スーツの腰ポケットが斜めになっている？スラントポケットと呼ばれる斜めポケットの特徴とは
近年、ビジネススーツのカジュアル化が進んでいることもあり、ビジネススーツのデザインにも幅が出てきています。全体的なシルエットはもちろんのこと一部の形状まで、その種類は数多く存在するといえるでしょう。
腰ポケットについても同様で、平行のポケットがあれば斜めになっているポケットもあります。平行ポケットの方が一般的に感じる方も多いかもしれませんが、斜めポケットはその形状ゆえに、スタイリッシュで格好良いという評判も多いようです。
実は、その斜めポケットには正式な名称があり、また斜めになっている理由もあります。
この記事では、腰ポケットが斜めになっている理由からその他ポケットの役割、斜めポケットはどんなシーンに適しているのかなどについて解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
スーツにある斜めポケットの正式な名称とは？
斜めになっている腰ポケットですが、正式名称があり、それを「スラントポケット」と呼びます。スラント（slant）とは「坂・傾斜・斜め」という意味です。「ハッキングポケット」「スランテッドポケット」とも呼ばれます。
スーツのポケットが斜めになっている理由とは？
スラントポケットは、その起源をさかのぼると英国紳士の乗馬用ジャケットにたどり着きます。乗馬中、平行のポケットでは手を入れることが難しく、この問題を解決するために考案されたのがスラントポケットだとされているようです。斜めに切り込みを入れることで、乗馬中でもポケットに手を入れやすくなったとされています。
スラントポケットの機能的な理由は上記の通り、かつての英国紳士による「乗馬という娯楽」に行き着くのですが、現代ではデザイン面においてその存在意義が見いだされているといえるでしょう。スラントポケットの付いたスーツはその斜めの形状ゆえに、細身に見える効果があるのです。スタイリッシュにスーツを着こなすためには重要な要素といえます。
【位置別】スーツにあるポケットの役割
スーツには、大別すると「胸」「腰」「内」の3つの位置にポケットが付いています。それぞれに異なった役割があるため、一つずつ見ていきましょう。また、併せてポケットの形状についても解説します。
飾りとしての胸ポケット
スーツの胸ポケットといえば、「スーツの顔」といっても過言ではないかもしれません。役割としては、ポケットチーフやペンのクリップ部分を見せて飾り気を出すことにあります。
かつて、軍服として使用されていた頃には左胸（心臓）を守ることを目的として、鉄板を入れるために付けられていたともいわれていますが、現代では少し華を出すための役割と捉えて問題ありません。
なお、あくまでも飾り気を出すためのポケットなので、カードキーなどを入れておくのは本来の用途からは外れます。ポケットの形状が崩れる原因にもなるため、重量物を収納するのは避けましょう。
シルエットを形作るための腰ポケット
ジャケットの両側に位置する腰ポケットは、スーツのシルエットを形成するために存在しています。先述したスラントポケットであれば、細身でスタイリッシュなシルエットを演出することが可能です。
胸ポケットとは異なり、腰ポケットには何も入れないことがマナーとなっています。腰ポケットの存在意義がシルエットを形作ることにあることからも明らかですが、物を入れてしまうと全体のシルエットが崩れてしまうからです。また、胸ポケット同様、物を入れることでポケットの形状が崩れてしまう恐れもあります。
前提として、胸と腰ポケットは収納用のポケットではない、という点を覚えておくと良いでしょう。
収納機能を持つ内ポケット
内ポケットは例外的に、物を収納してもOKとされています。外からは見えない部分のため、デザイン上あまり気にしなくてもよいのです。薄い手帳や財布など、入れても形状に影響しない程度のものであれば問題ありません。
ただし、形状が崩れたり、シルエットに影響が出てしまうほどの重量物を入れることは避けましょう。収納目的として利用してもOKとはいいつつ、スーツは本来、機能性ではなく見た目を重視した衣服です。この前提は内ポケットであっても忘れないようにしましょう。
ポケットの形状簡単まとめ
スーツの主なポケットについて位置ごとに紹介しましたが、形状ごとに特徴も異なるため簡単にまとめて紹介します。
・フラップポケット
ポケットにフラップ（蓋）が付いているものをこのように呼びます。多くのスーツは蓋付きなので、一番なじみ深いかもしれません。蓋が付いている理由としては、屋外における汚れを防止することにあります。例えば、雨や泥などです。
フラップが付いていない「フラップレスポケット」もあり、これはほとんどの場合、屋内用スーツに付いています。
屋外と屋内でフラップの有無が明確に区別されているため、フラップ付きポケットの場合、屋外ではフラップを出し、屋内ではフラップをしまうことが一応のマナーです。ただ、絶対にそうしなければいけないわけではなく、ポケットに物を入れたり、左右で蓋がちぐはぐになっていたりしなければあまり問題視されません。
・スラントポケット
ポケットの形状が斜めになっているものを指します。斜めの形状ゆえに、シルエットがシャープに見えるため、細身に見せたい方にはおすすめの形状です。
・チェンジポケット
ブリティッシュスタイルのスーツに見られる形状のポケットで、多くの場合、右側の腰ポケットの上部に位置しています。「チェンジ」とは英語で「小銭」を意味し、本来は小銭などを入れるために用いられていたようです。デザイン面での効果も強く、チェンジポケットを付けることで、ブリティッシュスタイルによく見られる長い丈のジャケットが野暮ったく見えないようになります。
・パッチポケット
貼り付けポケットとも呼ばれるもので、共切れを使ってパッチのように貼り付けた形状のポケットを指します。基本的にはカジュアルシーンを想定したものなので、この形状のポケットが付いたスーツはフォーマルな場面では着用しない方が無難です。
スーツは平行ポケットと斜めポケットどちらがおすすめ？
結論からいうと、スーツのポケットに機能性は求められていないため、デザイン的にどちらが好みか、どちらが自分に合っているかで選ぶと良いでしょう。
全体的にシャープなシルエットに見せたい、細身に見せたいのであれば斜めポケットがおすすめです。あまり周囲と違った印象を出したくない、あるいは比較的ゆったりとしたシルエットが好みである、という場合は平行ポケットを選ぶと良いでしょう。
斜めポケットのあるスーツはダサいって本当？
ここまで読まれた方なら察しはついているかもしれませんが、斜めポケット（スラントポケット）だからといってダサいということはまずないでしょう。むしろ、スタイリッシュなシルエットに見せられるため格好良いと感じる方も多いはずです。
決してダサいということはありませんが、平行ポケットの方が一般的なため、周囲と比較して浮いてしまう恐れはあります。スラントポケットになじみがない方からすれば、少し特異に映るかもしれません。
周りに合わせる風潮がいまだに強い日本では、周囲と異なる服装をしていると奇異の目で見られ、結果として「ダサい」という感覚で片付けられてしまう恐れはあるでしょう。しかし、スラントポケット自体はスーツの起源と同じくらい歴史のあるものです。少なくとも、はやりに流された結果の「ダサい」とはならないので、安心して着用しても問題ありません。
斜めポケットのスーツは就活やビジネスで着てもいいか？
やはり、平行ポケットに比べて一般的ではない傾向にあるため、このような心配が発生しても不思議ではないでしょう。しかし、「ダサいのか？」という話題と同様で、斜めポケットだからといってビジネスシーンや就職活動の場で着用してはいけないということはありません。むしろ、自身の体型に合っているのであれば、より自身を魅力的に見せることが可能になるので、積極的に着るべきといえるでしょう。
マナー的な視点から見ると、斜めポケットであれ平行ポケットであれ、「ポケットの利用方法を間違っていなければ」問題はないのです。逆説的にいうと、ポケットに物を入れた状態でビジネスや就活の場に出るようでは、ポケットの形状が何であれマナー違反につながるということになります。
斜めポケットのあるスーツを着用したコーデ例
斜めポケットの起源は英国にありますが、ブリティッシュスタイルに限らずイタリアンスタイルのスーツコーデにも合わせることが可能です。最後に、ブリティッシュスタイル、イタリアンスタイル、およびアメトラスタイルごとの斜めポケットコーデについて、参考までに紹介します。
斜めポケット×ブリティッシュスタイル
ブリティッシュスタイルの特徴として「ジャケット丈の長さ」「Vゾーンの浅さ」「高い位置で絞られたウエスト」「弓なりに湾曲した肩のライン」「双糸のみで仕立てられたゆえの丈夫さ」などが挙げられます。このため、全体的にフォーマルな印象になり、細身に見える効果があるといえるでしょう。
一方で、ジャケット丈が比較的長めであることから、パッと見の印象はスタイリッシュさに欠けるといえます。この点を補うためには、スマートな印象を与える斜めポケットを付けるとシルエットがきれいに見えるでしょう。
また、ジャケット丈の長さを目立たなくさせるチェンジポケットと併用することで、より効果的になります。
斜めポケット×イタリアンスタイル
イタリアンスタイルのスーツは、「全体的に短めの丈感」「Vゾーンの深さ」「低い位置で絞られたウエスト」「薄めでストンと落ちる形状の肩ライン」「薄手の生地ゆえのソフト感」が特徴的です。エレガント、かつ個性を強調するスタイルのスーツで、ブリティッシュスタイルに比べてフォーマルさには若干欠けるものの、ソフトな見た目が開放的といえます。
ソフト感とウエスト位置が低めであることから、全体的なシルエットとしては、大柄な体型の方でも体型を気にせず着用できるメリットがあるといえるでしょう。反対にいうと、体型をカバーできる形状のためスタイリッシュさには欠けるかもしれません。
イタリアンスタイルでシャープさを際立たせたい場合は、斜めポケットを付け加えると良いでしょう。
斜めポケット×アメトラスタイル
アメトラスタイルとは、「アメリカントラッド」の略称で、ブリティッシュスタイルやイタリアンスタイルとは異なり「大量生産」と「誰にでも似合う形状」を重視したスーツです。そのため、デザイン性よりは効率・機能性を重要視したタイプのスーツといえるでしょう。
既製品として製作された形状ゆえに、格好良くフォーマルに着こなすというよりはカジュアル感が強めの印象があります。アメトラスタイルにあえて斜めポケットを付けることで、他とは違う「特別感」とスタイリッシュさを演出することができるでしょう。
オーダースーツ専門店「オーダースーツSADA」とは？
斜めポケットは既製品のスーツにはあまり見られないポケットでしょう。そのため、自分好みのスタイルに斜めポケットを付け加えたい場合は、オーダースーツ専門店を利用することがおすすめです。
オーダースーツ専門店の中でも特におすすめなのが、2022年11月現在、国内に49店舗を擁し、2023年には創業100年を迎える歴史を誇る「オーダースーツSADA」です。累計500万着もの仕立て実績があり、自社内で完結した製作・販売ルートを持っているため、どのような方でも満足のいくスーツをリーズナブルな価格で提供することを実現しています。
また、オーダースーツ初心者の方でも、オーダースーツ情報に精通したスタッフが打ち合わせからお渡しまで丁寧にサポートしてくれるので安心です。
斜めポケットの付いたスーツでスタイリッシュなシルエットを実現したいという方は、ぜひ一度、お近くの店舗までお気軽に足を運んでみてください。