リクルートスーツの変遷
本日は就職活動用（リクルート）スーツのお話です。主に新卒予定者（大学生や専門学校生）の「就職活動用スーツ」のお話です。（今回はメンズスーツです。この「就職活動用スーツ」ですが、「決まり事があるようで、ない！」というのが新卒予定者を悩ますところでしょうまあ学生から社会人になる為の儀礼的なものだと言えるでしょう。社会人とは「自分さえ良ければよいという主観的な考え」から、「他者から見てどうか？という客観的な考え」に移行することではないでしょうか。現在の日本においてはまだまだ、他者から見て「ちゃんとしている格好」は「スーツ」なんだと思います。だから就職活動➡スーツなんだと思います。「就職活動用スーツ」を説明する上でそれ以上の説明は私には見つけられません。
やっと本題です。私もかなり長くスーツ屋をやってますが、「就職活動用スーツ」も時代と共に変化していくことを実感しております。ばっくりと「就職活動用スーツ」の変遷を記します。
①～1993年ぐらいまで
時代はバブル経済の真っ只中からバブル崩壊ぐらいまでです。約９割の「就職活動用スーツ」は
・紺色・シングル2釦・１タックor２タックのややゆったりしたシルエットだったと思います。
（中にはバブル感のある・カラード・ダブル４釦・３タックで挑む兵も少数ですが、存在しました。）
②1993年ぐらい～1995年ぐらいまで
バブル崩壊とともにリクルートも「売り手市場」から「買い手市場」へ移行し始めます。約半数の「就職活動用スーツ」は
・紺色・シングル2釦・１タックor２タックのややゆったりしたシルエットのままでしたが、スーツのトレンドとともに残りの約半数は
・紺色・シングル3釦・ノータックor１タックのやや細身のシルエットが半数を占め始めます。
③1996年ぐらい～2000年ぐらいまで
スーツの大きなトレンドが
上衣：ダブルブレストやシングル2釦➡シングル3釦
下衣：１タックor２タック➡ノータックになり、
「就職活動用スーツ」もほぼこのスタイルに移行しました。また90年代後半には紺色だけでなくチャコールグレー（濃いグレー）が約半数を占め始めます。いまだにこのチャコールグレー（濃いグレー）のトレンドは「なんとなくその時代に流行っていた」としか言いようがありません。
④2000年ぐらい～2009年ぐらいまで
1998年に始まった金融機関を含む、大手企業の破綻、さらにITバブルの崩壊が日本経済を本格的に不況に追い込みます。2005年～2008年秋の「リーマンショック」まで、若干、経済は持ち直し、スーツ業界には「プチバブル」が訪れました。雑誌「LEON]を発端とするトレンド（ちょい悪オヤジブーム）が＜イタリアンモードスタイル＞と＜クラシコイタリアスタイル＞という2つのスタイルを生み、スタイリングが2極化していきます。「就職活動用スーツ」も同じくこの2極化したスタイルに則り、さらに色にも大きな変化が現れます。
紺色、チャコールグレー➡黒色そもそも2000年ぐらいまではビジネススーツとしての黒色無地はほとんど見られませんでしたが、上記の不況による可処分所得の減少は「なんにでも使えそうな黒色のビジネススーツ」を生みました。「就職活動用スーツ」も同じく黒色に移行したと考えられます。
＜イタリアンモードスタイル＞
・黒色・シングル2釦センターベント・ノータックタイトシルエット＜クラシコイタリアスタイル＞
・黒色・シングル段返り3釦サイドベント・ノータックレギュラーシルエット
本来はウィンドウペーン柄やストライプ柄がメインとなる＜クラシコイタリアスタイル＞ですが、「就職活動用スーツ」はそれが黒無地になったイメージのものでした。
⑤2009年ぐらい～現在
上述の2008年秋の「リーマンショック」により、スーツのトレンドが急激に変わり、上記の＜イタリアンモードスタイル＞と＜クラシコイタリアスタイル＞は影を潜め、いっきにブリティッシュモダン（オーソドックス）なスタイルに移行します。現在約９割の「就職活動用スーツ」は
・黒色・シングル2釦センターベント・ノータックタイトシルエット
ディティールは＜イタリアンモードスタイル＞と同様ですが、ラペル巾が広くなったり、ショルダーの構築感がナチュラルになったりと見た目は大きく違います。また一時期のやりすぎなタイトシルエットは現代の就職活動生のZ世代には逆に「おっさんぽい！」って思われているようです。現代の世相を反映して「頑張りすぎないスタイル」に落ち着いたという感じでしょうか。
以上、あくまでも上記全ては私の個人的見解であり、賛否両論あるとは思いますが、約30年近く、目の前（店舗）で起こった「就職活動用スーツ」の変遷でした。
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