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ストレッチ素材とは一体?特徴を徹底解説!

スーツはどんな点に着目して選んでいますか?見た目?素材?それとも機能性?人によって選び方はそれぞれかと思いますが、移動や立つ・座るなどの動作が多い方はぜひ「ストレッチ素材」に着目してみてはいかがでしょうか。ストレッチ素材とは伸縮性や弾力性に富んだ、運動性能の高い素材のことです。主に水着やスポーツウェアにも使われる「ポリウレタン」を使用して、生地の伸縮性を高めています。もともとある程度の伸縮性があるウールなどの素材の糸に加工を施して、伸縮性を高めたストレッチ素材もありますよ。ストレッチ素材で作られたスーツは伸び縮みするので着心地が良く、のびのびと着こなせるのが最大の特徴です。身体にフィットしてくれるので、疲労軽減効果もあります。肌触りが良いのもポイントです。メリットだらけに思えるストレッチ素材ですが、実はデメリットや弱点も存在します。快適なスーツスタイルにはぜひストレッチ素材を取り入れたいところですが、デメリットや弱点を押さえておかないとすぐにスーツをダメにしてしまうかもしれません。今回は、オーダースーツSADAのスタッフが「ストレッチ素材のメリット、デメリットや弱点」を詳しく解説します。

ストレッチ素材には独特の魅力があり、スーツの素材を選ぶ際には重要な選択肢のひとつになります。しかし、それがどのようなものであるのかよく知らないという人も多いのではないでしょうか。そこで、スーツ選びの参考になるように、ストレッチ素材の特徴とそれを用いたスーツのメリットやデメリットについて解説をしていきます。

ストレッチ素材って何?

ストレッチ素材という言葉を聞くと、ストレッチという原料が使われているのかと誤解する人もいるかもしれません。しかし、ストレッチは具体的な素材名を表す言葉ではないのです。ストレッチとは「引き伸ばす」という意味であり、つまり伸縮性のある素材をまとめてストレッチ素材と呼称しているわけです。より正確に定義すると「伸縮性や弾力性に富んでおり、運動性能の高い素材」ということになります。ストレッチ素材は化学メーカー「デュポン社」が1958年に開発されたといわれており、元々は“ライクラ”と呼ばれる生地がルーツとなっていたそうです。ライクラは、ポリウレタンを使用した弾性の高いオリジナルの素材で現在はスパンデックスと呼ばれています。快適さを求める下着やルームウェアに採用されていることが多いです。

ストレッチ素材の特徴として、縦方向や横方向に伸縮します。その種類も多く、縦もしくは横に一方向だけ伸縮する生地に関しては1wayストレッチ、縦と横の二方向どちらにも伸縮する生地は2wayストレッチとなります。さらに、斜めどちらにも伸縮する生地は4wayストレッチと呼ばれており、スーツの使いたい用途やどこまでストレッチ素材にこだわるかで、選択肢が変わってきます。より動きやすさを増すのは、どこの角度にも伸縮する4wayストレッチといえるでしょう。

ストレッチ素材の原料は?

ストレッチ素材の原料としては、ウールや綿、ポリウレタンなどが使用されています。しかし、それらの原料が使われていれば、すべてストレッチ素材というわけではありません。ここではストレッチ素材の原料について解説していきます。

ウール

ストレッチ素材と聞くと、まずはウールが浮かぶ人は多いのではないでしょうか。特にスーツ生地にはウールが使われていることが多く、どこか高級感を感じる風合いや適度なストレッチ性を体感できるため、ストレッチ素材の代表格といえます。大半が羊の毛を原料として作られており、天然の繊維としてウールに変わるような素材は開発されていません。植物繊維であるリネンやコットンとは違い、動物繊維だからこそ夏は涼しく、冬は暖かいというハイスペックな特徴を持ち合わせています。ちなみに、ウール素材と表記されているものは羊の毛を使用しており、世界には様々な種類の羊がおり数千種類といわれていますが、どの羊の毛を使っていたとしても表記は”ウール素材”という表記一択になります。吸湿性、放湿性に優れているウールですが、メジャーな羊毛として洋服などに使用されているのは、メリノ種なことが多いです。着用時の重厚さや美しいシルエットも叶えるなど、その機能性の高さから、季節問わず一年通して袖を通すスーツとの相性も抜群で、販売されているスーツの素材をチェックするとウール素材が入っていることが多いです。特に上質なウールは形状維持をする性質がより実感できるので、スーツにこだわりたい方にはおすすめです。

ウールは、もともとある程度の伸縮性はあるものの、それだけでは十分とは言えないこともあります。そのため、ストレッチ素材と呼ばれるものを作るために、糸にひねりを加えるなどしてさらに伸縮性を高めます。また、平織りの生地を故意に斜めにカットすることで縦横に伸びる余地を作るといった工夫もされています。

ポリウレタン

ストレッチ素材として最もよく使用されている原料はポリウレタンです。1940年頃にドイツで開発された弾性繊維であり、天然ゴムとは違って染色することができ、ゴムのような伸縮性がありつつもゴムよりも細くなるという特徴があります。その優れた性質は重宝され、スポンジや断熱材、塗料として合成皮革などの原料になることもあり、とても軽量なのも特徴的です。ポリウレタンを軸に他の繊維であるコットンやウール、レーヨンやポリエステルなどの異素材と混紡することで、用途に合わせて身にまとう衣類を軽くすることに成功しました。例え数パーセントだけでも混ぜるだけでストレッチ性に優れた生地にできるのも、扱いやすい素材といえます。動きやすさを重視する水着やスポーツウェア、靴下、下着などに幅広く用いられるようになりました。

旅行中に重い衣類を持ち運びたくない場合にも、ポリウレタン生地の服を選べば荷物を減らし全体的に軽量化することも可能です。さらに、ポリウレタンの繊維は縦や横に引っ張っても破れにくく衝撃強度に優れている性質やシワになりにくい性質も兼ね備えています。したがって、耐久性が求められるスーツにも相性のいい生地のため、スーツの場合でもストレッチ素材と言えば、ポリウレタンが使用されている可能性が高い点は覚えておいたほうがよいでしょう。

ポリエステル

ポリエステルは、ストレッチ素材の原料に使われることが多く、石油を原料として作られている化学繊維のなかで比較的歴史の新しい合成繊維かつ人気のある素材です。日本ではカジュアルパンツにポリエステル素材が使われたことをきっかけに、注目を集めた素材です。ポリエステルといえば、弾力性があり、シワになりにくいため身にまとう衣類との相性がいいとされています。覚えておきたいこととして、静電気が発生しやすく吸湿性が低いです。季節を問わず活躍してくれる素材ではありますが、スーツの場合には裏地として用いられることが多いです。

ストレッチ素材の機能とは?

ストレッチ素材には様々な機能が備わっています。ストレッチ素材の良さを知るためにも、機能性についてチェックしていきましょう。

着心地のよさ

ストレッチ素材の機能の一番の売りは、何と言っても着心地のよさにあります。生地自体が伸び縮みするため、体を大きく動かしても衣服に拘束されている感じがせず、のびのびとした気分で過ごすことができます。たとえ、大きく体を動かすことがなくても伸縮性の乏しい衣服を身につけているとちょっとしたことで引っ掛かりを感じてしまうものです。短時間ならまだしも、そういった服を1日中着用していると疲れてしまいます。ストレッチ素材の衣服には、そうした疲労の蓄積を回避する役割も担っているのです。

フィット性が高く、シワになりにくい

フィット性も高く、着用した衣類がずれるのを防いでくれるのもストレッチ素材ならではの特徴です。衣類は朝から夜まで一日中身に付けていることもあり、ずれやシワが気になってしまいます。しかし、ストレッチ素材の生地であれば、そうした小さなストレスを解消し一日快適に着用することができます。

肌触りがよい

ストレッチ素材は肌触りがよいことでも知られています。さらっとした感触は肌に心地よく、下着にストレッチ素材が用いられるのはそれが理由でもあります。機能性や見た目を重視するイタリアでは、季節問わず一年中晴天で乾燥が気になる気候のため、肌触りがよく、艶感をかんじることができるストレッチ性が好まれています。

ストレッチスーツを着るメリット

ここでは、ストレッチスーツを着るメリットについてまとめました。着用シーンなどもぜひ参考にしてみてください。

仕事着に最適

スーツの素材として考えた場合、ストレッチの生地は外回りをする営業職の人に向いています。なぜなら、伸縮性に優れていてストレスフリーで動きやすいため、外を歩き回ってもストレスに感じることが少なくて済むからです。また、他の繊維と組み合わせができ、繊維同士がもつ特徴や機能性を活かすことができるため、伸縮性に優れシワになりにくい特徴を持ち合わせています。忙しくて手入れをする時間がなくても、ストレッチスーツなら生地の持つ復元力である程度カバーできるというわけです。同時に、伸縮性の高さは破れにくいという利点にもつながります。したがって、よく股下や脇の部分を破いてしまうという人にもストレッチスーツはおすすめです。

水を弾くため悪天候に強い

次に、水に強いというのもストレッチスーツならではのメリットです。水を弾く素材が使われているので、突然の雨でもちょっとくらいではびしょ濡れにならずに済みますし、通気性の優れたストレットスーツなら夏でも汗でべとべとになるのを防いでくれます。さらに、家庭の洗濯機で丸洗いができるストレッチスーツが増えている点も見逃せません。なかなかクリーニングに出せないという人にとっては重宝するのではないでしょうか。

スタイルアップが期待できる

そして、そのほかのメリットとしては体型がスリムに見えるという点が挙げられます。伸縮性に劣るスーツの場合、どうしてもサイズに余裕のあるものを身につける必要があります。しかし、それでは布地が余ってしまい上品さに欠けてしまいます。それに、硬い生地のスーツだと着崩れが起き、着こなすのにも苦労します。その点、ストレッチスーツなら体にフィットし、スマートな着こなしが可能となります。ストレッチスーツであれば、生地を伸ばした後に元の形に戻る反発性もしっかり実感できるので、雨に濡れたとしても生地がよれにくく、メリハリのあるシルエットを叶え一日をスタイリッシュにしてくれます。扱いやすくてスタイルアップの効果もあるため、スーツの着こなしに苦労している人にとって、ストレッチスーツは有力な選択肢のひとつだと言えるでしょう。ただし、例え伸縮性があったとしても着用頻度が増えれば、反発性も弱くなってしまいます。そのため、ストレッチスーツを何着か着まわしてスーツを休ませる日を作るなど、工夫を行うことをおすすめします。

ストレッチスーツを着るデメリット

魅力の多いストレッチスーツですが、もちろんデメリットもあります。まず、化学繊維なのでクリーニングに対してはあまり強いとは言えません。そのため、頻繁にクリーニングに出しているとすぐに生地が駄目になってしまいます。もし、少しでも長持ちをさせたければ、ストレッチ素材が使われている事実を店員に告げ、専用のクリーニングをしてもらう必要があります。しかし、それでも一般のスーツと比べると寿命が短くなるのは避けられないでしょう。

また、高級感が出にくいのもストレッチスーツの欠点です。化学繊維では天然繊維のような上品な光沢や質感を出すことができないのでどうしても安っぽくなってしまうのです。ビジネススーツの場合、あまり安っぽいものを身につけていると顧客や取引先に対する信用にもかかわるため、これは見逃せない欠点だと言えます。さらに、ストレッチスーツばかり着用していると、おしゃれの幅が狭まってしまいます。なぜかというと、ストレッチスーツは色や柄の種類が豊富とは言えず、どうしても似たようなものばかりになってしまうからです。

ストレッチ素材の弱点

ストレッチ素材として使われているポリウレタンには優れた性質がある一方で、大きな弱点も存在します。それは劣化速度が他の素材と比べて早いことです。同じ伸縮する素材でもゴムよりは耐久性は上なのですが、それでも一般的には3年~5年程度で劣化すると考えられています。その主な原因は、空気や紫外線に触れることで化学反応を起こしてしまうからです。劣化をしてしまうと、本来ポリウレタンに備わっている伸縮性は失われて、内部の繊維が徐々に切断されていきます。そして、毛羽立ったように生地の表面に飛び出てしまうのです。

また、空気や紫外線以外にも、熱・油・薬品といったものに弱い性質があります。ちなみに、なぜそんなにも劣化しやすいのかというと、そもそもポリウレタンというのは2種類の化学物質を結合させて作られたものだからです。そのため、結合させた部分がさまざまな刺激を受けてほつれてくるのは避けられないのです。そのうえ、伸縮性が高い代わりに、あまり伸ばしすぎると元に戻らなくなってしまうという弱点もあります。

さらに、ポリウレタンには塩化ビニールやポリエチレンなどと同じでマイナスに帯電しやすい性質を持っています。つまり、それだけ静電気を起こしやすいわけです。特に、プラスに帯電しやすいナイロン製の衣類などと重ね着すると静電気が発生する確率が飛躍的に高まるので注意が必要です。

ストレッチ素材のお手入れ方法

機能性の高いストレッチ素材ですが、長く持たせるためにお手入れ方法が気になっている人も多いでしょう。ここでは、気になるストレッチ素材のお手入れ方法について簡単に紹介します。ぜひ参考の一つにしてみてください。

ストレッチ素材の寿命

ストレッチ素材の原料であるポリウレタンは、着用頻度にもよりますがだいたい2〜3年程度と考えられています。気に入っている衣類やスーツを少しでも長く着用したい場合には、購入後から取り扱い方やお手入れの方法について知っておくことが大切です。

ストレッチ素材の洗濯方法

ストレッチ素材の衣類やスーツを洗濯する場合には、服に付いている洗濯表示を必ず確認するようにしましょう。ストレッチ素材の服に関しては、基本的に洗濯OKと売り出されていることもあり、扱いやすいものがほとんどです。洗濯機で洗っても問題ないものの、中には混紡されている他の素材がデリケートで、洗い方に気をつけなければいけないものも稀にあります。例えば、手洗い推奨やクリーニング推奨などがあるので、洗濯をする前には注意してください。

洗濯機で洗う場合には、衣類が入るサイズの大きな洗濯用ネットを用意してください。小さいサイズの洗濯用ネットではぎゅうぎゅう詰めになってしまい、汚れを落としきれない可能性があります。さらに洗濯用ネットが準備できない場合には、洗濯中の摩耗による毛玉や型崩れを招いてしまいます。

伸縮性や耐久性に優れている生地であってもダメージを与えてしまうので、劣化を防ぐためにも、できる限り適切なサイズの洗濯用ネットを用意して洗濯機で洗うようにしましょう。

洗濯コースに関しては、刺激が少ない手洗いコースや相性のいいドライコースを選択するといいでしょう。生地の変色や劣化をされないために”塩素系漂白剤”のような強い刺激の洗剤は使用を避けましょう。

ストレッチ素材は陰干し

洗濯を終えたら、風通しの良い場所で陰干しするのがおすすめです。ストレッチ素材の原料であるポリエステルやポリウレタンは、紫外線に弱いため直射日光は避けましょう。できる限り繊維へ無駄なダメージを与えないように気をつけてください。

ストレッチ素材はアイロン不要

陰干しが完了したあとの仕上げですが、アイロン掛けはしなくて問題ないです。ストレッチ素材は、シワができづらいことやストレッチ素材の原料であるポリエステルやポリウレタンが熱に強くないこともあり、アイロン掛けをすることで生地を傷めてしまう可能性があります。ただし、使用頻度が増えればシワが気になってしまうこともあるため、部分的にアイロン掛けを行ったり、アイロン掛けを行う際は必ず当て布を行うなど、慎重にケアすることをおすすめします。

ポイントを把握して検討しよう!

ストレッチ素材のスーツは着心地がよくスマートな着こなしが可能などといったメリットがある反面、劣化が早くて高級感に欠けるといったデメリットも存在します。そのため、メリットとデメリットを総合的に理解し、使うべき状況を正しく見極めることが大切です。まずはこの記事などを参考にしながら、ストレッチ素材について学び、自分に合ったストレッチスーツの活用法を確立していきましょう。

ストレッチ素材は伸縮性に優れており、快適な着心地を実現するのがメリットです。外回りの営業マンなどはぜひ取り入れたいですね。持ち前の伸縮性からシワにもなりにくいので、いつでも良い見た目を保てます。水をはじくので、多少の雨に降られても安心なのも嬉しいポイントです。スタイルアップ効果もあるので、スマートに着こなしたい人にも最適でしょう。対してデメリットとして、クリーニングに弱い点が挙げられます。頻繁にクリーニングに出すとすぐにダメになってしまうので、ブラッシングなどのお手入れは欠かさないようにしましょう。また普通のビジネススーツと違って光沢が出にくいので、安っぽい印象になってしまいます。ある程度の年齢層からは避けた方が良いかもしれませんね。そしてポリウレタン素材のストレッチスーツには3つの弱点があります。1つ目は劣化が早いこと。2つ目は熱や油、薬品に非常に弱いこと。3つ目は静電気が発生しやすいことです。適切に管理すればある程度の弱点は抑えられますが、普通のスーツよりも早い劣化は避けられません。メリットとデメリットを比較し、買い替えのコストパフォーマンスの点なども加味して、ストレッチ素材のスーツを選ぶか決めてみてくださいね。

藤井 彩生