昔風スーツを現代風にオーダーで再現!SADAで叶えるクラシックスタイル

今回紹介したように、スーツは時代の変化とともにさまざまなスタイルを構築してきた、非常に歴史深いファッションアイテムです。
最近ではレトロスーツに興味を持つ方が増えてきましたが、人によっては「サイズが合わない」「市販品だとうまく再現できない」などと悩みを持つ方もいるかもしれません。自分にぴったりの昔風スーツを手に入れたい方は、ぜひオーダースーツを利用してみてください。
オーダースーツであれば、ダブルブレストや太めのラペル、クラシカルなシルエットなど、当時のディテールを現代の快適さと掛け合わせて仕立てることができます。ボタンの位置や、裾の長さ、パンツのラインまで、すべてのデザインを自分好みに設計することが可能です。オーダースーツには多様な選択肢がありますが、高い技術力と多くの実績を持つ「オーダースーツSADA」であれば、お客様の理想の一着を仕立てることができます。新旧の良さを兼ね備えた世界に一つだけのスーツを仕立てたい方は、ぜひ「オーダースーツSADA」にご相談ください。